エピソード2〜上田と魔法を読み解いて〜(脚本)
〇校長室
上田「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
学長バルバロッサ「しらばっくれるでない。貴様は女装が大好きなんじゃろ?」
上田「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
上田「・・・・・・・・・・・ピュー」
学長バルバロッサ「口笛吹いてごまかすなっ!」
学長バルバロッサ「仕方ないのう。では貴様が女装が好きである根拠を言おうではないか」
上田「ふ、ふん、言えるものなら言ってみて下さい!俺はじょ、女装が好きだなんて、一言も言った覚えないですからね!」
学長バルバロッサ「・・・そう。あれは大学の前期試験のことじゃった」
上田「前期試験?それって・・・今年の2月、ここの大学で行われた、面接試験と筆記試験のことですか?」
学長バルバロッサ「そうじゃ。貴様はその試験でしっかり爪痕を残しておるぞ」
学長バルバロッサ「面接試験で、試験官が「あなたの趣味は?」と聞いたとき、」
学長バルバロッサ「輝いた表情で、「女装です!」って答えたそうじゃないか」
上田「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」
学長バルバロッサ「それだけじゃない。筆記試験では、試験終了後に解答用紙だけでなく問題用紙も回収された。その問題用紙に、書いてあったのじゃ」
学長バルバロッサ「・・・「女装」という文字が、余白に、びっしりとな」
学長バルバロッサ「わしもその問題用紙を見せてもらったが、さすがのわしも思わず引いてしまったわい」
上田「ぐっ・・・それにはちゃんと理由がありまして・・・」
上田「解答用紙が余白だらけだったから、せめて問題用紙の余白は無くそうと思って、つい・・・」
学長バルバロッサ「・・・その思考が訳わからん」
学長バルバロッサ「まあとにかく、以上のことから、わしは貴様が女装好きであることを知った」
学長バルバロッサ「女装に対する執念。それを感じて、ぜひわしの魔界同好会に欲しい人材だと思ったのじゃ」
学長バルバロッサ「男性は、女装が好きなら好きなほど、魔力が大きくなるからのう」
上田「ど、どういうことですかそれ・・・魔力と女装に一体どんな関係が?」
学長バルバロッサ「その説明は後じゃ。とにかく、これで認めてくれるな?貴様は、女装が好きであると」
上田「ぐっ・・・くっそう。大学生活では、女装が好きなことは隠して生きていこうと思ったのに・・・」
上田「まさか初日でバレてしまうなんて・・・」
上田「・・・・・・はい。仕方ないけど、認めます」
学長バルバロッサ「うむ、よろしい。では最終確認も済んだことだし、貴様を正式に魔界同好会のメンバーとして承認する」
上田「はあ・・・なんか嬉しいような悲しいような・・・」
学長バルバロッサ「大丈夫じゃ。魔界同好会に所属している男性は全員女装好きじゃから。普段の大学生活でも女装して過ごしている奴もいる位じゃぞ」
学長バルバロッサ「同志が集まっておるから、気の合う友達もできるじゃろう」
上田「へえ、そういう奴もいるんですね・・・。って、ん?」
上田(じゃあ、このリオって子は・・・男?女?)
リオ「・・・ちょっと。何か失礼なこと考えてない?」
上田「いえ別に」
上田(これでもしこの子が男だったら発狂するな・・・。もう深く考えるのはよそう・・・)
学長バルバロッサ「・・・さて。では、今日のところはひとまずここまでにしようかの」
学長バルバロッサ「上田よ、また具体的にこの魔界同好会についての話をするぞ。だから明日16時頃、ここに再び集合じゃ」
上田「わかりました。・・・ところで、ここはどこですか?懺悔室?」
学長バルバロッサ「懺悔室がある大学なんてあるか。学長室じゃよ。今は電気をつけてないから不気味に感じるだけじゃ」
学長バルバロッサ「ではまた明日」
上田「・・・魔界同好会、かあ」
〇女の子の部屋
〜上田のアパート〜
注:もう一度言いますが、ここは上田のアパートの一室です。
「・・・はあ。今日は何だか疲れたなあ」
上田「まさかこんなに早く加入するサークルが決まるなんて思ってもみなかったぞ」
上田「しかも普通のサークルじゃないみたいだし・・・」
上田「あの学長、俺を魔法使いにするなんて言ってたけど、本当にできるのかな?」
上田「実は学長主導の怪しい宗教サークルとかだったら困るなあ・・・」
上田「とりあえず、明日詳しい話を聞けばわかるはず。わからないことは山ほどあるからな」
上田「そしてあわよくば・・・サークルの女の子と付き合うぞ・・・むにゃむにゃ・・・」
〇校長室
上田「失礼しまーす」
学長バルバロッサ「おお、上田か。待ちわびておったぞい」
学長バルバロッサ「ではさっそく話といこうかの。ほれ、そこのソファにでも座るんじゃ」
上田「わかりました。・・・あれ?昨日の、リオって子は?」
学長バルバロッサ「リオは授業中じゃ。今日は5限目まであるらしいからの」
上田「・・・なんだ。じゃあ今日はこのおっさんと二人きりか」
学長バルバロッサ「あからさまにがっかりするな!!」
学長バルバロッサ「あと一応言っておくが、リオは大学2年生じゃぞ。呼び捨てでリオなんて気安く呼ばない方がいいぞい、殴られるからの」
上田「・・・あっ、そうか、俺の先輩か!」
上田「あの子、どうも年上って感じがしないんだよなあ」
学長バルバロッサ(こいつはよっぽどリオを怒らせたいらしいな・・・)
学長バルバロッサ「では、そろそろ本題に入ろう。まずは、魔法についてじゃ」
学長バルバロッサ「本当に魔法が使えるのか、使えるならば、なぜ魔法が使えるのか?そこを話すとしよう」
上田「よ、よろしくお願いします」
学長バルバロッサ「・・・昔々、魔法を使えたのは女性だけじゃった」
学長バルバロッサ「男は剣を、女は魔法の杖を持って戦うのが主流だったんじゃ」
学長バルバロッサ「女だけがなぜ魔法を使えるのか?わしの先祖はその理由を知りたくて、色々調べたらしい」
学長バルバロッサ「すると、どうやらホルモンが関係していることがわかったのじゃ」
学長バルバロッサ「詳しいことはわしにはわからんが、魔法の力を使うにあたってはホルモンバランスが重要らしい」
学長バルバロッサ「女性は、そのホルモンバランスが魔法を使用するのにちょうど良い具合だったようじゃな」
上田「ほ、ホルモンか。・・・文系である俺には、詳しいことはよくわからないな・・・」
学長バルバロッサ「元々、魔法というのは、力を持たない者が力を持つ者に対抗するために身につける技・・・」
学長バルバロッサ「筋肉があって戦いに適している男性には、魔法の力なんて要らなかったんじゃな」
学長バルバロッサ「だから、男性に比べて力が弱い女性に魔法の力が授けられた、という訳じゃ」
学長バルバロッサ「まあ、女性の全員が全員、魔法が使えた訳ではなかったみたいだがのう」
上田「ふーん。ホルモンバランスで男女を判断し、女性にだけ魔法の力が使えるようにしたってことか」
学長バルバロッサ「・・・しかし・・・わしの先祖は、女性だけに魔法が使えることに納得がいっていなかった」
学長バルバロッサ「毎日ヘロヘロになって仕事から帰ってきても、女房に「稼ぎが少ない」と怒鳴られ、フライパンで叩かれる日々・・・」
学長バルバロッサ「しかもその女房は魔法が使えたそうじゃ」
学長バルバロッサ「だから、わしの先祖は、本当は男性よりも女性の方が強いじゃん、って思っていたようじゃ」
上田「・・・それは・・・南無三、としか言いようがないな」
学長バルバロッサ「だから、男性でもどうにか魔法を使う方法がないか、わしの先祖は考えた」
学長バルバロッサ「そしてついに・・・わしの先祖自身、男であるにも関わらず、魔法の力が使えるようになったのじゃ」
上田「そ、それは一体・・・」
学長バルバロッサ「・・・・・・・・・・女装じゃよ」
上田「・・・・・・・・・はい?」
学長バルバロッサ「女装することで、男性の中のホルモンバランスが変化し、女性に近い体質となった。だから魔法が使えるようになったのじゃ」
上田「・・・・・・・・・・・・・・」
上田「いやいや、流石に無理があるだろうそれは!」
上田「女装するだけでホルモンバランスが変化する訳ないだろ!!」
学長バルバロッサ「仕方ないじゃろ、実際に、魔法が使えるようになってるんじゃからな」
上田「魔法を使う条件ってそんなにガバガバで良いの!?ちょろすぎるだろ!」
学長バルバロッサ「まあまあ安心せい。仮に女装したとしても、魔法を使える者は一部だけだったようじゃからな」
学長バルバロッサ「わしの先祖は無事、魔法を使える体質に変化することができたようじゃ」
上田「ええー・・・」
上田「そっか、だから魔法同好会に入っている男は、全員女装が好きってことか」
学長バルバロッサ「そういうことじゃ。「女装することが心から好きであること」が重要らしいからのう」
上田「じ、じゃああなたも、女装が・・・?」
学長バルバロッサ「決まっておるじゃろ。わしの先祖である男たちも代々そうだったが、三度の飯より女装、じゃよ」
上田「そ、そんなことが・・・魔法のイメージがぶち壊し・・・」
上田「な、何だか頭が痛くなってきたな・・・」
学長バルバロッサ「では少し休憩しよう。話の続きはその後じゃ」
上田(これ以上話を聞くのが怖いな・・・)
試験の問題用紙の余白に「女装」。通報レベルのクレイジーな主人公ですね。今のところマトモな登場人物がいないと気付き、笑ってしまいました。