今日は何の日?(脚本)
〇明るいリビング
母「ねえ、みんな覚えてるー?今日が何の日か」
キッチンにて、母が唐突にそんなことを言いだした。
その途端リビングにいた父、高校生の長女、中学生の長男の三人は素早くアイコンタクト。
全員の気持ちは一つになった――それは。
――やべえ!何も覚えてねええええ!
総合格闘技を習い、声もデカければ力も強い、まさに史上最強クラスと言っても過言ではない母である。
ついでに性格もどぎつい、怖い、厳しいと三拍子そろっている。
なんらかの記念日をみんな揃って忘れたともなれば、どのような雷が落ちるか分かったものではない。
三人は顔を突き合わせ、ひそひそと話をした。
姉「どどどどどどどどどうしようお父さん!」
父「おおおおおおちゅちゅけミカ!な、なんとか誤魔化しゅしかにゃい!」
弟「いやオヤジが一番動揺してんだろ落ち着けよ!今日ってなんかの記念日だったか?」
弟「母の日父の日でもないし、母さんの誕生日は先月だし、次の家族の誕生日は来月の父さんの誕生日だろ?結婚記念日は半年後だし」
父「す、すまんハルヤ。お父さん関連の記念日ってことは除外していい」
父「父の日とか父さんの誕生日なら忘れたところで母さんが怒ることなんかないからな・・・・・・あ、自分で言ってて涙出てきた」
姉「お、お父さんかわいそう・・・・・・」
父「と、とにかくそれ以外の何かだ何か!初デート記念日?ハネムーン記念日?」
父「いやそれはどっちも二か月前と三か月前のはず・・・・・・」
弟「え、そんなのも覚えてないと叱られるの?」
父「ボコられて雨の中置き去りにされた父さんですけどなにか?」
弟「こわい」
全員が反応しないのを、母はどう思ったのか。素知らぬ顔で冷蔵庫を覗き、今日の夕食の準備をしている。それがかえって怖い。
どうしよう。このままでは夕食が最後の晩餐になってしまうどころか、
その最後の晩餐さえ食べられなくなるのではないか、自分達は。
娘と息子だけでも守らなければ、と思う父。
残念ながらひょろっこい自分ではどう足掻いてもママには勝てないわけでして。
父「あるいは何かのカモフラってこともあるかもしれぬ」
冷や汗をだらだら流しながら、父は言った。
父「れ、冷蔵庫のプリンを誰かがこっそり食べたとか、それで怒ってるとか」
弟「そんな度胸のあることできる人がこの家にいるの?お母さんが買ったプリンをこっそり食べることのできる人が?」
姉「いるわけない(断言)」
父「いるわけないな!(即答)」
弟「じゃあ他に何?」
父「さあ・・・・・・」
姉「さあじゃないよお父さん!このままじゃ私達が夕飯の食材にされちゃうよ!」
おい娘、そこまで行くのはちょっと母さんの評価酷くないか?と思ったが。
まあそれだけストロングなママに育てられて鍛えられてきたのだからしょうがないとも言える。
やばい、本気で何も思いつかない。
父が心の底から焦り始めたその時だ。
母「ちょっと何で黙ってるのよ。あんた達、まさか忘れたんじゃないでしょうね?」
くるり、と振り返った母は呆れ顔で言った。
母「今日はスーパーでお肉と冷凍食品の特売がある日でしょ、三人で買ってきて頂戴」
まさかのそういうオチかよ!と。
母以外の家族全員が即座にスーパーの袋を装備しながら思ったのは、言うまでもない。
家族の動揺ぶりがすごかったです。笑
記念日ってやっぱりこだわっちゃいますよね。
でもまさかスーパーの特売日だったなんで、ほっとするというか、脱力するというか。
今日も平和な家庭でよかったです。
日常のごく普通の家庭で、実際にありそうな話で笑いました。サッと読めて面白かったです。著者のセンスが光っている作品だと思いまいした!
家族内で一番強いのは、そう、母である。
そんな縮図を描いた作品だなぁと感じました笑
確かに記念日とか忘れた日には…一体どうなるかわからないですもんね…。