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きせき

エピソード11-混色の刻-(脚本)

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〇シックなリビング
明石春刻「くろのすゐわ。かなり変わった名前と思ってたけど、試しに黒野さんを探してみた」
黒野すみれ「すゐわ・・・・・・って」
明石春刻「まぁまぁ。この辺りのお宅で黒野さんは1軒しかないし、お父さんも結構有名な人だしね」
  春刻は私の名前は知らなかったが、どうやら、
  父の名前は知ってたらしい。
明石春刻「黒野草輔さんっていうんだよね。お父さん」

〇綺麗な会議室
黒野草輔「名前は「黒野」ですが、「ホワイト」でクリーンな仕事をしています」

〇シックなリビング
黒野すみれ「・・・・・・」
  春刻があまりに優しく父の名前を言うので、
  私は気恥ずかしくなり、話を変える。
黒野すみれ「仕方なくない?」
黒野すみれ「ボール、なくさないように名前を父が書いてくれてたけど、「みれ」だけ消えたんだから」
黒野すみれ「まぁ、変な名前って言うのなら、」
黒野すみれ「そもそも? 春生まれでもないのに「すみれ」はどうなの? って思うけどさ」
  私はそんなことを口走ると、
  春刻は気にしていない風に笑った。
明石春刻「ハハハ、実は僕もだよ。2月29日生まれ。少し早く生まれすぎたみたい。君は?」
黒野すみれ「え?」
明石春刻「誕生日だよ。君にもあるよね?」
  春刻としては何の気なしに聞いたのだろう。
  まさか自身の誕生日の話になるなんて思わなかったが、
  この話を振った、振られたで言えば、振ったのは私だ。
黒野すみれ「誕生日は・・・・・・終わったよ。今年のは」
明石春刻「終わった?」
黒野すみれ「つい、3日前に・・・・・・21歳になった」
  3日前。それは父が出張から帰ってくる途中で、
  亡くなった日のことだった。
明石春刻「そう・・・・・・だったんだ・・・・・・」
  珍しく笑顔ではない春刻。
  いや、こんな話をしている時に笑顔でも人間性を疑うが、
  調子が狂う。
黒野すみれ「あ、でも、正直、就活や論文でドタバタしてたから誕生日なんて忘れていたんだ」
黒野すみれ「それに、貴方のおかげでさ。父は死なずに済むかも知れないんだよね?」
黒野すみれ「だから・・・・・・」
  私は彼に「気にしないで欲しい」と言うと、
  彼はやっといつものように笑った。
明石春刻「分かった。その日にお父さんが帰って来ないと良いね」
黒野すみれ「うん。事故にさえ遭わなければ、きっと無事に帰ってきてくれる筈」
黒野すみれ「そして、その時は貴方の望みも叶っている」
明石春刻「・・・・・・そう、だね」
  一瞬だけ、考えたように目を閉じた春刻はすぐに
  目を開いて、いつものように笑う。
明石春刻「ねぇ、もし、僕が生きて、あの家を出ることができたらさ」
明石春刻「僕も君の誕生日を祝っても良いかな?」
黒野すみれ「えーと、私の誕生日を、貴方が?」
明石春刻「うん、ちょっと憧れてたんだ。誰かの誕生日をお祝いするのって・・・・・・」
  多分、これが普通の子が言ったら、不思議な感じだが、
  おそらく、彼の場合は嘘や冗談ではないのだろう。

〇畳敷きの大広間
明石春刻「あんまり、先代や他の兄弟とかも別邸で暮らしてたから会わなかったしね」

〇シックなリビング
黒野すみれ「(って、死亡フラグをこれ以上、立てない!!)」
  死を回避するのは難しいのだから。
黒野すみれ「まぁ、でも、良いよ。それで、2月になったら、貴方の誕生日も祝ってあげる」
明石春刻「ほんと?」
黒野すみれ「うん、誕生日を祝ってもらったのに祝わない程、私達は他人じゃないと思う」
黒野すみれ「純粋な友達や家族とも違うかもだけどね。私も貴方の誕生日を祝うよ」
明石春刻「ありがとう、じゃあ、生きなきゃね。それまでは」

〇地下室
  彼を亡き者にしたい誰かに見つかれば、
  その誰かに殺されてしまうだろう青年。

〇宮殿の門
  その、彼や

〇シックなリビング
  今のままでは、命を落としてしまう男性。

〇古民家の蔵
  彼らを救う為に命を狙われ、

〇魔法陣2
  さらに、蝋燭の破損によって
  過去に閉じ込められるリスクも背負ってしまった
  『時の神』
  彼女はまた過去へと戻る。

〇魔法陣2
明石春刻「じゃあ、改めておさらい。君は4日前の過去へ再び戻る」
明石春刻「但し、秘術の媒介はものの記憶だから4日前に明石家にあったものでないといけない」
明石春刻「そこで、今回はこの指輪を使う」
明石春刻「そして、そこから、君は胡蝶庵に再び向かう」

〇貴族の応接間
  おそらく、4日前の昼頃、指輪は明石家の本邸の
  応接間にあり、今後、胡蝶庵での捜索に失敗した時は
  そこからやり直すことになるらしい。

〇魔法陣2
明石春刻「大丈夫。君が危なくなったら、またさっきのように中断する」

〇黒
  途中で、秘術を中断するには蝋燭が燃え尽きる前に
  火を消す必要があるらしい。

〇黒
  というのも、それは蝋燭が燃え尽きても、
  火が消えることには変わらないが、
  蝋燭もなくなることになるので、蝋燭を壊した時と同様
  過去が確定してしまうらしい。

〇魔法陣2
  そして、その時も過去に戻っていた人間は
  永遠に亜空間へ閉じ込められるらしい。

〇魔法陣2
黒野すみれ「ところで、少し気になってたんだけど、あの食事会でのことは確定してるんだよね?」
明石春刻「うん、あと夜、必死に資料を読んで得た情報とかもね」
黒野すみれ「だったら、私が庭で捕まったことや蔵で死にかけたことも確定されてるんじゃない?」
明石春刻「あ、うん。ただ、それが起こる以前の過去に戻れば、それはなかったことになる」

〇風流な庭園
明石春刻「確定したと言っても、撮った動画を編集したりするのと同じようなものだと思う」

〇古民家の蔵
明石春刻「1時間の動画の残りの10分を切り取って消す。すると、50分間はそのまま残る」

〇魔法陣2
明石春刻「だから、4日前の昼前の時刻を書いて、過去に戻る」
明石春刻「必要な過去は残して、不都合な過去は切り取る」
明石春刻「よくフィクションなんかで、主人公とかが過去を戻っても、過去をやり直ししても」
明石春刻「変えたい部分以外はできるだけ前の時と同じ行動をして、」
明石春刻「バタフライエフェクトを回避しようとしてたりもするけど、それに関しては」
明石春刻「あまり気にしなくて良い」
明石春刻「確定した未来は存在しないし、この秘術と同等か、あるいはそれ以上の力がなければ」
明石春刻「そもそも過去に干渉することなんて不可能なことなんだ」

〇蝶

〇蝶

〇蝶

〇黒

〇大きな日本家屋
明石春刻「まぁ、本当は君が胡蝶庵に着いた時からやり直せるのがベターだけど、ね」

〇黒
明石春刻「蝋燭の火をつけたいけど、もうライターもマッチも使えないってなった時、」
明石春刻「別の、既に火がついた蝋燭から火を借りて、つけることがあるよね?」
黒野すみれ「うん、まぁ、そういうこともあると思うけど」
明石春刻「この明石家の秘術もそういうところがあるもので、」
明石春刻「便利なんだけど、不便なところもあって、不完全なところもあってね」
明石春刻「でも、僕らに幸いだったのは1度だけしか挑戦できない訳じゃないところかなと思う」
明石春刻「まぁ、君には色々、面倒をかけるけどさ」
黒野すみれ「(そう・・・・・・確かにこれは向こうで燃えている蝋燭の火から)」
黒野すみれ「(火を借りてくるように、過去を借りてくるみたいなものだ)」
黒野すみれ「(そして、沢山の蝋燭が立っていて)」

〇黒
黒野すみれ「(その上に未来が作られていくような・・・・・・)」
  そして、中には

〇黒
  火が消えてしまった、過去や未来もあるのだろう。

〇魔法陣2

〇魔法陣2

〇貴族の応接間
黒野すみれ「・・・・・・戻って、きた?」
  私が目を開けると、そこは明石家の本邸の応接間だった。
黒野すみれ「あ、これ・・・・・・」
  私は足元に転がる指輪を拾おうと、指輪は指を伸ばす。
  だが、私は指輪を手に取ることはできなかった。
黒野すみれ「・・・・・・」
  何か、細い糸に引っ張られるように
  指輪は暖炉の奥へと消える。
  大きな暖炉で、まるで見ているだけでひきづり込まれて
  しまうような雰囲気があった。
黒野すみれ「(・・・・・・まぁ、最終的には春刻の手に渡る筈か)」
  私はそう思うと、自分の為に用意してくれた部屋へと
  向かった。

〇貴族の部屋

〇車内

〇大きな日本家屋
黒野すみれ「(さて、今度は家の方を調べるか)」
  私は資料の情報にあった鍵がなくとも、
  屋敷に入れる方法で家に入る。
黒野すみれ「(見た目は凄く和風の家だから、番号とかの入力で開くなんて思わないかも)」
  私は玄関のところにあるインターホンを右に引き、
  下に引くと、インターホンがはずれて
  入力パネルが現れる。
  そして、資料にあった「723K10K4」と押した。
黒野すみれ「(何か、意味がある言葉なのかな・・・・・・)」
黒野すみれ「(まぁ、0229とかよりは安心だけど)」
  いくら何でも、誕生日は危険かと思うが、
  春刻ならやりかねないかも知れない。
黒野すみれ「(まぁ、良いか・・・・・・ん? 戸が開かない?)」
  パネルに番号等を入力したのに、戸が開かない。
黒野すみれ「?」
  よく見ると、戸に何かが引っかかっているみたいだ。
黒野すみれ「何、これ?」
  私はその引っかかったものを取ろうと、指を伸ばすと
  私はその場に倒れてしまった。

次のエピソード:エピソード12-混色の刻-

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