第5話 遭遇(脚本)
〇山道
〇山中の坂道
〇山道
〇山道
以龍とイリアは周囲を警戒しながら山道を進んでいく。
途中、獣のようなテットや鳥のようなテットなどと戦闘になったが、たいして苦戦することなく戦いをこなしていった。
──ただ、以龍にとっては戦いで自然に身体が動くことは不思議な感覚でしかなかった。
以龍 渚(記憶がなくても俺はアドベントってヤツだったってことか)
〇洞窟の入口(看板無し)
先を歩いていたイリアが足を止める。
イリア「ありましたよ、洞穴が」
以龍 渚「よし、オレが先に行こう」
イリア「あ、待ってください」
イリア「──これを使ってください」
そういってイリアは、なにやらカードのようなものを以龍に手渡した。
以龍 渚「これは?」
イリア「これは照明の魔法を具現化したモノです」
以龍 渚「具現化?」
イリア「魔法をこういうカード状にして、誰でも使えるようにしたモノです」
イリア「そのカードを手に持って、魔法を使うイメージを──それは照明の魔法なので、光るイメージをしてもらえれば魔法が発動しますよ」
以龍は言われたとおり、カードを手にイメージを固める。
すると、カードが照明の光を放ち始めた。
イリア「必要がなくなったら、そのまま捨てちゃってください。 どうせ私の魔法力じゃ、しばらくしたら消滅しちゃいますから」
以龍 渚「アンタはいいのか?」
イリア「私は直接照明の魔法を使いますよ」
イリアが掌を光らせる。
どうやら魔法が使えれば同じようなことをカードなしで出来るようだ。
イリア「──じゃ、行きましょうか」
〇暗い洞窟
この洞穴は自然に出来たものではないらしく、ところどころに何者かが掘り進んで作られた形跡があった。
細い通路をしばらく進んでいくと、すぐ行き止まりになっていた。
以龍 渚「ん? もう行き止まりか?」
照明魔法のカードで足元を照らしてみる。
そこには藁や枯葉、木の実や食い散らかした野菜くずなどが散乱していた。
イリア「どうやらここがグリズリーの巣で間違いないみたいですね」
イリア「それじゃあ一旦外に出て、戻ってくるのを待ち伏せしましょう」
以龍とイリアは洞穴を引き返す。
〇岩穴の出口
〇岩穴の出口
〇暗い洞窟
出入り口の光が見え始めた時だった。
先ほどまで見えていた出入り口からの光が突然に消えてしまった。
イリア「あれ?」
洞穴を折り返して移動していたので、戻りはイリアが先を歩いていたのだが、突如出口の光が消えたため、イリアは足を止めた。
以龍 渚「どうした?」
イリア「いえ、さっきまで外の光が見えてたんですが、急に──」
イリアが自身の照明魔法の光を出入り口のあった方へ向ける。
岩壁に混じり、色鮮やかな灰色の壁が見える。
灰色の壁が動き出す。
──そこに現れたのは、暗闇で光る二つの眼球。
以龍 渚「イリアっ、どけ!!」
以龍はイリアを押しのけて、場所を入れ替わる。
現れた眼球に向けて、照明魔法のカードを投げつける。
照明魔法のカードは何者かの眼球に当たり、砕け散るのと同時に眩い光を放って消えていった。
一瞬の閃光が映し出したのは、巨大な熊の姿だった。
閃光で怯んだ隙をついて、以龍が体当たりを仕掛ける。
顔から先に洞穴に入った熊は、爪を洞穴に入れることもできず、以龍の体当たりをまともに受ける。
体当たりに怯んで、熊は洞穴から一歩下がった。
〇洞窟の入口(看板無し)
その隙に、以龍とイリアは洞穴の中から抜け出した。
イリア「渚さんっ、気をつけてください。 ──グリズリーですっ」
以龍 渚「わかってるっ」