悪魔さんと天使のゆる~異日常

ヨリミチ

エピソード2(脚本)

悪魔さんと天使のゆる~異日常

ヨリミチ

今すぐ読む

悪魔さんと天使のゆる~異日常
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇安アパートの台所
  天使と過ごす、初の週末がやってきた
天使さん「ワサビ入りもいいのですが、たまには別のケーキを作りませんか? ハバネロとか」
  ハバネロ・・・
  なんて悪魔的な発想をするのこいつ。
  本当に天使?
天使さん「どうしたのですか私の顔をジーッと見て」
  ここ数日間の同居生活で分かったことがある。それは──
悪魔さん「別に私あんたを苦しめることに固執する必要ないわよね?」
  天使はワサビ30倍入りケーキを食べる手を止めた
天使さん「まさか悪魔さん、あなた心が折れてしまったのですか! このケーキで私を苦しめるのでしょう!?」
悪魔さん「うっさいわね! もう30倍よ? 同居初日からワサビ大増量してんのに、美味しいって食べる奴をどう苦しめろっていうのよ!」
  もう泣きたい。
  私は一体いつ地獄に帰れるの?
天使さん「根性なしの悪魔さんです。 私に注意を向けさせて、人間へ危害を加えないようコントロールしてたのに・・・」
  ちょっと?
  聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど
悪魔さん「嘘でしょあんた・・・まさか今までの言動全部計算ずくって、こと!?」
  あの煽りすらも!?
天使さん「ふふ、当たり前です。 悪魔が悪さをするのを止めるのも天使の仕事ですから」
  バナナに釣られて落とし穴に落ちたくせにッ
悪魔さん「それを言ったら悪魔が悪さをするのは悪魔の仕事よ!」
  言いながら、私は冷蔵庫を開いた。
悪魔さん「この大量のワサビとケーキの材料。 あんたの策略通りなら完全に無駄よ!  よかったわね!!」
  そりゃ、悪魔のプライドにかけて苦しめてやるってドカ買いした私も私だけど!
天使さん「そんなことありません。あなたは私を苦しめて力を取り戻したいのでしょう?  諦めなければ無駄にはなりません」
悪魔さん「諦めるって言ってんでしょが!!」
  こんなことならケーキの材料費を悪事の費用に回せば、人間を苦しめるモノが──
天使さん「ふふ、そんなモノ。 ワサビ入りケーキしか作れないあなたに作れるとは思えません」
  !?
悪魔さん「こ、心を読むなぁ! 天使だからってやって良いことと悪いことがあるでしょ!!」
天使さん「ワサビ入りケーキを毎日食べさせるという常人ならば拷問確定のそれはやっていいことなのですか?」
  唐突な正論パンチはやめて!
悪魔さん「くぅ、力さえ! 力さえ取り戻していたらこんなやつぅぅ!」
天使さん「そんなことより、もう夕飯時ですが。 ワサビとケーキの材料以外に何かありますか?」
悪魔さん「そんなことで済ますんじゃないわよ!  なによ? 夕飯なら私が作るけど」
天使さん「いえ、居候の身なので・・・たまには私が作ろうかと」
悪魔さん「ふ、ふん!  いい心がけじゃない。 待ってなさい今他の食材を──」
  冷蔵庫を漁るが、大量のワサビとケーキの材料以外はなくなっていた
悪魔さん「おかしいわね・・・買い物に行かないといけないわ」
天使さん「おかしいのはあなたです。 なぜケーキの材料を買うついでに他の食材を買わなかったのですか?」
悪魔さん「う、うるさい! あんたをぎゃふんと言わせたかったのよ!」
天使さん「ぎゃふん。 満足ですか?」
悪魔さん「哀れみの目を向けないで!  ほら、買い物行くわよ、ついてき──」
  財布を開いて私は固まる
天使さん「どうされました?」
悪魔さん「お金が、ない」
天使さん「ああ、ケーキの素は高いですからね。 毎日変なケーキを何十個も作っていればそうなりますよ」
悪魔さん「な、なによ!  元はと言えばあんたが煽ってきたのがいけないのよ!」
天使さん「はいはい。そうですね。 でも今日からどうするのですか? ワサビ入りケーキを主食にするのですか?」
悪魔さん「嫌よ!  こんなもの食べる奴の気が知れないわ!!」
天使さん「それを私に食べさせていたのですよ ・・・じゃあ、どうするのですか」
悪魔さん「決まってるじゃない!  バイト代の前借りよ!」

〇ケーキ屋
悪魔さん「店長! バイト代前借りさせて!」
店長「殺されたいのか?」
悪魔さん「お願い店長! そこを何とか!! 今月もうお金がないの!」
店長「てめえ、先月もワサビ入りケーキを改良して金がねえって言ってたが・・・。 まだあのおぞましい物体を作ってたのか?」
悪魔さん「もちろん、タダでとは言わないわ!」
店長「話を聞けダメバイト」
悪魔さん「こいつをこき使っていいからお願い!」
  背中を押す。
  天使は「え?」と私を見た
天使さん(『聞いてませんが?』)
  こいつ心の中に直接――いえ、相手は心を読む天使。こ、こんなの普通よ普通!
悪魔さん(『言ってないもの。でも、妥当じゃないかしら? 家主は私。本来ならば家賃を請求される立場よあなたは』)
天使さん(『なるほど、それは確かに。居候ですものね私。働かざる者食うべからずです』)
悪魔さん(『ふふん! わかればいいわ』)
店長「おい、見つめ合ってどうした? お嬢ちゃん、こいつは嫌だったら嫌って言わなきゃ増長するぞ」
天使さん「いいえ、店長さん。私が提案したのです。精一杯ご奉仕させていただきますので、どうかお給料を前借りさせてください!」
店長「え? あ、そうなのか。おう・・・。 ちっ、そんな笑顔で頭を下げられちゃ 仕方ねえ。嬢ちゃん名前は?」
天使さん「はい! 天使です!!」
店長「天子ちゃんか、元気があっていいな。 よろしく頼むぜ!」
天使さん「はい!」
  2人はがっちり握手を交わす
悪魔さん(くくく、かかったわね天使。このハゲ店長のしごきは超ハードよ! お給料のついでにあんたの苦しみ顔も拝んでやるわ!)
悪魔さん「それじゃあ、私はカウンター席で優雅に見物させてもらおうかしら」
店長「なに言ってやがんだ。 新人に仕事を教えるのは先輩の役目だろが。こい」
悪魔さん「ちょ、ちょっと用事を思い出したからこれで・・・」
天使さん「いきますよ先輩?」
悪魔さん「いやぁあ! 今日はシフトじゃないぃい!」

〇ファミリーレストランの店内
  レジレジ、接客接客、レジレジレジ接客接客──
悪魔さん「うひいい!?」
店長「叫んでないでお客様の注文取れ! ちったぁ天子ちゃんを見習えッ」
天使さん「はい、ご注文は以上ですね? ご一緒に新作のレモネードはいかがでしょうか?」
お客様「あ、はい・・・お願いします」
天使さん「ありがとうございます!」
店長「客を魅了するあの笑顔、まるで天使だ! 商売人たるものお客様への対応はああでなくちゃな!」
  くっ、私の方が先輩なのに!
悪魔さん「店長! 私も笑顔なら自信がありまぁああ! 皿がああ!!」
店長「笑顔がよくてもその他がまるでダメじゃねぇか!! 減給すっぞ!!」
悪魔さん「そ、それだけはご勘弁を!」
  天使が私をちらりと見た
  なによ?
天使さん「ふっ」
悪魔さん「ああ! 今笑ったわね!! 人の不幸をよくも──」
店長「ごらぁダメバイト! さっさと割れた皿片付けろ!!」
悪魔さん「ひいいッ!?」

〇店の休憩室
悪魔さん「うう! こんなとこ今日で辞めてやるッ!!」
  怒ると怖いのよあのハゲ!
天使さん「大丈夫ですか?」
悪魔さん「なんであんた平気なのよぉ! 苦しむ顔が見たかったのにぃ」
  あわよくば地獄に帰れると思ってたのに!
天使さん「職業柄人間の接し方には慣れてますので。それに天使は体力がないと務まりません」
悪魔さん「ちょっと、それ私に体力がないって言いたいの!?」
店長「お疲れーい」
  店長が入ってきた。
  辞めるって言わなきゃ!
悪魔さん「て、店長! 私──」
店長「今日はいつも以上に人が来たからな。正直助かった。ほれ、前借分。色付けといたから計画的に使えよダメバイト」
  ガサゴソ
悪魔さん「店長! 私これからも頑張るわ!!」
  くッ、これだからここ辞められないのよ!
店長「それからこれは天子ちゃんの分だ」
天使さん「え、私はそんなつもりでは」
店長「労働者に対価を支払わない店主はいねぇ。いいからとっとけ。また働きたくなったら言ってくれよ。大歓迎だ」
  給料袋を押し付けて、店長は店閉め作業に戻った
悪魔さん「ふん、良かったじゃない」
天使さん「私、お金を貰ってよかったのでしょうか?」
悪魔さん「労働の対価よ当たり前じゃない! お金は天下の回りものよ! お金があればなんだってできるわ!」
天使さん「でも、あなたは地獄に帰れてないですよ」
悪魔さん「あんたがバイトで苦しんだ顔を見せてくれれば今頃悪魔パワーが戻っていたはずよ! ・・・多分」
  ぐううう!
  お腹が鳴った
悪魔さん「ま、まあいいわ!  生活費は手に入ったし帰るわよ。 これでワサビ入りケーキを食べずに済む」
天使さん「ミッションコンプリートですね。 あ、私のこのお金でおいしい食材買って帰りません?」
悪魔さん「お、いいこと言うわねあんた」
天使さん「うふふ、天使ですので」

次のエピソード:エピソード3

コメント

  • さっきまでYouTubeで旧デビルマンのED聞いてました‥

    もうこれで帰れーなーいー🎵
    🤣ノシ⭐︎⭐︎

  • 悪魔さんが終始空回りしている様が楽しすぎます。ワサビ入りケーキへの執着と執念は只者じゃないですね!登場キャラクターでは店長さんが一番悪魔っぽいと思ってしまいましたがw

成分キーワード

ページTOPへ