少年ドリルは廃刊です!

西瓜頭

第1話「伝説をもう一度」(脚本)

少年ドリルは廃刊です!

西瓜頭

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〇漫画家の仕事部屋
金田 一生(かねだ いっせい)「よっしゃ」
金田 一生(かねだ いっせい)「待たせたな」
担当編集者「『男の銀河』19ページ 確かにお預りします!」
担当編集者「先生」
担当編集者「体は大丈夫ですか?」
金田 一生(かねだ いっせい)「若い頃みたいにはいかねーな」
金田 一生(かねだ いっせい)「ゴホッゴホッ」
担当編集者「ご自愛なさって下さい」
担当編集者「先生が倒れたら、いくつ連載に穴が空くことか!」
担当編集者「それに、私も・・・」
金田 一生(かねだ いっせい)「ありがとよ」
金田 一生(かねだ いっせい)「でも、そろそろ行かねーと 印刷所が閉まっちまうぜ?」
担当編集者「そうだった」
担当編集者「失礼します!」
金田 一生(かねだ いっせい)「・・ふう」
あゆむ「父ちゃん! 仕事終わったの?」
金田 一生(かねだ いっせい)「あゆむ」
金田 一生(かねだ いっせい)「コノヤロ、担当が帰るの見張ってたな?」
あゆむ「あのおばちゃんキライ!」
あゆむ「目がイヤらしいんだもん!」
金田 一生(かねだ いっせい)「ハハッ!」
金田 一生(かねだ いっせい)「あゆむも色気づくお年頃かねぇ」

〇漫画家の仕事部屋
金田 一生(かねだ いっせい)「なあ、あゆむ」
金田 一生(かねだ いっせい)「大きくなったら、何になりたい?」
あゆむ「え? うーん」
あゆむ「あゆむ、「男の中の男」になる!」
金田 一生(かねだ いっせい)「あぁ? なんだそりゃ?」
あゆむ「だって、父ちゃんの漫画にあったよ!」
あゆむ「『俺は男の中の男になるっ!』」
あゆむ「父ちゃんの漫画だーい好き!」
金田 一生(かねだ いっせい)「・・・」
金田 一生(かねだ いっせい)「親としちゃ複雑だが・・・」
金田 一生(かねだ いっせい)「作家冥利に尽きる・・・よな」
金田 一生(かねだ いっせい)「よし! あゆむ」
金田 一生(かねだ いっせい)「こいつは生き方の話だ」
金田 一生(かねだ いっせい)「この先、何があっても── 漫画の中に父ちゃんがいる」
金田 一生(かねだ いっせい)「お前は、男の中の男になれ!」
あゆむ「なるー!」
金田 一生(かねだ いっせい)「──はは」
金田 一生(かねだ いっせい)「うっ!?」
金田 一生(かねだ いっせい)「ゴホッゴホッ!──グハッ!」

〇黒
  漫画界を牽引した大作家
  金田 一生、死す
  『男の銀河』は未完のまま伝説となり
  日本の漫画界は暗黒時代に入る
  しかし
  巨星墜つとも
  人々の魂に刻まれた輝きは消えはしない
  彼の無念を拾い、意志を継ぐものが
  一人また一人と立ち上がる
  大きなうねりはやがて一つとなり
  ある漫画雑誌を生み出した
  男の
  男による
  男のための少年漫画
  その名を──

〇黒
  少年ドリル!

〇荒野
ネジ太「アニキ! 無理ッス!」
ネジ太「あんな大群、敵う訳ないッス!」
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「・・・」
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「ネジ太、テメェは皆を連れて逃げろ」
ネジ太「そ、そんな! アニキは?」
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「俺は、ここでヤツらを食い止める!」
ネジ太「駄目ッス! そんなの!」
ネジ太「オイラのせいで隠れ家がバレちまったのに!」
ネジ太「せめて、一緒に・・!」
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「テメェが行かなきゃ、誰が皆にこの危機を伝えるんだ!」
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「黙って行けッ!」
ネジ太「──」
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「あばよ、ネジ太」
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「達者でな」
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「来たな」

〇荒野

〇荒野
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「──!」

〇荒地

〇荒野
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「こっちもか!?」

〇スカイフィッシュの群れ

〇荒野
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「そ、空からも!?」

〇荒野

〇荒野
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「・・・」
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「ちょちょちょ」
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「流石に多いよむりむりむり!」
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「お、お・・」

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「多すぎる〜〜!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「こんなに敵ださなきゃよかった! あたしの馬鹿ッ!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「ヤダー! ペン入れヤダー!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「描きたくないよ〜!」
  週間少年ドリル
  連載漫画「ドリルマン!」
  作者:男坂 独歩
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「女ってバレないよう1人でやってきたけど」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「コレもう限界かも」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「し、締切まで・・」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「あと3日・・」

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(とりうる手段は2つ)
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「1つ目。敵の数を減らしてとにかく完成させる」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「危機感と説得力が消え去るけど、体裁は整う」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「2つ目。アシスタントを呼んでもらって、このまま描き切る」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「場合によっては完成しないかもしれない。原稿がぐちゃぐちゃになるかもしれない」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「それに、何より──」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「怖い」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「女だってバレて、全部台無しになるかもしれない」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「・・・」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(それでも)
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「迷うまでもないか」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「『挑戦と妥協があれば、挑戦を選ぶべし』!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「だよね、父ちゃん!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「よし!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「あっ、敷島さん! 実は・・」

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「これでよし!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「あとは・・」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「男らしい格好に着替えて・・」

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「こんな感じでいっか!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「これ以上チチがデカくなると ちょっとヤバいな・・」

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「どんな人が来るんだろ」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「怖いけど、やっぱり楽しみだ」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「同じ、漫画を描く仲間だもんな」
「男坂センセ! 来たッスよぉ〜!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「応よ!」

〇シックな玄関
敷島 海(しきしま かい)「チワっす!」
敷島 海(しきしま かい)「いやー急に連絡くれるからビックリしたッスよ!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「敷島さん!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「ごめん! 一人じゃ無理そうで・・」
敷島 海(しきしま かい)「全然いっすよ! むしろ頼ってくれて嬉しッス!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「・・・あ」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「ありがと!」
敷島 海(しきしま かい)「じゃッ! 来てくれた先生方を紹介するッス!」
敷島 海(しきしま かい)「センセが求めてるのは──」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「ウンウン!」
敷島 海(しきしま かい)「今動かせる人材の中で、1番面白い奴らッスよね!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「うん?」
敷島 海(しきしま かい)「敷島推し☆オモシロ三銃士 を連れてきたッス!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「求めてねぇけど!?」
敷島 海(しきしま かい)「まず一人目!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「聞いてねえし!」
ヒャッハー「ヒャッハー!」
敷島 海(しきしま かい)「ヒャッハー先生、自己紹介アザっす!」
敷島 海(しきしま かい)「センセも何度か一緒に本誌掲載したッスよね」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「『皆殺しラプソディー』のヒャッハー先生?」
ヒャッハー「男坂先生よぉ、俺は『ドリルマン!』なんて認めてねぇぜ!」
ヒャッハー「今日は敵情視察に──」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「ファンです!」
ヒャッハー「ヒャッ!?」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「ヤンキーの心理描写がスゲェリアルですよね! エゲツねぇ暴力シーンの容赦なさもシビレちまってます!」
ヒャッハー「──」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「あのヒャッハー先生に手伝って貰えるとか、嬉しい〜!」
ヒャッハー「ヒャッ・・」
敷島 海(しきしま かい)「2人目はこの方でぇす」
敷島 海(しきしま かい)「御出先生、また太った?」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「お・・」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「御出先生じゃん! 『過食のグルメ』の御出先生じゃん!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「精緻な背景と食べ物のデッサンからは想像もできない豪快な食事シーンで読者を魅了する・・・御出先生じゃん!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「恐れ多いわ!」
敷島 海(しきしま かい)「じゃ、最後に──」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「ちょちょタイム!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「心の準備全然できてなかったわ!」
敷島 海(しきしま かい)「連載デビュー前の先生方のこと よく覚えてるっスね〜」
敷島 海(しきしま かい)「まあ3人目はダイジョブっしょ 早乙女クン、どーぞ♪」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「あ・・」
敷島 海(しきしま かい)「そんなビビんなくてもいースよ」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「あの僕・・」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「?」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「男坂先生の大ファンです!」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「『ドリルマン!』いつも読んでます!」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「大好きですッ!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「・・・」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「あ! ご、ごめんなさい」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「これだけは絶対伝えたいと思って・・」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「いや、嬉しいぜ」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「ありがとな!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「今日はよろしく!」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「はいッ!」
敷島 海(しきしま かい)「早乙女クンはアシスタントに応募してきた子っスね」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「なんか照れるな〜」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「ん?」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「彼もオモシロ三銃士の1人なの?」
敷島 海(しきしま かい)「彼、聞くところによると」
敷島 海(しきしま かい)「女が死ぬほど嫌いらしいっス!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「!?」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「いや嫌いって言うか興味ないすねまあ無関心ていうか好きの反対って意味ならあえて言うなら嫌いかもしれないすね」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「あ、男坂先生の女の子キャラは別です! 2次元は裏切らない! 現実はクソです!」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「ア〜ここに来て良かったナ〜憧れの先生には会えたしこの職場には女とかいう神の失敗作が存在しませんからね」
早乙女 優(さおとめ ゆう)「がんばるぞ〜」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「・・・」
敷島 海(しきしま かい)「ね? オモロいっしょ?」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(オモロくねーよッ!)

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「よーし野郎ども〜!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「やるぜッ!」
「シャア!」
敷島 海(しきしま かい)「うィ〜ス」
敷島 海(しきしま かい)「じゃー俺は戻るッスね〜」

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(すごいすごい!)
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(やっぱ皆でやると超早いわ!)
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(このペースなら、3日と言わず 2日カンヅメ位で行けるかも!)
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(・・・)
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(あれ?)
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(じゃあ私、最低2日はこのむくつけき男たちと過ごすってこと・・・?)
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(この狭い部屋で!?)
ヒャッハー「手が止まってるぜ! 男坂先生ヨォ!」
御出(おで)「背景できたんだな!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)「お、おう!」
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(わ、私は男──)
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(私は男っ!)
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(負けない)
男坂 独歩(おとこざか あゆむ)(あの時、誓ったんだ──)

〇雑誌編集部
あゆむ「どうして!」
あゆむ「なぜ私に『男の銀河』の続きを描かせてくれないんですか!?」
担当編集者「・・・」
担当編集者「連載の権利を、編集部が持っているからよ」
あゆむ「そんなのもう聞き飽きました」
あゆむ「娘が親の漫画を描いて何が悪いんですか?」
あゆむ「私が1番父の漫画を好きなのに!」
担当編集者「どれだけ好きかは関係ありません」
担当編集者「然るべき方に、然るべき時に依頼します」
あゆむ「・・・」
あゆむ「父の続きを描くために、ずっと漫画をやってきたんです」
あゆむ「それ以外、全部捨てたんです」
担当編集者「・・・」
担当編集者「なんと言われようと 今の貴方に『男の銀河』を描かせるわけにはいきません」
担当編集者「それに、全てを捨てたなんて言わないで」
担当編集者「金田先生も悲しみます」
あゆむ「──」
あゆむ「わかりました」
担当編集者「そう、なら──」
あゆむ「私が、女だからですね」
担当編集者「!」
あゆむ「女だから!『男の銀河』を描くに相応しくないって」
あゆむ「そう言うんですね!」
担当編集者「──違う、違うわ」
あゆむ「確かに、全部捨てただなんてまちがった認識でした」
担当編集者「ッ! やめなさい!」
担当編集者「・・・」
あゆむ「私は女を捨てます」
あゆむ「そして、男として漫画界で覇権を取ります」
あゆむ「貴方がどう言おうと、自分の我儘を通せる漫画家になります」
あゆむ「もう一度、自分の手で」
あゆむ「父の漫画を歴史の舞台に立たせるために!」

〇漫画家の仕事部屋
  締切は近いッ! 男たちよ!
  寝る間も惜しんで
  食う間も惜しんで
  ただひたすらに描け、描け、描けッ!
  無論、風呂になぞ入る時間は無い!
  やがてその空間には
  男たちの熱き激臭が立ち籠める!
  あゆむもまた、自身から立ち昇る
  『男の勲章』に気づき──
  その両脇を強く締めるのだった!
  しかしすでに時遅し!
  その異質な香りを訝しむ男が1人・・・
  果たして締切は!? 原稿は!?
  そしてあゆむは男を貫き通すことができるのかっ!?
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「次回ッ! 『少年ドリルは廃刊です!』」

〇漫画家の仕事部屋
赤熱 鋼(せきねつ はがね)「乞うご期待ッ!」

次のエピソード:第2話「消えたドリル」①

コメント

  • キャラが立っていてとても面白かったです!

    アシスタントくんも好きですが、
    あゆむちゃんをめっちゃ応援してます!

  • 少年ドリルは女人禁制ってあゆむちゃんの思い込みだったんですね…と思ったけどアシスタントファンくんが女子嫌いな件で一波乱ありそうですね
    大好きだった父が亡くなり、その続きを書きたい…!という主人公が健気で推せる……

  • 熱い熱いぜ!

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