出会い(脚本)
〇黒
(痛い───────)
(呆気ない最後だったな─────)
(まさか余所見してたら車に轢かれるなんて)
全身の痛みを五感全てで感じる。
「人が轢かれたぞ!救急車を呼べ!」
周りの人の声が耳に響く──
「おい、大丈夫かお前!」
「僕は大丈夫ですし、この子も無事です」
知らない人の声が聞こえる
恐る恐る私は目をあけた
〇市街地の交差点
ガク「助かってよかった」
優しそうな男の人が私を抱えたままそう言う
(痛くて声も出せない)
モブ男「轢かれて血も出てるのに動いちゃダメですよ!」
よく見てみると、
血は私からではなく、私を抱えている彼から出ていたようだった。
モブ男「救急車くるまで大人しく────って、えっ、もう傷がない...。まさかあんた!?」
モブ男「狼男!?!?」
男はそう言うと全速力で走りどこかへ行ってしまった。
(狼男ってなんだろう...)
ガク「この街ももう無理か──」
男がボソッと言う。
周りが急にうるさくなり、雨が降ってきた。
〇市街地の交差点
モブ子「きゃはははは!狼男なんだかわいそ〜」
モブ男「狼男が人間様に迷惑かけんなっつーの!」
モブ子「満月近いし、殺人事件おきるんじゃない?」
〇市街地の交差点
(いい事を言われてないのはわかる)
私を抱えたまま男は走り出した。
雷が聞こえないように男は私の耳を塞いでくれた
〇マンションの共用廊下
男はひたすら走り、自分の住まいに着いたようだった
人の目を気にしているようで、とても急いでいた。
〇部屋のベッド
男は私の身体を拭いてくれた。
ガク「俺の名前はガク。君は?」
そう言いながら私の傷の手当をしてくれた。
名前...思い出せない。
掠れた声で答える
「わからない」
男は私の身体を拭く手を少し止めた
ガク「じゃあ仮の名前、つけてあげる」
ガク「「ハナ」なんてどう?」
心臓がトクンと鳴った。
「嬉しい!名前ありがとう!ガクくん!」
〇白いバスルーム
ガク「風邪引いちゃうし、お風呂入ろうか」
「確かにちょっと頭痛くなってき──」
ガク「ハナ!」
私の意識はそこで途切れた。
〇部屋のベッド
どれくらいの時間が経ったのだろう
気がつくと私はベットの上にいた
ガク「目覚めた?」
「うん。もしかしてお風呂入れてくれたの?」
ガク「そうだよ。あのままじゃ風邪引いちゃうからね」
恥ずかしさと申し訳なさで私は顔を隠した
「そういえば、狼男って何?」
話題を変えたくてさっき気になったことを聞いた。
するとガクは神妙な面持ちをし始めた
ガク「君になら話してもいいかな」
〇霧の立ち込める森
昔、狼は人を食べて生きていたんだ。
狼は絶大な力を持っていて人間はどんどん食い荒らされ、
人口はどんどん減っていった。
そんな時、1匹の救世主が現れた。
人間を好まないウルフ「ジン」
彼は狼族を支配し、人間を喰わないという契約を人間と交わした。
そして彼は新たな文明を築いていった。
それから数百年───────。
人間の中に狼と交わる者がいた。
そうして生まれたのが『狼男』であった。
〇けもの道
狼男は人間と狼の子という事で、どちらの力も持っていた。
その力を散々に使った結果、
狼男は凶暴だというイメージがついてしまった。
満月になると己の力を抑えきれず暴走化するとも言い伝えられている。
ガク「そんな事実はないんだけどね」
ガク「昔、狼男のうちの1人が満月の日に暴れ狂ったせいでそのように言われてるんだ」
そしてその時代から狼男は蔑視されている。
狼男が何か不審な動きをしたら殺してもいいという法律ができるくらいまで。
〇部屋のベッド
ガク「──────っていうのが狼男についてだよ」
ガク「だから俺はさっき轢かれても死ななかったんだ」
ガク「狼族は治癒力が高いからね」
ガク「でも現代は生き辛すぎる」
ガク「狼男を一括りにして、僕自身のことなんて誰も見てくれない」
ガク「俺の家族もきっとどこかで苦しみながら生活してる」
ガク「俺は今、家族を探してるんだ」
ガク「君もそうなんだろう?」
ガクは私の首にあるペンダントを触った。
ガク「この子、ハナにそっくりだ」
(家族...。そういえばいた気がする)
「私も...家族...探す...」
「このペンダントを見ると、暖かい気持ちになるの」
「自分自身のことも思い出したいし、ガクくんと一緒に家族探す!」
ガクは私の手を取った。
ガク「探そう。一緒に、僕らの家族を!」
悪いことをする者がいれば、全体的に悪く言われる風潮はなんとかならないかと思います。
家族を探すことになりそうですが、もしかして彼も…でしょうか。
主人公は少女なのですね、ガクとの会話からどんな存在だろうと色々想像していました。実在する狼と人間という交わりにくそうなものが織りなす世界、これからどうなっていくのか楽しみです。
狼男にも当然家族はいるんですよね。その家族が何処にいるのか探す旅に彼女が加わったらどんなストーリーになるんだ。楽しみです。