宇宙開拓帝国ザンドボッグズ(脚本)
〇宇宙空間
20XX年。
地球侵略を目論んだ
宇宙侵略帝国ザンドボッグズは
地球人のヒーローたちの抵抗に破れ、
宇宙へと帰っていった。
これは彼らのその後の物語である。
〇コックピット
ミレット「──でさ、俺らこれからどうするよ?」
ウィート「・・・地球侵略にも失敗し、 母星も既に滅んでいる」
ウィート「このまま宇宙の藻屑となり朽ちる他 なかろうて」
ミレット「お前、それマジで言ってんのか? 俺はイヤだぜ、そんな終わり方」
ウィート「それは・・・我とて同じだ」
バンヤード「うおおお、この美しい俺様が ここで終わりなんて!!」
ビーン「こんなことならば・・・ 地球を裏切るのではなかった・・・」
バンヤード「そういえばビーンは元地球人だもんな・・・」
エンペライス「皆の者、落ち着け」
バンヤード「エンペライス様!!」
エンペライス「我々ザンドボッグズは こんなところでは終わらない 私が終わらせない」
エンペライス「皆の者──信じてくれ」
「エンペライス様!!」
ウィート「うむ、さすがはエンペライス様」
ミレット「一生着いていきますぜ!」
ミレット「ん・・・? なんだか宇宙船の揺れが・・・?」
〇コックピット
緊急事態発生 緊急事態発生
燃料タンクに隕石が衝突
燃料が漏出しています
ミレット「一生着いていきますって誓った直後に 一生の終わりか!?」
ウィート「慌てるな とにかく近くの星に不時着する他あるまい」
ミレット「近くの星、近くの星っと・・・ アレか!?」
〇地球
・・・・・・
ビーン「なんだか・・・地球によく似た星だな・・・」
バンヤード「なんだ? ビーンはホームシックかァ?」
ビーン「どうとでも言え」
エンペライス「二人とも。非常時によしたまえ それより不時着に備えよ」
「ハッ!!」
〇コックピット
不時着体制
5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・
不時着完了しました
エンペライス「・・・皆の者、無事か」
ミレット「へへ、なんともありませんぜ!」
ビーン「すごい揺れで少し具合が・・・」
バンヤード「地球育ちは宇宙船に慣れてねェからな!」
ウィート「とにかく、燃料が漏出したということは 少なくとも燃料が確保できるまで この星にとどまるということ」
ウィート「まずは外の様子を確認せねばならぬだろう」
エンペライス「ふむ、ならば行ってこい ザンドボッグズ四天王よ」
「ハッ!!」
〇湖畔
バンヤード「うわ危ねえ! あとちょっとで湖に落ちるとこだった じゃねーか!」
ビーン「バンヤードは本当に水が苦手だな」
バンヤード「なんだァビーン、さっきのし返しかァ!?」
ウィート「よさぬか二人とも こんなときに」
「うっ・・・でも・・・」
ミレット「二人とも腹が減ってるんじゃねぇのか? なんか食って元気出せよ!」
バンヤード「でも、ここに食べものなんてねェだろ」
ミレット「そうでもねェぞ! ほら、湖をよく見てみろよ!」
バンヤード「おおっ、魚がいる!」
ミレット「だろ? こいつを捕まえれば食える!!」
ミレット「ああっ!? 逃げられた!!」
バンヤード「ハァ!? 何やってんの!?」
ミレット「な!? そんなことを言うなら お前がやってみろよ!!」
バンヤード「ヤだよ、濡れるし!!」
ビーン「こういうときは、手づかみじゃなくて 釣りをするんじゃないか・・・?」
ウィート「ビーン、ツリとはなんだ?」
ビーン「釣りはな。こう、木の枝と蔦で 釣り竿を作って」
ビーン「糸の先に枝で作った針と エサになる虫をつけて」
ビーン「針を水に投げ込むと・・・」
ウィート「おお! 糸が引っ張られている!」
ビーン「そうしたら竿を引っ張れば──!」
バンヤード「魚が捕れた!」
ウィート「なるほど、これが釣り」
バンヤード「地球人はこうやって食料を捕ってたのか!」
ミレット「それじゃあいただきます!!」
ビーン「ちょっと待て!」
ミレット「なんだよ、心配しなくても 独り占めはしねェって!」
ビーン「いや、魚は焼いたほうが美味いぞ」
ミレット「そうなのか! じゃあ頼んだぞバンヤード」
バンヤード「ハァ!? 俺様の美しい炎でなんで魚なんか」
バンヤード「・・・と言いたいとこだけど、 腹が減ってはなんとやら、だよな・・・」
バンヤード「ほらよ、任せとけ」
ミレット「おお! 美味そうに焼けた!」
ウィート「バンヤードは料理上手だな」
バンヤード「まあな!」
ミレット「それじゃあ今度こそいただきます!」
ウィート「いやいや! エンペライス様へ献上するのが先だろう」
バンヤード「ウィートお前、真面目だなー」
〇コックピット
「エンペライス様、戻りました!」
エンペライス「ご苦労。外の様子はどうだった?」
ウィート「目立った外敵などはいない様子でした」
ウィート「当面の間拠点とするのに問題はないかと」
ミレット「へへっ、エンペライス様! それと食料を調達してきましたぜ!」
エンペライス「ふむ、なかなか美味しそうだな」
ウィート(ミレットは何もしてないのでは?)
エンペライス「美味しい! 皆の者も分け合って食べようではないか!」
「ハッ! エンペライス様!」
ビーン「してエンペライス様 これからいかがなさいますか」
エンペライス「しばらくはこの星で生きていくしかあるまい」
エンペライス「まずはこの星──サキュウでの生活を 安定させることを優先しよう」
バンヤード(『ちきゅう』をもじって『さきゅう』・・・ エンペライス様、ネーミングセンスだけは 美しくないな)
エンペライス「どうかしたかバンヤード」
バンヤード「いえ!なんでも!」
〇地球
こうして、帝国ザンドボッグズの
サキュウ開拓は幕を明けた
〇湖畔
ミレット「ふー、大漁大漁! 早起きしたかいがあったぜ!」
ビーン「おはようミレット お前が早起きとは珍しいな」
ミレット「おおビーン! 見ろよこの大量の魚!」
ミレット「これだけあればしばらく食料には 困らねえぜ!」
ビーン「いや、魚は保存が効かないからな」
ビーン「燃料がなくて宇宙船の冷蔵庫も動いてないし」
ミレット「げ、マジか!」
エンペライス「それは大変だな」
ミレット「エンペライス様! 宇宙船の外に出られるなど・・・」
エンペライス「なに、危険はないのだろう? 私もせっかくなら外の空気を吸いたいさ」
エンペライス「しかし、保存の効く食料がないのは もしものときに困るな」
ビーン「そうですね・・・」
おーい、ビーン
ビーン「ウィート もう起きていたのか」
ウィート「我の鼻でこんなものを見つけたのだが これは食えるのではないか?」
エンペライス「これは地球で食べられている芋のようだな」
エンペライス「保存食にもなるのではないか?」
ビーン「お待ち下さいエンペライス様」
ビーン「せっかくなのでこの芋を増やしましょう」
エンペライス「芋を増やす・・・そんなことができるのか?」
ビーン「おまかせください」
ビーン「まずは土を耕して水はけをよくして・・・」
ウィート「穴掘りなら我のほうが得意だ 助太刀しよう」
ビーン「ここに芋を植えます」
ウィート「なんと、せっかく掘った芋を!?」
ビーン「これで毎日水を与えれば しばらくの後にたくさんの芋が 収穫できるでしょう」
ウィート「なんと!摩訶不思議!」
バンヤード「はよーっす! なになに?何の話?」
ウィート「おお、バンヤード、丁度いい」
ウィート「ちょっとここの土に水をまいてくれぬか」
バンヤード「ハァ!? ケンカ売ってんのか!?」
エンペライス「バンヤードは本当に水が苦手だな・・・」
〇湖畔
それからしばらくして
ミレット「おお!? なんだこれは!?」
ビーン「どうした」
ミレット「芋を植えたところから珍しい草が生えたぞ!」
ビーン「それは芋の芽だな」
ミレット「メ?」
ビーン「それが育つと 土の中で芋が増える」
ミレット「じゃあもうすぐってことか! 毎日水やりしてよかったぜ!」
ウィート「二人とも、外にいたのか」
ビーン「ウィート!」
ミレット「エンペライス様とバンヤードは?」
ウィート「なんだか今日は雨の匂いがするのでな」
ウィート「二人には外に出ないように伝えた」
ミレット「雨ねえ?今は晴れてるけどなァ?」
ビーン「なんだか悪い予感がするな・・・」
少しして
〇空
ミレット「嵐になってきやがった! 早く宇宙船に戻ろうぜ!?」
ビーン「いや、このままだと芋が流されてしまう!」
ビーン「俺とミレットで木を集めて衝立を作ろう!」
ビーン「ウィートは雨を流す側溝を掘ってくれ!」
「わかった!」
〇コックピット
エンペライス「外が嵐だというのに 三人が戻って来ぬな・・・」
ミレット「エンペライス様!」
ミレット「何か布とか余ってませんか!?」
エンペライス「ミレット!どうした!?」
ミレット「芋が流されないように守るんです!」
エンペライス「ふむ、そういうことなら私も協力しよう」
ミレット「エンペライス様・・・!! ありがとうございます!!」
バンヤード「あっ・・・ミレット!!エンペライス様!!」
バンヤード「・・・」
バンヤード「俺様は雨が嫌いだし・・・ 美しい炎が弱っちまうし・・・」
バンヤード「──でも せっかくみんなで育てた芋が・・・」
バンヤード「エンペライス様も嵐と戦っているのに・・・」
バンヤード「あー!もう!こうなったら仕方ない!」
〇空
ビーン「くっ・・・やっぱり難しいな・・・」
エンペライス「ビーン!何か手伝えることはあるか!?」
ビーン「エンペライス様!?」
エンペライス「私とて芋は大事だからな」
ビーン「それではエンペライス様 衝立の材料を運んできてください」
ビーン「組み立てはこちらでやります」
エンペライス「わかった」
エンペライス「──ん?」
エンペライス「大きな枝がビーンの方に飛ばされて──!?」
でりゃァァッ!!
エンペライス「炎が枝を焼き払って──!」
バンヤード「チッ、雨じゃいつもの火力が出ないか 美しくないな」
「バンヤード!!」
バンヤード「俺様だってやる時はやるんだよ! 美しいだろう!」
バンヤード「邪魔者がまた飛んできたら 俺様が美しい炎で焼き払ってやるぜ!」
ビーン「・・・ありがとうバンヤード」
バンヤード「な!?ビーンが俺様にお礼とか言うな!」
エンペライス(この二人はケンカするほどなんとやら、 だな)
〇空
こうして・・・
ザンドボッグズは嵐から芋を守りきった
さらにそれからしばらくの後──
〇湖畔
ビーン「じゃあ、掘り返すぞ」
「ごくり・・・」
「ごくり・・・」
ビーン「よいしょ・・・っと」
ウィート「おお!たくさん出てくるぞ!!」
ミレット「おい、全部は掘り返すなよ?」
ミレット「いくつか埋めたままにしといて もっと増やそうじゃねェか!!」
エンペライス「フフフ、 食いしん坊のミレットらしくない ことを言うなぁ」
ミレット「エンペライス様!! そりゃないですぜ!!」
バンヤード「料理は俺様に任せときな!」
バンヤード「美しいマッシュポテトを作ってやるぜ!」
エンペライス「おやおや、バンヤードが自分から 料理を申し出るとは」
エンペライス「嵐の前触れかな?」
バンヤード「・・・エンペライス様 僭越ながら一言よろしいでしょうか」
ミレット「ああ、たぶんみんな同じ気持ちだ」
エンペライス「自分で言っておいてだが・・・ 私もたぶん同じだな」
〇地球
もう嵐はイヤだ────!!!!
こうして、芋の栽培に成功した
ザンドボッグズは
それからもサキュウを開拓して
住みよい環境を作っていくのだった──
──宇宙開拓帝国ザンドボッグズ──
星の名前が『サキュウ』だったので、砂しかない星だったライトヤバくね?と思ってドキドキしました(笑)
地球に似た星で良かった〜。
やっぱり先住民と関係が築けるかというリスクを考えると、大変だけど惑星開拓の方がいいよね、と納得しました
これは続きが、見たくなりますね。
魚釣りや農業もピンとこない怪人達がどのような暮らしをしていたのか想像力が刺激されます!
ほのぼのとしたストーリ―と「侵略」というワードとの対比が面白いと思いました。また、それぞれの怪人が魅力的で、炎は水が苦手、元地球人は釣りを教えるなど、設定と展開がうまく調和しているのもすばらしいです。