第1話 始まり(脚本)
〇本棚のある部屋
月澤朔也「(今月ちょっと金欠なんだよな・・・・・・)」
月澤朔也「(なんかいいバイトないかな・・・・・・)」
月澤朔也は、一人自宅で考えていた。
25歳、フリーター。
独身。
彼女もいない。
両親からは、何でもいいから正社員になれ、と言われているが、それは面倒くさい、と思っている。
就活をするのも、一つの会社に縛り付けられるのも面倒くさい。
――働かずに生きていけたら。
彼はいつもそう思っている。
月澤朔也「(あーあ、一生働かなくても暮らしていけるだけの大金が手に入らないかな・・・・・・)」
月澤朔也「(ん? なんだこれ?)」
【求人募集】
心理学的実験の被験者の募集。
実験後、ご自宅にお戻りになられる際には、最低でも2億円の給与を支払います。
月澤朔也「(2億円?!)」
SNSでその求人募集を見つけた時、朔也は心が躍るのを感じた。
2億円あれば、働かなくても生活していける。
これは、またとないチャンスだ――。
朔也は、すぐにその実験に応募した。
〇駅前ロータリー(駅名無し)
月澤朔也「(ちょっと早く着き過ぎちゃったかな)」
審査に合格し、実験への参加資格を得た朔也は、実験が行われる会場に向かうため、実験を行う会社から指定された駅にいる。
田中「月澤朔也さんですか?」
月澤朔也「はい、そうですけど・・・・・・」
田中「この度は、実験へのご参加、ありがとうございます。 私、今回の実験の運営を担当させていただく、田中と申します」
田中「念のため、最終確認なのですが・・・・・・。 月澤さんは、やっぱり実験への参加を中止したいと考えたりはされていませんか?」
月澤朔也「いえ、特には」
田中「よかったです。 それでは、よろしくお願いいたしますね」
月澤朔也「こちらこそ」
田中「では、さっそく会場までお送りしますね。 ・・・・・・失礼します」
月澤朔也「え、ちょっと・・・・・・! 田中さん?!」
月澤朔也「(なんで目隠しなんか・・・・・・)」
田中「すみません。 会場の場所は、企業秘密となっておりますので。 会場に到着するまで、そのままでお願いします」
月澤朔也「はい・・・・・・」
月澤朔也「(随分、厳重に秘密が守られてるんだな)」
朔也は、目隠しをされたまま車に乗せられた。
随分、長く走っていたと思う。
会場に到着した時には、朔也は自分がどこにいるのかさっぱりわからなくなっていた。
〇殺風景な部屋
田中「お疲れ様でした。 では、しばらくこちらで待機をお願いします」
田中「私は一旦、失礼します」
月澤朔也「はい・・・・・・」
月澤朔也「(随分殺風景な部屋だな)」
雲井青「あのー、この実験に参加される方ですか?」
月澤朔也「はい。 そうですけど」
雲井青「よかったぁ。 他に誰も来てないから、私一人なのかと思いました。 私、雲井青って言います。 大学二年生です」
月澤朔也「月澤朔也です。 よろしくね」
月澤朔也「(この子、めっちゃ可愛いじゃん・・・・・・! これだけでも来た甲斐があったぜ)」
雲井青「実験って言っても何をやるのかよくわからないし、ここに来るまでに目隠しをされたりして、私、ちょっと怖かったんです」
雲井青「でも、月澤さんが来てくれて安心しました。 月澤さん、優しそうだから」
月澤朔也「俺でよければ、いくらでも頼ってよ」
雲井青「ありがとうございます。 すごく心強いです!」
柿沼豪「ちーす」
山上栄「あなたたちも実験の参加者ですかね?」
雲井青「はい!」
月澤朔也「そうですけど」
月澤朔也「(なんだよ・・・・・・。せっかく雲井さんと二人きりだったっていうのに)」
柿沼豪「俺、柿沼豪って言うっす。 美容師やってるっす!」
山上栄「僕は山上栄です。 会社員です」
雲井青「雲井青です。 柿沼さん、山上さん、よろしくお願いします!」
月澤朔也「月澤朔也。 ・・・・・・よろしくお願いします」
柿沼豪「青ちゃんさぁ、めっちゃ可愛いけど、彼氏いるの?」
雲井青「いませんよ」
柿沼豪「え、じゃあさ、俺が彼氏に立候補してもいい?」
雲井青「ダメです」
柿沼豪「そんなぁ」
月澤朔也「(ざまあ)」
雲井青「・・・・・・参加者って、これで全員なんですかね?」
山上栄「いや・・・・・・あと一人、いるはずだよ。 田中さんが、最後の参加者を迎えに行ってくるって言ってたから」
田中「お待たせしました。 これで、参加者が全員そろいました」
夕波音「・・・・・・夕波音」
月澤朔也「(今度はめっちゃ綺麗な子が来たじゃん・・・・・・!)」
田中「・・・・・・さて。 これで参加者もそろいましたし、今回の実験の説明に移らせていただきます」
雲井青「いよいよですね!」
月澤朔也「うん!」
田中「今日から皆様には、とある施設でゲームをしていただきます」
田中「施設内には鍵が5つ隠されています。 施設の外に通じる扉は、5つの鍵全てがそろわないと開きません」
田中「皆様には、鍵を全て見つけ、施設の外へ出ていただきたいのです」
田中「皆様が鍵を見つけ、扉を開き、外に出られる状態の方全員が外に出た時、実験は終了になります」
田中「我々が用意させていただいている報酬の総額は10億円。 それを、外に出て来られた方々に、等しく分配させていただきます」
月澤朔也「(10億・・・・・・すげえな。俺たちは5人だから・・・・・・それで2億なのか)」
田中「また、施設内で起こったことは、全て我々が責任を持ちます。 どんなことであっても、です」
田中「施設内で何をされようと、実験後に皆様に不利益が被ることは絶対にございません」
田中「ですから、皆様にはどうか、欲望の赴くままに行動していただきたいのです」
月澤朔也「(変わった実験だな・・・・・・。募集要項には、心理学的実験って書いてあったけど、結局どんな実験なんだろう)」
すると、突然何人かのスーツを着た人間が大きな箱を抱えて部屋に入ってきた。
箱の中からは、ガチャガチャという金属音が鳴っている。
田中「これから、皆様に我々からの差し入れをお配りさせていただきます。 これを実験中にどう使うかは、皆様の自由です」
月澤朔也「(何だよ、これ!)」
目の前に置かれたものを見て、朔也は思った。
目の前にあるそれは――日本刀は、照明に照らされ、不気味に輝いている。
――これを実験中にどう使うかは、皆様の自由です
田中のその言葉が、朔也の頭の中を駆け巡った。
協力して脱出…が一番いい気がするんですが、用意されたものを見ると、そう呑気なものでもなさそうですね。
大金が用意されている分、とんでもないことが起きそうです。
協力して脱出?それとも殺し合うの?先の展開が読めずドキドキしてます!
もし友達や家族がこの実験に応募したいといったら絶対に反対します。でも第三者目線からは、この5人にどんな災難が降りかかっていくのかワクワクする悪い自分がいます!