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きせき

エピソード10-混色の刻-(脚本)

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〇大きな日本家屋
  明石家の邸宅の1つ、通称・胡蝶庵。
  確か、『明石家の邸宅について』の資料を読んでいたら
  その名前が出てきた。
黒野すみれ「春刻が当主になる前まで暮らしていた家」
  ちなみに、秋川さんが亡くなった日は一時的に
  本邸にいたらしいが、まだ完全に移り住んでいた
  という訳ではなく、この胡蝶庵にも戻る予定だった
  らしい。
黒野すみれ「(確か、当主就任? いや、継承の儀だったっけ?)」
黒野すみれ「(とにかく、春刻はまたここへ戻ってくるつもりだったし、その時は・・・・・・)」

〇大きな日本家屋
  彼は命を落としていたのかも知れない。

〇大きな日本家屋

〇大きな日本家屋
黒野すみれ「・・・・・・」
  私は秋川さんが倒れていたという庭に
  行ってみることにした。

〇黒
黒野すみれ「(結構、山の中にある庭なんだ・・・・・・)」
  より正確に言えば、山に囲まれた庭。
  私は胡蝶庵の見取り図をスマートフォンで
  撮っていたのを見ながら、庭に向かって歩いていく。

〇大きな日本家屋
  明石家の胡蝶庵。

〇宮殿の門
  明石家の本邸が中央に位置しているのだが、

〇大きな日本家屋
  この胡蝶庵は明石家の敷地でも特に南西の隅の方に
  位置していた。

〇黒
黒野すみれ「(ちなみに・・・・・・)」

〇レンガ造りの家
  明石朝刻の邸宅は本邸から見ると、北西の隅にある。

〇大きい研究施設
  明石東刻の邸宅は本邸から見ると、北東の隅にあったが、
  潰して、本邸から見て、東に位置する会社の第2施設を
  兼ねた住居に改装したという。

〇華やかな広場
  そして、明石青刻の邸宅は本邸から見ると、
  南東の隅にあるらしいのだが、
  住居らしい住居は存在しないという。

〇黒
黒野すみれ「(何だか、家って性格、出るのかな?)」
  まぁ、一般の家庭なら家ではなく、部屋なのだろうが、

〇レンガ造りの家
  爽やかな高原にあるホテルのような住居。

〇大きい研究施設
  公私問わず、仕事に明け暮れる仕事人間の為の住居。

〇華やかな広場
  そして、会に姿を見せなかった主人同様に姿なき住居。

〇黒
黒野すみれ「(まぁ、もう深く考えるのはやめよう)」
  それよりも、今は考えなければいけないことがある。

〇新緑

〇風流な庭園
黒野すみれ「ここが秋川さんのいた庭?」
  山を背景に、池のある日本風の庭園が姿を表す。
黒野すみれ「・・・・・・」
  何だか、とても懐かしい感じがする。と思った。
黒野すみれ「(いや、多分、VTRみたいなもので実際見たような気になっているのだろう)」

〇土手

〇風流な庭園
  私は庭を徹底的に調べることにした。だが・・・・・・
黒野すみれ「(まぁ、もう警察が調べてる後じゃ何もないか・・・・・・)」
  そもそも、フィクションでない限り、警察にも
  見落とされた証拠などそうそうないだろう。
  毒物を塗った針のようなものも、それを仕掛けた痕跡も
  当然、見つからない。
黒野すみれ「(仕方ない。家の中にも行ってみよう)」
  だが、それは叶わなかった・・・・・・。

〇風流な庭園
  突然、朦朧とする意識。

〇黒
  視界も思考も感覚も奪われていく。

〇古民家の蔵
黒野すみれ「うぅ・・・・・・」
  私が再び目を開くと、そこはもう庭ではなく、
  どこかの建物の中だった。
黒野すみれ「(蔵とかなのかな?)」
  私は見取り図で確認しようとすると、スマートフォンが
  なくなっている。それどころか、手足も縛られていた。
黒野すみれ「(かなりまずい状態かも、これ・・・・・・)」
  誰に連れてこられたかまでは分からないが、
  絶対良くない結末が来ることが分かる。

〇古民家の蔵
黒野すみれ「煙・・・・・・!!」

〇古民家の蔵
  何が焦げる匂いがしたかと思うと、辺りが煙で包まれる。
  そして、最悪の中の最悪な状態になるまで
  時間はかからなかった。

〇古民家の蔵

〇古民家の蔵

〇古民家の蔵

〇黒
  火。明石家の火を思い出す。

〇魔法陣2

〇魔法陣2

〇シックなリビング
明石春刻「おかえりなさい」
黒野すみれ「は、春刻・・・・・・?」
  私はつい春刻を春刻と呼んでしまったが、
  明石だと該当者が3人もいる。それに、先代の
  明石刻世も明石姓だし、おそらく彼らの父もそうだろう。
黒野すみれ「(そう言えば、春刻のお父さんっていないのかな?)」
  私にも母はいない。別に、そのことを聞かれても
  何とも思わないが、過ごした時間が違うのなら
  少しでも現在とは違う関係性が築かれたのなら
  簡単に触れて欲しくないと思うのかも知れない。
明石春刻「お疲れ様。庭まで辿り着けたけど、庭には何もなかったみたいだね」
黒野すみれ「あ、うん。何もなかったと思う」
明石春刻「でも、確かに彼は命を落とした」
  春刻のいつもと変わらない表情に、声色。
  いや、昨日今日、再会したばかりの殆ど初対面の知人。
  彼のいつもの〜なんて知らないが、彼が怒っている。
  それは隠し切れないほど伝わってきた。
明石春刻「頭の中ではやっぱり許せないって思っているよ」
明石春刻「彼を殺した人間を過去に閉じ込めて、蝋燭を折ってやりたい」
明石春刻「そう・・・・・・思うよ」
  分かりやすく抑揚がつけられている訳ではないが、
  明石家の当主として怒りを抑えつつも、
  明石家の力をもって罰しようとしている。

〇魔法陣2
  もしかしたら、自分の命の為ではなく、
  秋川さんを殺した犯人をこの世から抹殺する為に。

〇シックなリビング
黒野すみれ「そう言えば、今は火が消えてるけど、やっぱり、もう1度、この蝋燭に火をつけたら?」
明石春刻「うん、凄い火だったし、君は身動きが取れなかったし、間違いなく死ぬかな」
黒野すみれ「(そんな笑顔で言うな!!)」
明石春刻「だから、この蝋燭は2度とは使えない」

〇血しぶき
  ーーーーーカラカラ。

〇シックなリビング
黒野すみれ「(うわぁ、1本5000万の蝋燭、折っちゃったよ。この人)」
  これもあのマリさんのくれた資料のどこかに
  書かれていたことだが、
  この蝋燭は1本で5000万以上の価値があるらしい。
  中には1億近い値段を提示していた当主もいたらしく、
  読んでいると異世界だとつくづく思った。
黒野すみれ「(しかも、明石家の当主ってあまり長生きした人がいないんだよね)」
  何でも近親婚を繰り返していた時代もあるらしく、
  刻世さんの何代か前までは40を超えず、亡くなる人も
  少なかったと記述されていたような気がする。
黒野すみれ「(蝋燭が10本売れれば、5億。しかも、40歳くらいでこの世を去る)」
黒野すみれ「(一生、生活には困らない)」
  私は目の前の春刻を見ると、複雑な思いがした。
黒野すみれ「(そりゃ、人間、いつかは死ぬかも知れないけど・・・・・・)」

〇宮殿の門
  50歳にならず死去した刻世さんも

〇宇宙空間
  秋川さんも

〇シックな玄関
  私の父さんや

〇水中
  私の母さんだって

〇水中
  もっと生きたかった筈だし、

〇黒
  もっと生きたいと思ってたのではないかと思う。

〇魔法陣2
  そして、それは彼も・・・・・・。

〇シックなリビング
黒野すみれ「(って、そうならない為に、過去にまで行ってるんだろ。私は)」
  明日、明後日には私だってどうなるか分からない。
  でも、どうにかなるのならどうにかしたいのだ。
明石春刻「じゃあ、そろそろ仕切り直してTake.2。君はまた4日前の昼頃に戻る」
明石春刻「あ、でも、今度の媒介はこれでは無理かな?」
黒野すみれ「うん、確か、媒介にするのはものの記憶だからこれを使うと」
黒野すみれ「私はまた明石家に行くところからスタートするってことか」

〇女性の部屋
明石春刻「そう、これが4日前の昼にあったのは君の家になるだろうし、」

〇城の会議室
明石春刻「幾ら蝋燭を折ったことで明石家の食事会に参加したことが確定されていても、」

〇屋敷の門
明石春刻「家を出た時点で兄達に警戒されるし、時間もロスする」

〇貴族の応接間
明石春刻「無理なく本邸のあの時間に戻るにはあの時点で屋敷内にあったものを」
明石春刻「媒介にするしかないけど、幸いなことに僕はあるものをこの場に送ることに成功した」

〇シックなリビング
黒野すみれ「あるものって?」
明石春刻「それはこれだよ。これが僕の手元になかったら詰んでいたかも知れない」
  それはまさしく見たことのあるような、
  ないようなものだった。

〇黒

〇シックなリビング
黒野すみれ「これは・・・・・・あの指輪?」
明石春刻「うん、まぁ、人生って何が幸いするか分からないよね」
  どうして、彼がこの指輪を持っているのか。
  それは分からないが、1つだけ確かなのは私は
  その指輪を受け取らなかったのだ。

〇畳敷きの大広間
「こんな使い古しのボールの代わりに指輪なんてもらえないし!!」
「あ、もうすぐ父さんと約束した時間だ。じゃあね」
「あ・・・・・・」

〇新緑
明石春刻(小学生)「行っちゃった・・・・・・まだ名前、言ってなかったのに」
明石春刻(小学生)「名前だって聞いてなかった・・・・・・のに」
  春刻がボールを見ると、油性ペンで書かれたと思われる、
  消えかけの文字がある。
明石春刻(小学生)「くろのす、ゐわ・・・・・・?」
明石春刻(小学生)「(時の神様と同じ名前・・・・・・)」

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