第3話 以龍の剣(脚本)
〇鍛冶屋
──ギルテの街、武器屋。
以龍 渚(なんなんだ、この状況は?)
まったくもってその通りである。
以龍とイリアは先ほど出会ったばかり。
それが今、武器を奢ってもらうために武器屋まで足を運んでいるとは。
イリア「渚さん、渚さん。 アナタの得意な武器ってなんなんですか?」
以龍 渚「得意な武器って言われてもなぁ・・・」
以龍 渚(覚えているわけがないだろ?)
イリア「──じゃあ、ひとつずつ見立ててみましょうか?」
以龍 渚「はぁ。 もう、好きにしてくれ」
イリアは売り場から一振りの剣を持ってくる。
イリア「じゃあ、まずはこの剣ですね」
以龍はイリアから剣を受け取ると、その剣を振ってみる。
以龍 渚「──軽すぎるな」
以龍は剣を売り場へと戻した。
以龍 渚「? どうした? 次の剣はいいのか?」
イリア「あ、すみません。 あまりにもすごい剣さばきだったので──」
イリアが次の剣を取りに行こうとした時、二人のやりとりを見ていた店主が話しかけてきた。
「兄ちゃん、いい腕をしてるねぇ。 ──こいつを試してみな?」
以龍 渚「──この剣は?」
「バスタードソードだ。 両手でも片手でも扱える大剣だ。 ・・・もっとも、こいつを片手で振るには相当な腕が必要になるがな」
以龍がバスタードソードを振った。
──動いた以龍の腕は右腕のみ。
以龍 渚「いい重さだ。 この剣なら使いやすいかもな」
以龍が剣を置くと、イリアはすぐさまにバスタードソードの値札を確認した。
そして、またしても財布と相談。
以龍 渚「お、おい。 無理そうならやめとけっ」
イリア「いえ、大丈夫です。 ──じゃあ、この剣をもらえますか?」
代金を支払い、バスタードソードを以龍に渡す。
バスタードソードを受け取ると、以龍は背中に剣を固定した。
イリア「──これで宿代がなくなっちゃったかな? はやく依頼を受けないと・・・」
誰にも聞こえないような声で呟いたのだが、その呟きは以龍に聞こえていた。
以龍 渚(この娘はなんで俺にここまで──)
〇西洋の街並み
イリア「じゃあ、私はこれで失礼します。 ──道中、気を付けてくださいね」
イリアはアドベントギルドの方へと去っていった。
以龍 渚(・・・ここまでしてもらって、彼女を放っておくわけにはいかないだろ?)
以龍はイリアに悟られぬよう、距離を置いてイリアの後をつけていった。