仕組まれたイノチ

山川弾正

エピソード1(脚本)

仕組まれたイノチ

山川弾正

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〇教室
  キーンコーンカーンコーン
  午後3時。
  今日の授業が終わった。

〇教室
菅原 樹「吉田、冴子から連絡あった?」
吉田 翔「いや、まだないな・・・」
菅原 樹「そうか・・・。 俺の方にも連絡ないし、 どうしたのかな? あいつが無断欠席なんて珍しいよな」
吉田 翔「昨日は元気だったんだがな・・・」
菅原 樹「だが、最近、ちょっと悩んでいるようなところはあったよな・・・」
吉田 翔「そうだったかな・・・」
吉田 翔「さすが幼馴染だけあって、詳しいな!」
菅原 樹「ば~か、そんなんじゃないよ」
吉田 翔「どうする・・・? 帰りにあいつの家、寄ってくか? 俺は部活が終わってからになるが」
菅原 樹「俺は、今日部活ないから・・・。 一人で行ってみるよ」
吉田 翔「そっか。 まぁ、お前ひとりの方が喜ぶかもな!」
菅原 樹「だから、 そんなんじゃないって。 ただの幼馴染さ」
吉田 翔「向こうは気があると思うぞ!」
菅原 樹「どうかな・・・」
吉田 翔「おまえ、にぶいな・・・」
菅原 樹「そうか・・・?」
吉田 翔「保証するよ! さっさと行ってやれ!」
菅原 樹「うるさいな・・・。 まあ、行ってくるよ」

〇ゆるやかな坂道
  冴子とは、家が近所で幼馴染だ。
  俺の両親も彼女の両親も、同じ帝国製薬という会社に勤めていて、仲がいいようだ。
  といっても、
  俺の住むこの島の人口は1万ほどで、
  島に大きな研究所を保有する
  帝国製薬がらみの人は非常に多い。
  だから、この島の住人は、皆それなりに親しい。
  近所だからといっても、それほど特別でもないのだ。
  それでも、最近は、よく冴子から連絡が来て、一緒に遊ぶことも多かった。
  吉田は冴子が俺に気があると思ってるようだが、それはどうなんだろう。

〇綺麗な一戸建て
  そうこう考えているうちに、冴子の家についた。
  いつも目にしている、見慣れた家だ。
  ピンポーン。
  チャイムを押す。
  ・・・・・・。
  ・・・・・・。
  応答はない。
菅原 樹「あれ? どういうことだ? 誰もいないのか?」
  俺はそっとドアに手をかけた。
  かぎはかかってなかった。
  少し躊躇しながら、ドアを開けてみた。

〇シックな玄関
  ガチャっという音を立てながら、ドアは開いた。
菅原 樹「誰か・・・? 誰か、いませんか?」
  返事はない。
  家の中は静まり返っている。
  そーっと、家の中の様子を窺ってみるが、あまり人の気配は感じられなかった。
  俺は靴を脱ぎ、家の中へと上がった。
  そこは何度かこの家にあがった気安さがあった。
  それでも慎重に廊下を進み、リビングのドアを開けた。

〇明るいリビング
  リビングは、いつものリビングではなかった。
  大量の赤い液体、
  血だ。
  大量の血が飛び散っている。
菅原 樹「こ、これは!」
  俺は、しばし呆然とした。
  立ち眩みのような症状が襲い、倒れはしなかったものの、壁に体をゆだねた。
  30秒ほどたっただろうか。
  俺はようやく少し落ち着いて、血の続いている方に目を向けた。
菅原 樹「・・・・・・」

〇部屋の前
  血痕は廊下に続き、

〇白いバスルーム
  風呂場にたどり着いた。
菅原 樹「う、うわぁ・・・」
  そこにはよく知った人の遺体が折り重なるように倒れていた。
  冴子の両親だった。
菅原 樹「な、なにがあったんだ・・・!」
  あまりの光景に、俺は思わず目を覆った。
  10秒ほどそうしているうちに、少し心が落ち着いた。
  俺は、もう一度恐る恐る冴子の両親を見た。
  ひょっとしたらマネキンではないか、そんな期待を込めて。
  そして、遺体に手を触れてみた。
  マネキンではない。
  明らかに、最近まで生きていた人の体だと感じた。
菅原 樹「・・・・・・。 そうだ!冴子は!?」
  俺は恐怖を払いのけ、急いで風呂場を後にした。

〇部屋の前
  俺は急いで風呂場を飛び出すと、

〇一階の廊下
  階段を駆け抜け、冴子の部屋のドアを開けた。

〇女性の部屋
  ここは血の跡がない。
菅原 樹「冴子! 冴子!」
高橋 冴子「いつき・・・」
  部屋の陰から、恐る恐る冴子が出てきた。
菅原 樹「さ、冴子! 無事だったのか!」
高橋 冴子「・・・・・・」
菅原 樹「どうしたんだ・・・。 なにがあった・・・? おじさんと、おばさんが・・・」
高橋 冴子「・・・・・・」
菅原 樹「冴子・・・? どうしたんだよ? 強盗か・・・?」
高橋 冴子「・・・・・・」
  冴子は無言のまま、小さくかぶりを振った。
菅原 樹「ちがうのか・・・? じゃあ、なにが・・・」
高橋 冴子「わたし・・・ わたしが・・・」
菅原 樹「・・・・・・」
高橋 冴子「わたしが・・・ やったの・・・」
菅原 樹「え・・・? な、なにをいってるんだ・・・?」
  俺は、ゆっくりと冴子の肩に手をかけた。
菅原 樹「錯乱してるのか・・・? 少し横になるか・・・?」
高橋 冴子「ううん・・・。 大丈夫・・・」
菅原 樹「そうか・・・」
高橋 冴子「わたしが、殺したの・・・。 あのひとたちを・・・」
菅原 樹「さ、冴子・・・。 なんでだよ・・・。 そんなことあるかよ・・・。 そんなに、仲悪くなかったろ・・・」
  その時だった。
  ピンポーン!
  家のチャイムが鳴った。
  俺は、そっと窓から外の様子を窺った。
  家の前には、白いバンが止まっていた。
  車には帝国製薬のロゴが入っている。
  俺や冴子の両親が勤めている会社だ。
菅原 樹「おじさんたちを心配して、会社の人が来たのかな・・・」
高橋 冴子「・・・・・・」
菅原 樹「冴子・・・。 どうする・・・? 俺が対応してこようか・・・?」
  俺は、そうは言ったものの、
  どうしていいかわからなかった。
高橋 冴子「・・・・・・」
  冴子は小さくかぶりを振った。
菅原 樹「冴子・・・」
  どうしたらいいのか・・・?
  そもそも、本当に、冴子が殺したのだろうか・・・?
  そんな、はずはない・・・。
  俺は考えがまとまらず、ただうなだれた。
  冴子も黙ったままだ。
  ピンポーン!
  再びチャイムが鳴る。
菅原 樹「冴子・・・。 なにが、あったんだ・・・?」
高橋 冴子「わたし・・・、 わたし、ころされる・・・」
菅原 樹「え・・・?」
  どういうことなのか・・・?
  俺はますます混乱した。
  その時、階下で物音がした。
  俺は、部屋から少し顔を出して、1階の様子を窺った。
菅原 樹「どうやら、会社の人が入ってきたようだ・・・」
菅原 樹「冴子・・・。 あの人達に事情を話そうか・・・?」
高橋 冴子「・・・・・・」
  冴子は、涙を流しながら力なくかぶりを振った。
高橋 冴子「ころされる・・・」
菅原 樹「さえこ・・・」
  俺はどうしていいかわからず、途方に暮れた。
菅原 樹「さえこ・・・」
  階段からは、人が登ってくる足音が聞こえた。

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コメント

  • 両親の勤め先からの車がこんなにタイミングよくやってきたのは、その裏にものすごい陰謀が隠れている予感がしました。事件に子どもたちが巻き込まれてしまうのは切ないな。続きがきになります。

  • 凄惨な殺人事件と、無事だった彼女。
    なんだか謎が深まっていきますね。
    しかも彼女は「自分がやった」と言ってるわけですし…本当に何が起こったんでしょう。

  • 状況が全く飲み込めませんが、間違いなく両親の勤務先の人たちは関係ある…。あると思う…。
    あとは何故さえこが殺したと言っているのか…謎が深まる…。

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