第1話 出会い(脚本)
〇空
空が見える。
青い空を白い雲が風に乗って流れていく。
青年の歳は二十歳くらいだろうか。
その青年は崖の手前で寝そべって空を眺めていた。
〇木の上
「・・・大丈夫、ですか?」
突如、見知らぬ少女が彼の顔を覗き込んできた。
「大丈夫? ──なにが?」
彼には何故少女が自分に向かって「大丈夫?」かと聞いてくる意味が分からなかった。
「あ、すみません。 てっきり倒れていたのかと──」
〇山の中
周りを見渡して少女の言葉を理解する。
ここは山の中腹か?
・・・とにかく、人がのんびりと眠っていられる場所ではないようだ。
彼は上体を起こし、少女の姿を確認する。
彼女の歳は17~18くらいの見える。
背負っている、十字の形をした背丈ほどの大きさの杖が印象に残る。
「で、アンタは?」
初対面の少女。
彼のこの問いは当然だろう。
「あ、名乗りも上げずに失礼でしたね? ──私は「イリア」と申します」
「気晴らしに街道を離れてここまで登ってきたのですが、まさかこんな場所に人がいるとは思ってもいなくて・・・」
どうやらここは、この山の頂上に近い場所のようだ。
「なぁ、アンタ──」
この時、彼女には次に彼が言い放つ言葉を予測することは出来なかった。
──いや、誰にも予想は出来なかっただろう。
何故なら、彼にそのようなそぶりは見えなかったのだから。
〇山並み
「──俺について、なにか知っていることはないか?」
「は、い? ・・・えーと、それはどういう意味ですか?」
「わからないんだよ。 なんで俺はこんな場所で空なんか見上げていたのか」
「──さらに言えば、俺自身が何者なのかさえもな」
「そ、それってまさか──」
「だろうな。 うん、記憶喪失ってやつみたいだ」
〇山の中
「き、記憶喪失って・・・ どうしてアナタはそんな冷静でいられるんですか?」
「な、なにか手掛かりになるものとかは? 手荷物とか、今の服装とか──」
彼の言葉に明らかに動揺を見せるイリア。
・・・本来動揺すべきは彼の方なのに。
「なんでアンタが動揺するんだ?」
「手掛かりか・・・」
〇魔法陣
「ま、あるとしたら、この手の甲にある何かの紋章みたいなヤツくらいだな?」
彼の左手の甲には、何かの紋章らしき刻印があった。
「! それは──「アドベントの刻印」!?」
〇山の中
「これが何か知っているのか?」
「はい。 それは「アドベント」としてギルドに登録しているものが持つ刻印なんです」
〇魔法陣
「──私もアドベントなんです」
そういって見せたイリアの左手の甲にも彼と同じ刻印があった。
〇山の中
「そのアドベントってのはなんなんだ?」
「うーん。 わかりやすく言えば「何でも屋」みたいなモノでしょうか?」
「街にあるギルドで仕事の依頼を受けて、それをこなして報酬を受け取る仕事なんですよ」
「──でも、よかった」
「よかった? ──なにが?」
「その刻印があるなら、街のギルドに行けば 身元の照会ができます」
「ちょうど私もここの麓にある「ギルテ」って街のギルドに行くところだったんですよ」
「──一緒にギルドに行きませんか?」
彼は少し考えて、イリアに返答する。
「別にいますぐにいかなくてもいいよ。 ──ようはそのギルドって場所に行けば何かがわかるんだろ?」
「だったら適当にそのギルドってとこに行ってみるさ」
〇山道
「ダメですっ!! ──今から行きましょう」
彼の手を取り、座り込んでいた状態の彼を立ち上がらせる。
「おいおい──」
「放っておけるわけがないじゃないですか。 こんな状態のアナタを」
「さぁ、行きましょう。 麓のギルドへ」
こうして、少々強引にイリアに連れられ、彼はこの山の麓にあるというギルテの街のアドベントギルドへむかうのであった。
記憶を失ってしまえば、大抵の人は混乱すると思うんですが、彼の落ち着きの秘密はなんなんでしょうね。
ギルドに行って身元がわかればいいんですが。
記憶喪失というテーマは色々な事を妄想させてくれますが、登場人物2人共なにかくせのありそうな感じがして、この後の展開が待ち遠しいです。
姿が見えない、そして素性もわからない、だからこそ続きがとても気になりました!
記憶がない…ということはこの人がどんな経歴があって、どんな能力があるのだろう…色々予想してしまいます笑