彼が姫プで私が騎士で

雛田

彼が姫プで私が騎士で(脚本)

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雛田

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〇小さい会議室
姫川 湊「今日はなんで呼ばれたかわかるか?」
岸田 彩音「はい」
  岸田彩音、25歳会社員。
  人生史上最大のピンチを迎えているかもしれない。
  100%私が悪いんですけどね。
岸田 彩音「先週の金曜日のこと、ですよね」
姫川 湊「ああ」
姫川 湊「お前、なんで会社のパソコンでバトロワゲーしてたんだ?」
岸田 彩音「うっ!」
  ことの発端は先週の金曜日──

〇オフィスのフロア
岸田 彩音「あんのクソアマがよぉ! 仕事押し付けてあいつ先に帰りやがってええ!!」
  後輩の社員が「彼ピとデートなんで♡」と言い、大量の残務を私にぶん投げて定時退社した週末。
  デートなのは別にいい。でも何か私に言うことがあるだろう、「すみません、これお願いしていいですか?」の一言でもあれば。
  仕事を終える頃には終電などなかった。なんで来週の月曜までに済ませないといけない仕事ばかりなの!?
  会社に泊まりが確定した私はを思ったか。
岸田 彩音「へへっ」
  会社のパソコンに流行りのバトロワゲーをインストールした。
  業務用パソコンで動くわけないのに、ちょっとした出来心で。
岸田 彩音「お、タイトル画面まではいくんだな」
  タイトル画面に大きく映し出される、少しカクつく「Battle Royal Legend」のロゴ。
  暗い社内でこの文字を見る非日常感。
  悪いことをしているのはわかる、バレたら大変なことになるがバレることは──
  ガタン
岸田 彩音「え」
  そんな音がだれもいないはずの社内で響きわたり・・・
姫川 湊「何、してるんだ岸田・・・」
岸田 彩音「あっ」
  営業部のエースで同期の姫川に、バッチリ画面を見られてしまったのである。
  てか、こいつも終電逃したのか。
  あれ?もしかして弊社ってばブラック?

〇小さい会議室
岸田 彩音「後輩に理不尽な量の業務を押し付けられ、ついカッとなって出来心で・・・」
姫川 湊「普通じゃない・・・」
岸田 彩音「はい、あのときの私は普通じゃなかったと思います」
  どうか同情してくれないか、「しょうがないね」みたいな流れになってほしい。
姫川 湊「会社のパソコンに業務上で必要のないソフトを入れるのは規則に反してるよな、岸田」
岸田 彩音「ごもっともです」
姫川 湊「僕はこれを上司へ報告する義務がある」
岸田 彩音「はい・・・」
  総務のおじさんならまだワンチャンあったかもしれないが、相手がこの姫川だ。
  姫川 湊。
  甘いフェイスで契約をもぎ取る営業部のエース。
  女性社員からの人気も高い。
姫川 湊「なんでまあ、ゲームを・・・」
岸田 彩音「ストレス発散に」
姫川 湊「使用キャラは?」
岸田 彩音「え? アバドンファイヤーですけど」
姫川 湊「なるほど、岸田、お前相当やり込んでるな」
岸田 彩音「あ!!」
姫川 湊「「Battle Royal Legend」でのアバドンファイヤーを使えるやつはβテスト参加者のみ」
  こいつ、私を試しやがった!
  確かにアバドンファイヤーは現在入手不可な謎キャラクター!
  強くはないのだが。
姫川 湊「確信犯だな」
岸田 彩音「違うんです! 遊ぶつもりはなくて、起動しただけで!」
姫川 湊「そんな言い訳があるか!」
岸田 彩音「お願いします、二度とやらないので今回は見なかったことにしてくれませんか!!」
姫川 湊「俺にメリットがないだろ!」
岸田 彩音「何でもするので!!」
姫川 湊「・・・ほう」
  つい売り言葉に買い言葉で言ってしまったが、気づいた頃にはもう遅い。姫川は不敵な笑みを浮かべていた。
岸田 彩音「じょじょじょ常識的な範囲で、ね?」
姫川 湊「同期の岸田がそこまで言うのであれば黙っててやろう」
姫川 湊「──条件付きでな」
姫川 湊「家にゲーミングパソコンはあるだろう?」
岸田 彩音「え、はい、ありますが・・・」
姫川 湊「MMORPG「ドラゴンファンタジア」をインストールして俺に連絡をよこせ」
岸田 彩音「は?」
  MMORPGとは大規模多人数同時参加型オンラインRPGのことである。
  つまり同じゲーム内で不特定多数の人間が遊ぶオンラインゲームだ。
  そんなMMORPGの一つ「ドラゴンファンタジア」
  サービス開始から10年以上経つが、未だ人気の衰えない国内外で大人気の剣と魔法のファンタジー冒険RPGだ!
岸田 彩音「本当にそれで黙っててくれるんですか」
姫川 湊「ああ」
  深夜の会社でゲームをしていたなんてことが吹聴されれば社会的な死は免れない。
  ゲームのインストールで避けられるならば万々歳だが。しかし、どういう風の吹き回しですか姫川神。
岸田 彩音「あの、なんか裏があるのでは? 招待コードくらいなら全然いいですけど」
姫川 湊「インストール後は俺の指示どおりにゲームをプレイしろ」
  詳細はインストール後に話すパターンか
岸田 彩音「ところで」
姫川 湊「ん」
岸田 彩音「姫川さんって、素だと「俺」って言うんですね」
姫川 湊「ゲームしてたことバラすぞ?」
岸田 彩音「うっ!!」
  そしてプリンス姫川は結構──ブラックな野郎なのかもしれない。

〇本棚のある部屋
  どうにか定時で帰れた・・・
  ひとまず、姫川に言われたようにドラゴンファンタジアをパソコンにインストールする。
  姫川は新卒採用で入社した同期の関係だ。
  入社当時に連絡先を交換している。
岸田 彩音「姫川、あった」
  岸田>インストールしてます
  送信っと
  早速既読表示が付いた。
  姫川>遅い
  キレるなよ岸田彩音。相手は私の生殺与奪を握っている。どうにか姫川の弱みを握ってからキレろ。
  岸田>インストール完了しました
  姫川>よし、性別は男でクラスは騎士で始めろ
  このゲームの最強職は暗殺者なんだけどなぁ。まあ姫川サマが騎士でやれというのだ。拒否権はない。
  岸田>はい。キャラクター作成しましたのでログインします
  画面に映し出された、長身痩躯の騎士キャラクター。頭の上には「サイオン」と名前が書かれている。
  これがドラゴンファンタジアにおける私の分身であるプレイヤーキャラクターで主人公。
  キラキラと光る「ログイン」の四文字にマウスカーソルをあわせ──
  私は7年ぶりにこの世界に踏み出した。

〇教会の中
  サイオン、我ながらイケメンだ。
  岸田>インしました。サイオンというキャラです。IDはLX28799ですね。
  ゲームの傍らでスマホからメッセージを飛ばす。
  姫川>おk
  それにしてもココは変わらないらしい。懐かしいなぁ。
  <SYSTEM>マリンたそ さんからフレンド申請がありました!
  ん? フレンドの申請、マリンたそ?
  よくわからないから拒否しよ
  <SYSTEM>マリンたそ さんからのフレンド申請を拒否しました。
マリンたそ「サイオンさん?」
  <SYSTEM>マリンたそ さんからフレンド申請がありました!
  まさか
  姫川>なんでフレンド申請拒否した
  手元のスマホに映し出される、姫川からの怒りのメッセージ。
  まさか、姫川さん?
  これが姫川さん?
  <SYSTEM>マリンたそ さんからのフレンド申請を承認しました
マリンたそ「フレンド申請、ありがとうなの♡」
サイオン「(絶句)」
  背筋が凍った。
  岸田>姫川さん!姫川さん!?なんですかこれ!?
  姫川>俺は「マリンたそ」を伝説に残る最強の姫にしたいんだ
サイオン「マジっすか」
マリンたそ「マジだよ」
サイオン「なんでまた」
  その言葉に「マリンたそ」は応えない。
  ピロン。
  手元のスマホが響く通知音と共に、姫川は私に告げる。
  姫川>ドラファンで伝説の姫と呼ばれる「白百合アリス」を過去のものにしたいんだ
  姫川>白百合アリスを凌駕する伝説の姫プレイヤーになるために、岸田、協力しろ
  姫川>お前、俺を”囲う”騎士になれ
  白百合アリス。
  匿名掲示板で専用のスレッドが立つほどの伝説の姫プレイヤー。
  例えば複数の男に貢がせたとか、リアルでデートしたとか。
  しかし、噂の多くは事実無根の誹謗中傷。
  結果、彼女はこの世界から姿を消した。
  面白い、面白いじゃん。姫川湊。
  白百合アリスは、私にとっても大切な子だった。ならば私に断る理由はない。
  彼女が霞むほどの「姫プ」を成して、彼女を過去にしようというのだ、この男は。
  いやキャラは女の子だから、ネカマか?
  とにかく。彼がしようとしているのは一種の救済に近い。
  彼を伝説の姫にして"彼女"が救われるのであれば、私が断る理由はない。
  たとえ私の心が傷つこうとも、彼女の名誉のため。自分への精算のため。
  だって白百合アリスは──

〇黒背景
  私の大切な「子」なのだから。

次のエピソード:姫と課金とホストクラブ

コメント

  • めっちゃ懐かしい気持ちになりました笑
    ネカマ…いましたよねぇ、今もいるのか!
    現実との差がゲーム内ででますよね、そんなところもしっかり書いてあってとても面白かったです!

  • マリンたそって名前がまたツボでした!笑
    ネトゲってだんだん名前枠埋まってきて、記号付けたり色々と工夫したのを思い出しました。
    これからの展開がすごく楽しみです!

  • 表題『彼が姫プで私が騎士で』の時点で展開は予測できたハズなのに、だからこそ「この冷徹な営業部のエースがネカマで姫プレイするんだよな…?」という謎のワクワク感がありました笑
    ログインするまでの過程描写がリアリティに溢れ、気づけば読了…面白かったです!

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