リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

第二話 逃げた悪魔(脚本)

リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

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〇城門沿い
  ときは遡り、昨日のできごと。
  天界にて、事件が起きた。
アナウンス「緊急事態発生! 監獄から複数の悪魔が脱獄した。投降しない場合、討伐を許可する。繰り返す──」
イリス「ありゃ、大ごとだねぇ。 せっかくの休憩時間なのに」
リリウム「呑気にしている場合じゃないでしょ。 早く監獄へ戻らないと!」
イリス「今から行っても、もう遅いよ。 先まわりしなきゃ」
リリウム「どこに?」
イリス「この天界で、悪魔が生きのびるなんて無理。 多分、奴らは人間界を目指す」
リリウム「そうだとしても、一度戻らないと。 それに、天界の門には番人がいるんだよ?」
イリス「じゃ、リリウムは監獄の様子を見てきて。 わたしはちょっと探ってくるから」
リリウム「あ、こら! あんたが勝手に動くと、同期のわたしまで怒られるんだから!」
リリウム「・・・・・・あーあ、行っちゃった」
リリウム(もう、イリスは勝手なんだから・・・・・・。 いけない、早くもち場に戻らないと)

〇未来の店
リリウム(部下向けの口調、部下向けの口調・・・・・・よし!)
リリウム「何があった!?」
ドラセナ「悪魔の魔法を阻害する術式が機能しておらず、脱走されました」
ドラセナ「ただ、何故そんなことになっていたのか、皆目わからず・・・・・・」
リリウム「それは今はいい。それより、逃げた数は?」
ドラセナ「た、ただ今確認中です・・・・・・」
リリウム「どこへ逃げた? 居場所は把握できているのか?」
ドラセナ「ええと、脱走に気づいた小天使アルテミシアを含め、十数名が追跡中です」
リリウム「では、わたしもそちらへ合流する」
ドラセナ「で、でも、現在他の中天使以上の方が出払っておりますので、中天使リリウム様にはこちらで指揮をとっていただきたく・・・・・・」
リリウム「君だって小天使なんだ、充分だろう。 ドラセナ、ここの指揮は任せる!」
ドラセナ「こ、困ります! ・・・・・・ああ、行ってしまった・・・・・・」

〇山中の川
リリウム(アルテミシア、どこだ?)
アルテミシア(先輩! てっきり指揮官をやらされているかと・・・・・・。 抜けだしてきちゃったんすか?)
リリウム(うるさい、わたしは現場向きなんだ)
アルテミシア(今、監獄裏の山にいるっす。 まだ思念波が通じる距離でよかったっすね)
リリウム(わかった。 すぐに追いつくから、そのまま追跡していろ)

〇華やかな裏庭
リリウム(でも、なぜ裏山? 門と逆方向なのに・・・・・・)
リリウム「まさか・・・・・・!」
リリウム(アルテミシア、山の中腹に到達する前に、悪魔を止めろ!)
アルテミシア(へ?)
リリウム(ドラセナ、聞こえるか? 至急、裏山へ増援を向かわせろ!)
ドラセナ(は、え、リリウム様? それが、今監獄内でも他の悪魔が騒いでいまして、すぐには・・・・・・)
リリウム(いいから、ありったけの増援を送りこめ!)

〇村に続くトンネル
アルテミシア「あー・・・・・・先輩、やられたっす・・・・・・」
リリウム「アルテミシア?」
アルテミシア「こんなところに、人間界への抜け道があったっす・・・・・・。奴ら、ここを通って人間界に逃げて行きました」
リリウム「ああ、以前イリスと見つけてな。 塞ぐように申請はしていたはずだが、間に合わなかったようだ」
リリウム「ここへ逃げたと聞いて、まさかと思ったが・・・・・・」
アルテミシア「すみませんでした!」
リリウム「いや、アルテミシアのせいではない。 それよりも、奴らのあとを追うぞ!」
リリウム(ドラセナ、わたしはこのまま人間界へ行く。こちらは任せたぞ)
ドラセナ(え、ちょっと、リリウム様──)

〇開けた交差点
リリウム「奴らはまだ近くにいるはずだ! 探して捕まえろ。抵抗するなら、始末してもかまわない!」
「はっ!」
リリウム(うー、人間界か・・・・・・。 あまり慣れていないし、早く帰りたい)
リリウム(わたしたちは霊体なのに、人間界に入ると自動的に肉体をまとうから、気持ち悪いんだよなぁ・・・・・・)
リリウム「そういえば、イリスのいうとおりになったけど、彼女はどうしたかな?」
リリウム「今の、結界を張った光!? イリス・・・・・・?」
リリウム「痛っ」
ヒクイ「あ、悪い」
リリウム(人間の少年? 何だか、ガラが悪そう。 不良って奴?)
ヒクイ「・・・・・・天使? ホンモノ?」
リリウム「へ? 何でバレて──」
リリウム(あ、さすがにこの格好は目立つか。人間のフリするのを完全に忘れていた・・・・・・)
ヒクイ「すげぇ、天使って初めて見た」
リリウム(そりゃあ、皆んなうまく擬態するし、こんなヘマするのはわたしくらいでしょうよ)
リリウム(しかも、部下たちにも擬態するように指示するのを忘れたし・・・・・・。 ああ、穴があったら入りたい・・・・・・)

〇赤いバラ

〇開けた交差点
ユリナ「おい人間、今見たことは忘れろ!」
ヒクイ「それが人にものを頼む態度か?」
ユリナ(う・・・・・・。つい、部下への指示出し口調になってしまった・・・・・・)
ユリナ「お願いだから、忘れてください・・・・・・」
ヒクイ「ククッ。まぁいいけどよ。 それより、さっきの光は何だ?」
ユリナ「あ、そうだった。早く行かないと!」
ヒクイ「光った辺りに行きたいのか? じゃあ、こっちだ」
ユリナ「場所がわかるの?」
ヒクイ「ああ、ついて来い」

〇大きな木のある校舎
中級悪魔「ケケケ、どうした? 一人で戦いにきた割に圧されているじゃないか、中天使さんよぉ?」
イリス「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・。 別に? 大したことないよ」
イリス「あんたたちこそ、わたしがこの町に張った結界で閉じこめられたものだから、随分お困りのようね?」
中級悪魔「クソ、さっさとこの結界を解け!」
イリス「まさか、こんなに脱走していたとはね・・・・・・」
イリス「二十匹くらいはいるかな」
イリス「さすがに一人だと、ちょっとつらいか・・・・・・」
中級悪魔「わかったら、観念しろ!」
イリス「一人なら、ね」
リリウム「イリス!」
中級悪魔「仲間か!」
リリウム(結局、もとの天使の姿に戻ってしまった・・・・・・)
イリス「よくここまで、たどり着けたね。あんた方向音痴だから、来られないかと思った」
「うわっ」
リリウム「ひどくない? まぁ確かに、親切な人間に案内してもらったけど・・・・・・」
「ぐあっ」
イリス「てっきり指揮官をやらされているかと思った。逃げてきたの?」
「ぐっ!」
リリウム「それ、アルテミシアにもいわれた・・・・・・」
リリウム「それはそうと、この町に結界を張ったの?」
イリス「まぁね。ヘタに逃げられても困るし。 あと・・・・・・」
イリス「今回の脱獄事件は、何かおかしい。 増援も町に入れないほうがいい」
イリス「天界に、手引きした奴がいる。だから、結界内の天使の数も最小限にしておきたかった」
イリス「まぁ、ここにいる中に裏切りものがいない確証はないけど」
リリウム「そんな、まさか・・・・・・」
イリス「危ない!」
イリス「うっ」
リリウム「イリス! そんな、わたしなんかを庇って・・・・・・。 死んじゃダメだよ!」
イリス「ちょっと休むだけ。この結界を解くわけには、いかないから・・・・・・。 気をつけるのよ、リリウム・・・・・・」
リリウム「イリス!」
リリウム「石に、なった・・・・・・」
中級悪魔「その石を渡せ! それを砕けば、結界が解ける!」
???「何だか楽しそうなことをしていやがるなぁ!」
中級悪魔「誰だ!?」
リリウム(屋上に、人? 逆光でよく見えない・・・・・・)
???「けど、人の縄張りで好き勝手されるのは気に食わねぇ。うせろ」

〇大きな木のある校舎
「ぎゃあ!?」
中級悪魔「ぐ・・・・・・三匹ほどやられたか・・・・・・。クソ、撤退だ!」

〇大きな木のある校舎
リリウム(屋上にいた人もいなくなっている・・・・・・。何だったんだろう。 味方? それとも──)
ヒクイ「おい!」
リリウム「あ、さっきは道案内ありがとう。 おかげで戦いには間に合った・・・・・・」
リリウム「けど・・・・・・役に立たなかったよぉ」
ヒクイ「な、泣くな。一部始終は遠くから見ていた。死んだわけじゃないんだろう?」
リリウム「でも、この休眠状態はいつ解けるかわからない」
リリウム「イリスはすごく優秀なのに、ダメなわたしが残っても何にもならないよ・・・・・・」
ヒクイ「お前だって、天使だろ? ちゃんと戦えていたじゃないか」
リリウム「それは、彼女がいたから・・・・・・。 いつもそう」
リリウム「優柔不断なわたしを引っぱってくれて、わたしが判断を間違えても彼女がフォローしてくれた。だから、安心して決断できた」
リリウム「でも一人だと、どうしていいかわからない・・・・・・」
ヒクイ「だーもう、ピーピー泣くな! それなら、俺が一緒に考えてやる!」
リリウム「えっ」
ヒクイ「それで失敗したら、俺のせいにしちまえ!」
リリウム「でも・・・・・・」
ヒクイ「それよりお前、一人で人間界に来たのか? 仲間はいないのか?」
リリウム「い、いる。部下が」
ヒクイ「じゃあ、そいつら連れてこい。その石になった奴の説明をして、今後の作戦を立てろ」
リリウム「わかった。その・・・・・・」
ヒクイ「まだ何かあんのか?」
リリウム「あ、ありがとう。頭が真っ白で、いろいろと考えられていなかった」
ヒクイ「気にすんな。三十分後に、ここで集合だ」
リリウム「うん!」
ヒクイ「さて、つい手を貸しちまったが・・・・・・。 俺の正体に気づかないとは、めでたい奴だ」

次のエピソード:第三話 認める天使

コメント

  • ウフフ、不穏!
    ここから純情な天使がどうなるのか…?
    正座で見守ります!

  • 今回の話が1話につながるんですね。味方側に裏切り者がいる(?)的な展開もありそうで楽しみです。

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