その執事は、物語る。

槻島 漱

鴉の恩返し 後編(脚本)

その執事は、物語る。

槻島 漱

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〇病室
  ピッ、ピッ、ピッ
時雨「・・・お嬢」
時雨「すいやせん、俺・・・」
時雨「あんたとの約束、守れそうにないっすわ」
  数時間後
紗羅の父「おや、時雨?」
紗羅の母「どうしました?」
紗羅の父「いや、時雨がいないんだよ」
紗羅の父「どこ行ったんだろう」
紗羅の母「トイレにでも行ってるんじゃないですか?」
紗羅の父「そうか・・・」
紗羅の父「ん?」
紗羅の父「手紙?」
紗羅の母「あなた、これ・・・」
紗羅の母「何かしら・・・」
紗羅の父「とりあえず、手紙読んでみるか」
紗羅の父「・・・字が汚すぎて読めん」
紗羅の母「あらあら」
紗羅の母「じゃあ、私が読みますよ」
紗羅の母「『旦那さん、奥さんへ』」
  突然すみません。
  俺、約束破りました。
  やっぱり俺、お嬢を助けたいです。
  俺の右目を半分煎じた薬、飲ませました。
  じきによくなると思います。
  俺のことは心配しないでください。
  時雨
紗羅の父「時雨・・・!?」
紗羅の母「なんてこと・・・」
紗羅「ん、んん・・・」
「紗羅!」
紗羅「ん、あれ・・・?」
紗羅「お父さんにお母さん・・・」
紗羅「時雨は?」
紗羅の母「そ、それがね・・・」
紗羅「・・・え?」

〇森の中
  数日後
紗羅「時雨ー!」
紗羅「どうせ近くにいるんでしょー!」
紗羅「さっさと出てこーい!」
(お嬢・・・?)
(よかった、元気になって・・・)
(てか、なんでここにいるってわかったんだ・・・?)
紗羅「時雨ー!」
(相変わらず声でかいな・・・)
紗羅「いい加減にしないと羽根むしるから!」
時雨「いや、怖っ」
紗羅「やっぱりいるじゃない!」
紗羅「呼んでんだからさっさと出てきなさいよ!」
時雨「いやいやいや、そこはあれじゃないっすか」
時雨「普通、泣きながら告白するとこじゃないっすか」
紗羅「絶対ない」
時雨「ひでえ・・・」
紗羅「・・・心配したんだけど」
時雨「・・・うす」
紗羅「急にいなくなるのはよくない」
時雨「・・・うす」
紗羅「・・・右目は?」
時雨「これでも不死身の妖怪なんで、再生力はあるっすよ」
時雨「まだちょっと治りきってないんであれっすけど・・・」
紗羅「・・・そっか」
時雨「・・・・・・・・・」
紗羅「・・・・・・・・・」
  ドンッ
時雨「うおっ!」
紗羅「本当に心配した」
時雨「え・・・え?」
紗羅「この、バカ時雨」
時雨「・・・すいやせん、お嬢」
紗羅「・・・ありがとう」
紗羅「私、時雨のおかげで生きてる」
紗羅「でも、もう二度としないで」
時雨「お嬢・・・」
時雨「・・・しんみりしてるお嬢とか貴重っすね」
紗羅「ほんとムカつく!」
紗羅「涙返せ!」
  ゴンッ
時雨「あいたあああああああああ!!」
時雨「けが人!俺、けが人!」
紗羅「ふんっ」

〇田舎の一人部屋
  チュン、チュン
時雨「グー」
紗羅「グーじゃない!」
  ゴンッ
時雨「いたああああああああああ!!」
紗羅「起きろ!」
時雨「お嬢は脳筋なんすか?!」
時雨「他に起こし方あんでしょうが!」
紗羅「いつまでも寝てるあんたが悪いんでしょ!」
紗羅「いいからさっさと起きなさいよ!」
紗羅「また遅刻しちゃう!」
時雨「もう1人で行けんでしょう!」
紗羅「あんたは私の護衛でしょ?!」
時雨「こんな怪力の女子高生に護衛なんていりやせんよ!」
紗羅「なんですって?!」
紗羅の父「まったく、朝から元気がいいな」
紗羅の母「ふふふ、そうですね」

〇広い玄関
紗羅「お父さん、お母さん、行ってきます!」
時雨「行ってまいります」
紗羅の父「ああ、行ってらっしゃい」
紗羅の母「気をつけてね」
「はーい!/はい」
紗羅「ほら早く!」
時雨「へーへー」
時雨「そういや、またスカートめくれてますよ」
紗羅「どうせ嘘でしょ」
時雨「今日は、ほんとっす」
紗羅「うそっ!」
時雨「嘘」
紗羅「時雨!」
  おしまい

次のエピソード:ねこ局長は、今日も「頑張る」が言えない 前編

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