非実在の存在証明

おさかな

第0.5話 日常(脚本)

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〇学生の一人部屋
  ピピピピッ、ピピピピッ!
尚太「・・・スヤァ」
  ピピピピッ、ピピピピッ!
尚太「・・・ぐぅ」
  ピピピピッ、ピピピ──
リオル「うるさーい!」
  健気に鳴き続けていた目覚まし時計は、
  リオルの一喝により口を閉ざした。
リオル「ふふん、やっぱり尚太は私がいないとダメね」
リオル「尚太ー!起きてー! おーきろー!」
尚太「・・・ぐぅ」
リオル「む。そっちがその気なら!」
  リオルは尚太のベッドから離れた。
  助走をつけて再びベッドへと突撃する。
リオル「リオルスーパージャイアントキック!」
尚太「いった?! え、あ?!なん・・・?!」
リオル「尚太が起きるのが遅いからいけないのよ! 早く起きないと遅刻するわよ」
尚太「えっ・・・?あ、うん・・・? も、ものすごく痛い・・・?」
リオル「気のせいよ!」
尚太「えぇ・・・?」
  リオルに急かされるまま、尚太はばたばたと登校の準備を始めた。

〇明るいリビング
尚太「おはよー・・・」
  尚太が通学鞄を抱えてリビングに入る。
  扉の開けた音を聞きつけて、キッチンの方から足音が近づいてきた。
ユウト「おはよう。 今日も朝から元気だね」
尚太「んー、聞いてくれよユウト。 さっきリオルにめちゃくちゃ蹴られた・・・」
リオル「気のせいよ!」
尚太「いや気のせいじゃないって! なんかいっぱいアザあったし!」
リオル「幻覚よ!」
尚太「ええ・・・」
  さらに言い募ろうとする尚太に、リオルが拳を握って見せた。
  尚太は助けを求めるようにユウトを見る。
  ユウトは苦笑いをこぼして、あやすようにリオルの頭を撫でた。
ユウト「リオル、お転婆はほどほどにね。 ご飯の準備は出来てるから、 2人とも先に食べてて」
ユウト「僕はリサさんを起こしてくるから」
尚太「んー」
リオル「りょ!」
  リサの寝室へ向かうユウトを見送り、尚太とリオルは食卓についた。
尚太「いっただきます!」
  尚太が出来立ての食事に手をつけるのを、リオルはテーブルに肘をついて眺めている。
  リオルの動かしている生体ユニットに消化の機能はなく、食事は共にとれないためだ。
リオル「尚太、それ美味しい?」
尚太「うん。すごい美味い。 やっぱりユウトはすごいな」
リオル「いいなー。 いつか私も消化機能のついたユニットでユウトのご飯食べるんだ!」
尚太「ん。そうだな」
  そんな話をしていると、リサの寝室の方からユウトが戻ってきた。
ユウト「お待たせ。・・・あ、ごめんね。 リオルの補給ドリンク出してなかったね。 はい、どうぞ」
リオル「ん!」
  ユウトが冷蔵庫から出した瓶にストローを刺して、じゅじゅっとその中身を吸っている。
  整備オイルとか潤滑剤とか色々入っていて、中身は結構どぎつい色と匂いをしている。
  以前好奇心で一口だけ飲んだ尚太は、それを一滴残らず吐き出したものだった。
リサ「んん〜 おはよ・・・」
尚太「あ、母さん。 おはよ」
リオル「リサさんおはよー」
リサ「2人とも朝から元気だったらしいじゃない? 若いっていいわねーお熱いわねー」
尚太「そんなんじゃ無いって」
ユウト「おしゃべりも程々にね。 2人とも、朝はあまり時間はないんだから」
リサ「はいはい」
  リサも食事に手をつけ始める。
  リオルと尚太はぼんやりとテレビの天気予報を眺める。
  その時だった。
  画面上部のテロップに『サイバーテロ発生。自由の翼関与か』の文字が流れる。
「・・・」
尚太「最近多いよな」
リオル「ん。 取り敢えず今のところは侵入された形跡はないけどね」
リサ「一応うちはセキュリティ入れてるけどね。 ただ、ああいうのはそういうプログラムも突破してくるんだろうけど」
ユウト「僕とリオルで監視はしてるから、いきなり家電がやられたりはしないと思うよ」
リオル「んー。頑張る」
  リオルが緩慢に頷いた。
  澱んだ空気を払うように、ぱんとユウトは手を叩く。
ユウト「さ、みんな早く食べちゃって。 ちゃんと時間気にしてね」
尚太「うえっ?! やばいかも!」
リオル「いそげー!尚太いそげー!」
尚太「リオルもだろ!」
リオル「私はすぐ終わるもん! いーち、にーの、さんっ!」
  そう言い終わるや否や、リオルの身体から力が抜けてくったりと背もたれにもたれ掛かる。
  その代わりに尚太のデバイスが光り、
  『尚太はやくー!』とメッセージが表示された。
尚太「うう、ずるいよな・・・」
ユウト「まぁまぁ」
  尚太はジタバタしながら登校の準備を終わらせる。
尚太「それじゃ、いってきます」
ユウト「行ってらっしゃい。気をつけて」
リサ「遅くなるなら連絡しなよー」
尚太「はーい」
  尚太はリオルの入った端末を手に、玄関から飛び出して行く。
  この後に何が待ち受けているかも知らずに。

次のエピソード:第1話 NENと自由の翼

コメント

  • なんだろう、日常の一コマなのに、ちょっとした違和感…今後の展開が全く読めないので、続きが楽しみです!

  • この後何が起きるか、私も知らない。気になります。いきなり最初にさらりと、人間ではない話になって、何だ何だという感じで、引っ張りこまれています。

  • リオルとユウトはいわゆる家電的な存在でもあるみたいですね。それでも外観は人間と同じで感情すらあるみたいだから、便利だけど接し方を間違ってはいけませんね。とても意味深いタイトルでこの先何が起こるのか楽しみです。

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