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きせき

エピソード7-多色の刻-(脚本)

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〇城の会議室
玄人「お下げいたします」
黒野すみれ「あ、ありがとうございます」
  アントレが終わり、一旦、テーブルの上には
  カトラリーや食器、ワイングラスが消えていく。
  そして、その代わりにコーヒー用のスプーンや
  デザート用の小ぶりのフォークが用意されていく。
エマ「本日のデセールは当館のシェフが本日の食事会の為に考案いたしましたケーキで、」
エマ「鍵盤ケーキのオペラ風でございます」
  エマさんがそう言うと、白とダークブラウンの層が
  まるでピアノの鍵盤のように重なったケーキが現れる。
  しかも、金粉や粉砂糖を振られていて、
  薔薇らしき花の花びらが2、3枚、載っていた。
玄人「どうぞ」
  私は玄人さんに軽く頭を下げて、ケーキを食べる。
  コース料理のことは分からないが、デセール。
  つまり、デザートのことだろうし、
  これでおしまいかと思っていたら、
エマ「そして、本日のミニャルディーズは3種のミニタルトと」
エマ「六甲の希少な水で淹れましたブルーマウンテンでございます」
  と、言われる。
黒野すみれ「(ミニャ・・・・・・ディス?)」

〇花模様3
ミニャ?「はじめまして、すみれにゃん」
ミニャ?「私はミニャでぇーす。よろしくにゃ!!」

〇城の会議室
黒野すみれ「・・・・・・」
  私はバカげたことを考えると、チョコレートやチーズ、
  カットされた苺やブルーベリーの載るミニタルトを
  食べて、水に拘ったブルーマウンテンを飲み干した。

〇洋館の廊下
黒野すみれ「今日は素敵な食事会をありがとうございました」
  今度こそ、終えた食事会に私は春刻の兄達に頭を下げる。
明石朝刻「いえいえ、俺達も楽しかったですよ」
明石東刻「ええ、今は出会っただけかも知れませんが、後に末長い縁となるかも知れませんしね」
明石東刻「それでは、私はこれで・・・・・・。お恥ずかしながら、仕事の納期が迫っておりまして」
  東刻さんは南田、と南田さんを呼ぶ。
南田「はい、東刻様」
明石東刻「社の方へ戻る。例の件はどうなった?」
南田「お任せください。全て用意してございます」
明石東刻「そうか、まぁ、要らぬ気だったな」
明石東刻「では、黒野さん。また・・・・・・」
明石東刻「春刻さんがいないのは我々としても残念ですが、ゆっくり過ごして行ってください」
南田「それでは、失礼いたします。黒野様」
  立ち去る2人の背中を見ながら、私は朝刻さんに
  話しかけられた。
明石朝刻「ははは、彼は仕事人間なんですよ。まぁ、良い意味でも、そうでない意味でも」
明石朝刻「あ、当屋敷に滞在中は何でも気兼ねなくおっしゃってくださいね」
明石朝刻「一応は副当主ですので、明石家のことや春刻のことなんかもお話しできるかと思います」
  じゃあ、俺達も引き上げようか、と朝刻さんは
  夕梨花さんを呼んだ。
夕梨花「あ、はい」
夕梨花「・・・・・・。それでは、黒野様、失礼いたします」
  一瞬、品定めをされているように
  見られたような気がしたが、気のせいだろう。
  すると、先程まで私の料理を運んでくれていた
  玄人さんも私に話しかけてきた。
玄人「あの、黒野様」
黒野すみれ「え、あ、はい!!」
  私は驚きながらも、何でしょう?と玄人さんに聞くと、
  彼はなんと私に謝り始めたのだ。
黒野すみれ「え、お世話になったのは私の方だったと思うんですけど?」
  料理や飲み物を運んでくれたり、カジキの身を切って、
  ついうっかりナイフを落とした時も玄人さんは
  ナイフを拾ってくれて、別のナイフを渡してくれた。
黒野すみれ「(手が震えてたけど・・・・・・)」
玄人「いえ、そのようなこと、明石家の使用人であれば当然です」
玄人「とは言うものの、私は元々、運転手だったので、あまり給仕は得意ではないのですが」
玄人「時々、夕梨花さんや南田さん、エマメイド頭が凄い人過ぎて、落ち込む時もありますね」
玄人「って、すみません。明石家に来る前はタクシーの運転手だったものですから」
  タクシーの運転手の全てが話を脱線する訳ではないが、
  確かに無愛想に運転をする訳にもいかないのだろう。
黒野すみれ「あ、いえ。間がもたないからつい沢山、話しちゃうって、あるかと思います」
  私は玄人さんを微妙なフォローをすると、話を戻した。
玄人「ああ、そうでした。この度の食事会は黒野様の為のものでございましたが、」
玄人「私が力不足だった為、明石青刻を不在にしてしまいました」
玄人「それが申し訳なくて、お伝えしたかったのです」
  深々と頭を下げる彼に、私は全然気にしていないという
  意味合いの言葉を口にする。
黒野すみれ「そんなの全然、気にしてませんし、玄人さんのせいじゃないですよ」
玄人「・・・・・・。ありがとうございます」
玄人「私では何の力にもなれないかも知れませんが、何かありましたら、こちらに連絡を」
黒野すみれ「えーと、玄田真人(げんだまさひと)さんって・・・・・・」

〇カラフルな宇宙空間
黒野すみれ「玄人さんじゃなかったんですか!?」

〇洋館の廊下
玄人「ええ、玄田の玄と真人の人で、玄人。青刻様がつけてくださったんですが・・・・・・」
玄人「自分にはなかなか皮肉なプレイヤーネームかと」
黒野すみれ「プレイヤーネーム?」
玄人「ああ、青刻様はゲーマーなんですよ。動画とかも上げてて、」
玄人「結構動画も再生数が多くて、評判も良いみたいです」
玄人「だから、青刻様のてのひらの上といいますか・・・・・・」
玄人「青刻様について1年くらい経つのに、いつもいつも振り回されていますよ。ははは」
黒野すみれ「それはなんというか、大変そう・・・・・・ですね。色々」
玄人「ええ、まぁ、でも、才能もある方だし、使用人ながら彼の将来は楽しみですよ」
  私自身がなかなかゲームをしないこともあるが、

〇配信部屋
架空の明石青刻「今日のMINAきゅんもイイ!! 最高!! 可愛さ極まってるよ!!」

〇洋館の廊下
  なんて、私はまだ見ぬ青刻の人物像に
  オタク系のゲーマーっぽい人物を思い、
  玄人さんの背中を見送った。

〇貴族の部屋
黒野すみれ「はぁ、なんで、食事するだけで、こんなに疲れてるんだ・・・・・・」
  私は何とか、殺人犯がいるかも知れない食事会から
  用意してもらった部屋へと帰ってきた。
黒野すみれ「さて、明日は庭の方に行けるけど、午後からになるみたい」
黒野すみれ「(空いている時間に少しでも色んなことを知っておけたらと思うんだけど・・・・・・)」
  私はそう思うと、現在の時間も考えて、少し悩んだが、
  リエさんを呼ぼうとベルを手に取った。
  コンコンコン!
黒野すみれ「(どういうこと?)」
  そう、私はまだベルを鳴らす前で、
  リエさんを呼ぶ前だった。
黒野すみれ「(いや、持っただけで少し鳴ったかも知れないけど、それにしても・・・・・・)」
  早過ぎる。
  トントントン!
  ただ、ドアをノックされたら、
  返事をしない訳にもいかない。
黒野すみれ「はい」
  私はつい、ドアを開けそうになったが、
  リエさんだったら、またドアを開けるのを
  よく思わないかも知れないと、「どうぞ」と言う。
  すると、ドアが静かに開いた。
マリ「夜分遅くにGood eveningです。貴女様が黒野すみれ様でOkarです?」
  そこには、エマさん、リエさんに続き、
  目元を覆うように仮面をつけた、
  メイド服姿の女性が立っていた。
黒野すみれ「はい、私が黒野すみれですが・・・・・・」
  私は戸惑いながらも名乗ると、女性は私の顔を覗き込む。
  エマさんのように何を考えているか、悟らせない。
  というのでもなく、
  リエさんのように親しみや、無邪気さの感じられる。
  というのでもなく。
  彼女の口元は不敵に微笑んでいた。
マリ「はい。名乗っていただいて、Thank youです」
マリ「いえね、素行調査は得意中の得意なんですけど、所在調査はNotな方でして・・・・・・」
黒野すみれ「素行調査に、所在調査?」
マリ「ええ、所在調査はいわゆる、いなくなったCatちゃんを探してくださいとか」
マリ「初恋のLadyが今、どこで何をしているのか知りたいのですが、というヤツです」
マリ「で、素行調査というのは今度、Marryするのだけど、相手の素性を調べて欲しいとか」
マリ「逆に、浮気されているから離婚したいけど、決定的なEvidenceが欲しいとか」
マリ「ってヤツですね」
黒野すみれ「じゃあ、貴方が・・・・・・」

〇車内
エマ「彼女の情報はこの上なく正確。まさしく「真理」と申してよろしいでしょう」

〇貴族の部屋
黒野すみれ「エマさんの言っていた?」
マリ「Yes. That's rightです!!」
マリ「私は柘植真理(つげまり)。エマMaid頭に命じられてやってきた真理を告げる者です」

次のエピソード:エピソード8-多色の刻-

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