エピソード7(脚本)
〇オフィスのフロア
磯ヶ谷敏文「高井君が出社してないようだが、誰か連絡受けてないかね?」
石田克典「誰も受けてないみたいですよ。 無断欠勤っすかね」
不破誠(・・・あいつ)
磯ヶ谷敏文「これだから近頃の若いもんはと言いたくなる」
石田克典「そういうタイプには見えなかったっすけどね」
不破誠(昨晩、何も答えずに逃げられてしまったが、間違いなく聞いた足音は高井のもの)
不破誠(かといって、それを理由に高井を自白させることは不可能。 足音を聞き分けられる俺は何者なんだということになってしまう)
不破誠(机から盗まれたものは何もなかったが、高井は何のために俺を調べていたのか。 もしや誰かに頼まれて・・・)
結城あかり「高井さん、心配ですね」
不破誠「・・・・・・」
結城あかり「何かあったんですかね?」
不破誠(・・・この女の指示か? 俺の正体に気づいたこいつが、高井をたらしこんで、調べるよう命じたのか?)
結城あかり「・・・・・・」
不破誠(もう悠長なことは言ってられない段階まで来たようだ。 一刻も早くこのミッションを終わらせなければ・・・)
結城あかり「不破さん、今度の休日はお時間ありますか?」
不破誠「!」
結城あかり「・・・ちょっと付き合って欲しいんですけど」
不破誠(・・・最終局面)
星野千尋「・・・・・・」
〇シンプルな一人暮らしの部屋
不破誠「金を手に入れ、あの女を始末する。 明日で全て終わりだ」
メール通知が来る。
不破誠「結城あかりだ」
不破誠「ふん。まるで恋人みたいだな。 始末されるとも知らずに」
不破誠「しまった!」
不破誠「つい口から出たことをそのまま!」
あかりから返信がくる。
あかり『そうですね』
不破誠「・・・俺まで殺されるわけにはいかん」
〇駅前広場
不破誠(早く着きすぎてしまった。 遅れて登場した方が良かっただろうか)
不破誠(今日は俺が優位に進めなければならない。 失敗したな)
「すっかり彼氏気分ですね」
不破誠「・・・・・・」
灰島竜也「レジェンドがここまで会社に溶け込めるとは思いませんでしたよ」
灰島竜也「しかもデートにまで持ち込むなんてね」
不破誠「・・・・・・」
灰島竜也「まさかこんなところに伝説の殺し屋がいるなんて誰も思ってませんよ」
不破誠「・・・仕事の邪魔だ」
灰島竜也「声が大きかったですか? すいませんすいません」
不破誠「・・・・・・」
灰島竜也「殺気だってますねぇ」
灰島竜也「ここで俺らがやりあったら何人犠牲者が出るか」
不破誠「・・・・・・」
灰島竜也「そうだ。一つアドバイスを」
不破誠「お前に教わることなどない」
灰島竜也「デートに遅れてきた方は、必ず待ったか聞いてきます」
灰島竜也「その時は、今来たところだと答えてください」
灰島竜也「株が上がりますよ」
不破誠「・・・消えろ」
灰島竜也「検討を祈ってま〜す」
不破誠(俺は俺のやり方でやるだけだ)
「不破さん」
不破誠「!」
結城あかり「すいません。 私の方が早く来なければいけないのに、お待たせしてしまって」
不破誠「・・・・・・」
結城あかり「待ちました?」
不破誠「・・・・・・」
結城あかり「不破さん?」
不破誠「・・・今来たところだ」
結城あかり「・・・不破さんて優しいですね」
不破誠「優しい?」
結城あかり「今日はどこへ行きましょうか」
不破誠「・・・俺はどこでも」
結城あかり「私、不破さんと行ってみたいところがあるんです」
不破誠「・・・そこで構わない」
結城あかり「それじゃバスに乗りましょう」
不破誠「ああ」
結城あかり「なんか楽しいですね」
不破誠(ん? なぜ俺は普通に話せているんだ。 もしかして俺はこの女に心を許してしまっているのか?)
結城あかり「どうしました?」
不破誠(いやいや目を覚ませ。 俺がこいつの術中にハマってどうする)
〇遊園地の広場
結城あかり「あの乗り物とか楽しそうですね」
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