星舟の回想録

ラムダ

Ep01.失われた大地(脚本)

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〇地球
  5年程前、厄災があった。
  聞くところによれば、その隕石は人類に新しい希望をもたらすと思われていたらしい。

〇魔物の巣窟
  新しい資源になる筈だったソレは、突如として暴走。
  世界中に種をばら撒いた。
  種、通称"外宇宙因子"を浴びた生命は例外無く異形の姿に変えられ、人々を襲った。
  因子によって"異星人"と化した者の対処には、即座に焼却するしか無い。
  かつて家族だった者達を焼き、辛くも逃げ延びた。
  それで、その隕石っぽい何かは実は生きてるんじゃないかって話になって。
  中でビッグバンが起きてるとか
  テラリウムでもやってるんじゃないかとか
  分かってるのは例の隕石が全ての元凶だって事だけで、
  考える暇も無く汚染がどんどん広がっていって、研究どころではなくなったそう。
  未曽有の危機に瀕した人類は結構頑張って抵抗したそうだけど、結果はこれ。
  地表は8割以上が侵食されて、国と呼べる場所はもう殆ど残ってない。

〇近未来の手術室
  私が目覚める前の事は覚えていない。
  気が付けばここにいた。
  新地球国家連合(新国連)直属
  
  地表浄化研究情報機関
  
  東アジア本部。
  名前が長いので、皆は"情報局"とか"局"って呼んでる。
  ここでは地表浄化の方法を模索する為、日夜研究が続けられていて・・・
  そこへ私と言う絶好の研究資材が運び込まれてきたんだからお祭り騒ぎ。
  「抗体を調べさせて欲しい」「ワクチン作成に協力して欲しい」と、必死な様子で。
  藁にも縋る思いだったんだろう。
  3年間弄り倒される日々が続いた。
  それからはもう毎日血抜かれたり
  得体の知れない薬飲まされたり
  いろんな所から検体取られたり
  体の中見透かされたりもしたな

〇殺風景な部屋
ニィナ「・・・」
ニィナ「(こうやって目の前の奇特な科学者に毎日質問攻めにされるのも、慣れたものだ。)」
シラハマ博士「メンタル、フィジカル双方概ね良好。 経過観察もそろそろ大詰めだね」
シラハマ博士「最初はあんなにひ弱だったのにねぇ~ 流石に慣れっこかい?」
ニィナ「3年間ずっとこれじゃ流石に受け入れるしか無いでしょうが!」
シラハマ博士「まぁこれも任務だからね」
シラハマ博士「現状、特効薬が作れそうな素材は君しかいないんだ」
シラハマ博士「人類存続の為だからね。 まぁ頑張ってくれたまえよ。フフッ」
ニィナ「ずいぶん軽く言ってくれる・・・ いっぺん代わってくれても良いんだけど?」
シラハマ博士「ハハッ!すまない! 君には興味が尽きないから楽しくてねぇ」
シラハマ博士「あ、そうだ。今夜は君の好きなアイスクリームでもご馳走してあげようか?」
ニィナ「ぐぬぬ、そんなモノでこの私を釣りおって・・・」
  この人はシラハマ博士。
  ここの研究員。
  私の保護者で、名付け親。
  上手に人参ぶら下げて私を弄んでる。
  そして私は仮称"ニィナ"。
  厄災から生き延びた現状唯一の生存者。
  ワクチン作成の目的で、日夜モルモットみたいな扱いを受けてる。
シラハマ博士「これで今日の任務は終了だ。 お疲れ様、大尉クン!」
ニィナ「ほんといつ聞いても慣れないわソレ。 私これでも一応軍人扱いなんだよね・・・」
  ここでの私の扱いは軍人だけど、別に武器持って飛んだり跳ねたりとかはしない。
  ただ毎日足繁く局に通って、科学者に協力してあげるだけで、後は自由。
  毎日こんなだから、"特務大尉"なんて階級貰ってもあまり実感湧かない。
ニィナ「・・・外、出るか」

〇大企業のオフィスビル
ニィナ「う~寒!」
  地表を追われた私達は、その生活圏を空中へ移さざるを得なくなった。
  生き残った人類は、大急ぎで空中都市空母を大量に建造し、そこに移り住んだ。
  衛星軌道上のプラントで組み立ててから大気圏へ下ろし、半永久的に滑空させる。
  元は金星居住の為に用意された技術らしいんだけど・・・
  今や地球の土すら踏めないとは何とも皮肉な話だね。
  とは言え、空での生活は平穏そのもの。
  余りの退屈さに余計な知識ばかり増えていく。

〇塔のある都市外観
ニィナ「何もない癖に相変わらず夜景だけは映えるな。この街は」
  正式名称:金星航行都市船 地球圏改修型15番艦 "ニュー・アルマトイ"
  私達の家、希望の船。
  この夜景を見に、任務の後は決まって散歩に出る。
「ガガッ ピーッ あーあー、こちらエスコート3-3。 ニィナちゃんへ」
  博士からもらった無線機が鳴いた。
  エスコートはSC。3-3は33。
  シラハマ・チアキ 33歳って意味。
「美味しい夕食と私がお待ちかね~♪ そろそろ帰っておいで~♪」
ニィナ「了解。こちらニィナちゃん。 すぐ戻りま~す」
「はいは~い♪ ガガッ ・・・・・・」
ニィナ「・・・寂しがり屋さんめ」
  博士は緊急時以外の連絡は全部文字のやり取りで済ませてる。
  
  ・・・私を除いて。
ニィナ「さて、ホームに戻ろう。 博士が待ってる」
  退屈な日々はこれからも続く。
  そう思っていたんだけど・・・

〇崩壊した道
  数ヶ月後──
  
  旧ロシア連邦 西部侵食地帯
ニィナ「うわ!キリがないなこれは!」
ニィナ「ニィナからガルダ2-1。 D-19地区で多数のボギーと遭遇」
ニィナ「迎撃困難、支援攻撃とスペアを要請。 座標は・・・・・・」
「ザッ ガルダ2-1、2-1了解」
「ガルダ2-1、投下。 2-2、投下。 7秒後に着弾、待機せよ!」
ニィナ「了解」
  ゴォォォォオオオオオ──!!!
ニィナ「来た!」
シラハマ博士「ザッ スペア、行くよ~!」
  ヒュゴォォォォ ドスッ ガシャン!!
ニィナ「ありがたや!」
ニィナ「そらっ!」
「ボギー沈黙。 残敵無し。 周辺区域はクリア」
シラハマ博士「大丈夫かい? 少し休むべきだね」
ニィナ「ふぅ・・・ いくら何でも今日はちょっと多過ぎるんじゃない?」
  色々あって、
シラハマ博士「あっ!また別のが来た! スタンバイ!」
ニィナ「えぇ~!!」
  私は前線に居た。
  Ep01.失われた大地

次のエピソード:Ep02.邂逅する二人

コメント

  • いつの日か地球には住めない時代が来るのかな?地球外生命体の襲来が来るのかな?そう考えたら、宇宙を旅して開拓地を見つけないと。

  • 地球を追われても生き続ける人間って、逞しいなと思いました。
    追い詰められたらそんな力が出るのかもしれません。
    それが人間なんでしょうね。

  • 私たちが地球の大地を踏めなくなる、こんな日が来ないとも限りませんね。今の日常は当たり前ではないということを思い出し、普段から地球に感謝をし、大切にしたいと思いました。

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