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きせき

エピソード6-多色の刻-(脚本)

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〇城の会議室
明石東刻「全く青刻さんはいつものことながら仕方ないですね」
明石朝刻「本当だな、東刻。しかも、春刻・・・・・・いや、当主も当主だ」
明石朝刻「こんな素敵な方が来られる予定があるのに、屋敷を空けているなんて・・・・・・」
明石東刻「いやー、全くです。現当主の春刻さんにも困ったものですね。兄上」
  どちらともなく、席を勧められて、青刻不在のまま、
  殺人犯がいるかも知れない食事会が
  食前酒とともに始まった。
黒野すみれ「・・・・・・」

〇城の会議室
エマ「本日の食前酒は2012年もののシャンパーニュとなっており、」
エマ「前菜は3種の魚介のワンスプーンとなっております」
黒野すみれ「・・・・・・」
  給仕係としてエマさんと春刻以外の専属使用人達が
  料理を運び、酒を注ぐ。
エマ「左から鯛のカルパッチョ、海老のグリル焼き、キャビアとカマンベールの」
エマ「ブルスケッタを半分にカットしたものになります」
  エマさんの言うように、3つのスプーンが
  シンプルな皿に並ぶ。しかも、スプーンを囲むように
  スプラウトを蔓のように巡らせて、
  人参やラディッシュで花の飾り切りも添えられていた。
黒野すみれ「凄い・・・・・・」
  口に運ぶと、それらには臭みや強すぎる塩味がなく、
  私はあまりの美味しさに溜息をついた。
黒野すみれ「(って、グルレポをやってる場合じゃない・・・・・・!!)」
  私はなんてミステリーが苦手な大学生なんだと
  思うと、次に運ばれた季節の野菜のポタージュを
  飲みながら、彼らを観察してみることにしてみた。
黒野すみれ「(えーと、彼は春刻の1番上のお兄さんだったと思う)」
  明石朝刻。見た感じだと、気さくなタイプで、
  あまり堅苦しいのは好きじゃなさそうだ。
黒野すみれ「(意外とスーツとかじゃなくて、ラフなかっこだし)」
黒野すみれ「(春刻のこと・・・・・・春刻って言って、当主って言い直してたし)」
黒野すみれ「(あと、副当主ってことはもし、春刻がいなくなれば、彼が次期当主ってことなのかも)」
黒野すみれ「(春刻がいなくなった時の継承順位とかならエマさん、教えてくれるかな?)」
  私は朝刻さんから視線をそらすと、
  今度は夕梨花さんを見た。
黒野すみれ「(えーと、彼女は夕梨花さんだったっけ?  朝刻さんの専属使用人・・・・・・)」
黒野すみれ「(名乗ったり、話したりはまだしてないか、どんな人かはまでは分からないかな?)」
黒野すみれ「(あ、でも、朝刻さんに対しては特に笑顔かも)」
黒野すみれ「(あとは彼女は私とあまり変わらない年みたいに見えるけど、)」
黒野すみれ「(一体、どんなことがあって、朝刻さんの専属使用人になったのかな?)」
黒野すみれ「(逆に東刻さんの専属使用人・・・・・の人はザ・執事って感じだよね)」
黒野すみれ「(執事服から銀のチェーンが。あれは懐中時計かな?)」
黒野すみれ「(トキも懐中時計派だったから誕生日プレゼントを買う時にちょっと調べたことがある)」

〇豪華な客間
  物部トキ。私の友人で、父にこの家に来ると言った時に
  ダシに使わせてもらった女友達だ。

〇城の会議室
黒野すみれ「(って、今はトキのことはおいておいて・・・・・・観察、観察)」
  私は夕梨花さんから東刻さんの隣に目線を移した。
黒野すみれ「(えーと、名前は確か、北田でも西田でも・・・・・・なくて、南田さん)」
黒野すみれ「(見るから執事ですが、何か? みたいな感じだよね)」
黒野すみれ「(よくフィクションなんかだと、銃とか撃てたり、変な資格を沢山持っていたり)」
黒野すみれ「(何かと人間辞めてますみたいなチートキャラなことが多い)」
黒野すみれ「(・・・・・・って、真面目に考えろ、私)」
黒野すみれ「(えーと、仕えているのは東刻さん。東刻さんは神経質そうなところがありそうかな)」
黒野すみれ「(でも、動作もスマートだし、2人はなかなか良好な関係を保ってそうな感じもする)」
黒野すみれ「(なんか、今日の平均株価とか話してそう。あと、そうかと思ったら会食の段取りとか)」
黒野すみれ「(専属使用人の採用基準とかあるのかな? エマさん、教えてください!!)」
  私は南田さんから視線を逸らすと、季節の野菜の
  ポタージュを飲み切った。
明石朝刻「そう言えば、黒野さんは当主とどちらで知り合ったのですか?」
黒野すみれ「えっ!」
明石朝刻「あ、いえね、彼が貴方は大切な人だから兄さん達で迎えて欲しいなんて」
明石朝刻「珍しく手紙を寄越してきたものだから兄としては気になると言いますか・・・・・・」
  ねぇ、東刻・・・・・・と、
  朝刻さんは東刻さんに話を振る。
明石東刻「兄上、そんな急にお聞きしたら、黒野さんも驚かれるでしょう?」
明石東刻「ただ、私も気にならない訳ではないですね。春刻さんが心を寄せる人のことは」
  東刻さんまでそんなことを言う。
  だが、その質問はリエさんもされたし、想定のうちだ。
黒野すみれ「えーと、大変申し訳ないんですけど、私と春刻さんはそんな関係じゃなくて」
明石朝刻「と、言いますと?」
  心底、驚いたと朝刻さんも東刻さんも口を開ける。
  私はリエさんが帰って、仮眠をとる時に考えついた
  嘘八百を口にする。
黒野すみれ「私も実は、最近まで彼と出会ったことを恥ずかしながら忘れてしまっていたんですけど、」
黒野すみれ「先日、手紙をいただいたんです」

〇新緑
黒野すみれ「その手紙にはいつか会いたいとあり、」

〇風流な庭園
黒野すみれ「今度は僕が庭や家を案内するから是非、明石家に来て欲しいとありました」

〇城の会議室
明石東刻「え、それでは、どこで春刻さんと出会ったかは?」
黒野すみれ「ええ、実は思い出せてはいません。ただ、私はもうすぐ日本を離れることになっていて」
明石朝刻「もうすぐ日本を?」
黒野すみれ「ええ、なので、荷造りをしていたのですが・・・・・・」
黒野すみれ「このまま日本を離れたら、私は絶対後悔すると思い、」
黒野すみれ「皆さんには失礼を承知して今日は来させてもらったんです」
  私は心の中にある台本をゆっくり読むように、
  言葉にしていく。
  滑らかすぎると、それはそれで嘘くさいし、
  辿々しくしすぎると、それはそれで嘘くさい。
  あとはできるだけ、本当のことを話しつつ、
  嘘の部分は誰かの話から抜き取ったりする。
黒野すみれ「皆さんには迷惑はかけないので、」
黒野すみれ「彼の言っていた庭などを見せていただくことはできないでしょうか?」
明石朝刻「・・・・・・」
明石東刻「・・・・・・」
  ポワソンが出てくるまで短い談笑。沈黙。
  多少の無理矢理感はあるも、私は何とか秋川さんの
  亡くなった庭に辿り着かなくてはならない。
  そして、真相に辿り着かなくては

〇シックな玄関

〇新緑

〇宇宙空間

〇黒
  彼らを救うことはできない。

〇城の会議室
黒野すみれ「・・・・・・」
  すると、この沈黙を最初に破ったのは東刻さんだった。
明石東刻「あの、大変水を差すようなのですが、あの庭は現在、立ち入り禁止となっておりまして」
黒野すみれ「立ち入り禁止・・・・・・なんですか?」
明石東刻「ええ、ご希望には添えなくて残念なのですが・・・・・・」
  東刻さんは困ったような顔をする。
  確かに警察も介入された場所だし、
  エマさんも建物を含め、封鎖してあると言っていた。
  だが、一応は見たいということを言っておかないと
  後々、不法侵入で訴えられたりするし、
  あらぬ疑いをかけられてしまうだろう。
  それは避けたかった。
黒野すみれ「(やっぱり、一筋縄ではいかなかったか・・・・・・)」
  私がこっそりと捜査することを決意しかけた
  その時だった。
明石朝刻「東刻、良いじゃないか」
明石東刻「ですが、兄上!!」
明石朝刻「明日の午後には封鎖も解かれることになっている」
明石朝刻「それに、彼女、黒野さんを手厚くもてなすのは当主の希望するところでもある」
明石朝刻「当主の命・・・・・・いや、それ以前に、兄として彼の願いを叶えてあげたいと思うんだ」
  それは願ってもない展開だった。
  だが、現時点で最大の決定権を持つ彼が肯定する。
  東刻さんが折れる形で、私は庭に行けることになった。
明石東刻「兄上がそうおっしゃるのであれば、仕方ないですね」
  話がまとまったところで、これからのワインの
  希望が聞かれ、
  カジキをソテーしたポワソン、
  レモンを皮の部分まで使ったレモンのソルベ、
  和風牛フィレ肉のステーキと続く。
  コースが進む中でも、私は時折、春刻の2人の兄や
  今は不在の明石青刻の専属使用人を含めた3人の
  専属使用人についての観察は続けた。
  青刻不在ということもあり、彼との関係性は
  分かりかねるが、
  春刻の2人の兄でも手を焼いているところを見ると、
  曲者だと言うことは言えるかも知れない。

〇配信部屋

〇黒

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