地獄のチワワの実験的宇宙

小潟 健 (こがた けん)

実験2 むさ苦しい地の文オンリーでも10タップに1回水着の女の子とか出せば行ける(脚本)

地獄のチワワの実験的宇宙

小潟 健 (こがた けん)

今すぐ読む

地獄のチワワの実験的宇宙
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇霧の立ち込める森
  早朝の霧深い森の中、ガサガサと音をたてながら枝葉を掻き分け、何者かが歩き行く
  それは──二人の屈強な男達
  鬱蒼とした森の中ではぐれぬ為にか?
  それとも転ばぬ為にか、屈強な男達は──
  禿頭の男の左手と、長身の男の右手は固く──だが、どこか優しげに結ばれていた
  傷付けない様に、だが決して、離れもしない様に──そう、握りあっていたのだ
  ──大丈夫か?
  少しだけ前を歩く禿頭の男──デネブが、斜め後ろの長身の男──ヴェガを振り向き、優しげに声をかける
  ──大丈夫だ、俺にばっかり見惚れているとお前が躓くぞ
  ヴェガの歯の浮くような台詞にデネブは赤面し、正面に顔を戻して隠す
  ──耳まで真っ赤だぜ
  ──俺の服が赤いからそう見えるんだよ
  そう答えるデネブの手は、先ほどよりも少しだけ強く握られていた
  荷物を詰めた背嚢、頑丈な靴、腰の得物
  二人の姿はよく有る旅人のそれだった
  だが、この道なき森を行く旅人の姿など他に無い
  二人は、脱走者だった

〇西洋の城
  天蓋教会──大陸の中央より東の国々に広く信徒を持つ、世界最大の宗教組織
  二人の身分は──この逃避行を始める以前の二人は、教会の僧兵だった
  僧兵とは、教会の僧侶の中で、鋼鉄の武器で武装をした者を指す名である──
  そして天蓋教会では特に、神への祈りを届ける魔力を持たない下位の者に与えられる、卑しき役でもあった
  その彼ら、僧兵達の主な仕事は周囲の組織に対する天蓋教会の武力の誇示と──
  異端、異教徒への武力介入──
  それらは日頃から積極的に行われていた
  長き歴史を持つ教会は、今まさに腐敗の絶頂期を迎えつつあったのだ

〇先住民の村
  それはいつもの任務だった──
  いつも通りに、異端の神を奉じる邪教徒が支配する村を武力で粛清する──そのはずだったのだ
  ヴェガが一人の邪教徒の亡骸を前にして立ち竦んでいる
  不思議に思ったデネブが近寄り、腰に手を回す
  横に並びデネブがヴェガの視線を辿ると、それは亡骸の右手へと注がれた
  そこに合ったのは、祈りの道具──
  ヴェガやデネブが使う物と同じ、天蓋教会の信徒が使う祈りの道具と同一の物だった
  二人が物音に振り返った先には──
  ──子供だ
  そしてその子供は
  次に現れた若い男に蹴倒され、踏みつけられた
  僧兵達を指揮する若き聖職者──神へと祈りを届けられ、神秘たる魔法を振るう者だ
  子供に向け武器を振り上げた指揮官に、ヴェガは待ったをかける──
  ヴェガは自らの殺した者の握った道具から、この村の無罪の可能性を訴えた
  ──あぁ、そんなことか
  ──全て殺して問題無い
  それだけを言い放ち、指揮官は更に村の奥へと踏み行った
  子供の首にもぶら下がっていた、二人の首に掛けられた物と同じ祈りの道具が鈍く光り──
  やがてその光は、子供自身の血で覆われ、儚く消え去った

〇先住民の村
  二人はもう、いままでと同じでは居られなかった
  幼き子供の命まで奪う天蓋教会の下で俺達は生きていけない

〇貴族の部屋

〇霧の立ち込める森
  俺達はとんでもない事をしてしまった!
  だが不思議と、罪悪感や後悔は無かった
  僅かに残る正義感は歓声をあげてていた
  そして夜の明けぬうちに荷物をまとめて本陣から抜け出した
  重い鎧を外した身は、背負った罪まで消えた様な軽さだった
  二人で行こう、二人ならどこまででも行けるだろう
  先ずはこの山を抜け、隣国へ行こう
  そこは未だ天蓋教会の手の届かぬ地だ

〇霧の立ち込める森
  不意に、デネブの手を握る力が強くなった
  先ほどの温かな握り様ではなく、これは冷たく硬い──氷のような緊張だ
  ヴェガも数瞬遅れて気付く──望まぬ出会いに
  獣臭、豚の如き鼻息、血走った眼、不揃いの歯、分厚い皮と脂肪、それを盛り上げる筋骨──
  1体のオークが居た
  その身は長身のヴェガよりも頭二つは高く、腕や脚の太さなど、僧兵随一の力自慢だったデネブの倍以上──
  そして、片手には太い木の枝──棍棒を握っている
  これは──不味い
  オークは恐ろしい亜人だ、知能こそ人間に遠く及ばないが、四~五匹も居ればその身一つだけで小さな町を壊滅させる事もある
  訓練された者達でも、オークと戦うならば5人以上で戦えと教えられる──武装する個体なら、10人でと、そんな化け物だ
  まだ幾らかの距離が有り、オークはこちらに背を向けている──遣り過ごせるかも知れない
  そう二人が考え始めた時──
  二人の後ろから風が吹く──
  二人は一瞬目を合わせ、覚悟を決めた
  オークは嗅覚に優れている、それこそ豚の如く──風下のオークは間も無く二人の存在に気付くだろう
  二人は結ばれた手を離し、静かにオークへと駆け出す
  離した手にはそれぞれ腰の得物が握られる
  ヴェガの手に取られた得物は──オークと同じ棍棒と称される武器だ
  しかしオークの様なただの木の枝では無い
  柄は同じく木製だがその先端、打撃部位は菱形の金属製鉄塊が付く
  メイスと呼ばれるそれには幾つか突出した出縁が付き、そこでの打撃力は木の枝などとは比にならぬ威力となる
  デネブの得物もまた棍棒に類される物だ
  ヴェガのメイスとほぼ同じ造りの木製の柄
  だが、その先端は少し違う形状をしている
  打撃部位は丸い鉄球、そしてそこから幾つもの鋭いトゲが伸びている
  モーニングスターと呼ばれる武器だ
  二人の得物の棍棒は僧兵の武器として広く知られるものだ
  それらを振りかぶり──
  ──静かな風となりオークの背後へと走り寄る二人
  オークと足を止めて戦うのは自殺行為だ──狙うのは、一撃離脱の繰り返しだ
  臭いと音、そのどちらに先に気付いたかは分からないが、オークが二人に振り返る
  ──だが、振り返りきる前に二人の棍がオークを襲う
  デネブが右、ヴェガが左に走り抜ける様にそれぞれの得物を振るい、モーニングスターは右膝の裏、メイスは頭を捉えた
  痛打を受けたオークはくぐもった唸り声をあげ、膝を地に着いた
  二人は狙い通りの場所を打ち据えた──
  ヴェガは、ざまあみろと喝采をあげ──
  デネブは、しくじっちまったと嘆いた──
  オークの膝裏に打ち込んだモーニングスターのトゲはデネブの予想よりも深く刺さり、抜けなかった
  そしてオークが地に膝を着いたときに柄から手を放せず、モーニングスターに引かれて倒れ──無手でオークの前に転がってしまった
  デネブの目の前に、頭から血を流す怒りの形相のオーク
  その右手には粗末な木の棍が握られ、頭上に振り上げられていた
  二度の殴打を受け、最早生きているかも判らぬデネブを助ける為にヴェガが走り戻る
  家族を捨て、生国を捨て、ついには信仰をも捨てたヴェガには、恋人のデネブまでをも失う訳にはいかぬのだ
  雄叫び走り寄るヴェガに気付いたオークはデネブに振り下ろしていた棍棒を止め、構え直す
  そうだ! 俺を狙え!
  二度とデネブを打たせるものか!
  手を不必要な程に高く広く掲げ、阿呆の様に声を張るヴェガを見て、オークは気付いた──
  ──貴様の目的はこの『亡骸』か?
  オークは地に伏すデネブを左の手で掴み上げ、突進するヴェガへと投げ付ける
  思わず、胸元へ飛び込んで来たデネブを抱き止める──
  オークの腕力は尋常なものでは無かった
  胸が潰れたかと思える衝撃を受け、肺の中の空気を吐き出してしまう

〇霧の立ち込める森
  ──カフッ
  デネブが呻いた──
  まだ、生きていたのか!?
  ヴェガの腕、そして体はデネブを優しく抱き止める為に動いた
  互いの胸の温もり、そして息を感じられる程に近付いた二人は──
  オークの振り下ろす大きな棍棒に──
  ────
  ────────
  ──激しい闘争は終わり、早朝の森には静寂が戻る
  最後に残るのは、一体の傷付いたオーク
  右の膝裏に食い込んだモーニングスターを傷が広がらぬ様に慎重に抜き──
  ゆっくりと立ち上がる
  右足に力は込められぬが、何とか歩くだけなら出来るだろう
  頭の傷は──明らかに頭部は凹み、頭痛、吐き気、目眩が在るが──こちらも、動けぬ程では無い
  ふと、右手で握り締めた棍棒に目を下ろせばソレは、半ばから折れかけていた
  細かい枝葉を払っただけの木の枝だが、頑丈で気に入っていた
  しかし、これではもう使い物にはならないだろう
  枝を投げ捨てると目に付いたのは、先程まで己の膝に食い込んでいたトゲ付きの棍棒と、頭を打ったであろう出縁付きの棍棒
  拾い上げ、軽く振ってみると先程の枝とは比すべきも無い程の暴力性を感じる
  少し短いとも感じたが──
  両手に1本ずつ持つ分には、ちょうど良いとも感じる
  戦利品の検分を終え、重なり合う人間の死体を見る
  頬を寄せ、互いを抱き締める様に事切れている
  ────
  オークと人間が敵対する理由は、単純だ
  オークは人間を襲い、殺して喰う
  だが────
  このオークは二人に背を向けて、右足を引き摺りながら立ち去る
  食い意地の張る自分にしては変だな──と思いながらも、何故かこの二人をこのまま放っておきたいと感じた
  しばらくの後から、国境の山に二本の棍棒を振るう片足の悪いオークの噂が広まるのだが──
  永遠に抱き締め合う二人には、もはや興味の無い事だろう────

次のエピソード:実験3 一億と一人が思い付き一億人がやらなかった読了率を100%にする冴えた方法

コメント

  • 地の文が多い方はいますが
    実験的にここまで地の文で構成されると、どう影響を受けるのか実感できますね
    地の文は想像力を掻き立ててくれますが、立ち絵やエフェクトがあると頭の中で集中することができず思考がブレちゃう気がします
    セクシーな女の子もちょいちょい現れるのも、思考が中断されました😂😂😂🤣🤣🤣

  • 水着の女の子が毎回衣装替えてくるの、楽しすぎです。
    作品は真面目な話かと思いきや、BLの棍棒比べ(笑)
    笑った〜素晴らしい実験回ですね!

  • ストーリーはあまり頭に入ってこなかったのですが(固くて逞しいものがオークにズブりと刺さっちゃう場面は覚えてます)、読み進めていくうちに自分もTapNovelで新たな物語を紡いでみたくなりました。
    なるべく処理が重くなる状態で女の子の衣装の選択をすればいいんでしたっけ?

コメントをもっと見る(10件)

成分キーワード

ページTOPへ