第1話 どうみても呪われました(脚本)
〇黒背景
【呪い(のろ・い)】
1.人が霊的存在を使役して、特定・
不特定の人物や社会に厄災をもたらす行為
2.1の行為により生じた、存在自体
土御門家監修『陰陽用語集・令和版』より
〇荒れた倉庫
ホーホー・・・
土御門真守「うう・・・怖い」
ギャアーッ!
土御門真守「ぎゃああああっ!」
土御門真守「うう、夜の鳥って何で叫び声みたいなの あげるんだろう・・・」
土御門真守「それでなくても真夜中の廃墟なんて、 気絶しそうなくらい怖いのに・・・」
ティィィィィィン!
土御門真守「ぎゃああああっ!」
テン、トン、タン、トン・・・
土御門真守「何この不吉な音・・・ って僕のスマホの着信音!? ・・・も、もしもし?」
土御門魔矢「ハロー、真守(まもり)。どう? アタシの指示通り、廃墟にいる?」
土御門真守「姉ちゃん! 僕のスマホの着信音、 勝手に変えたでしょ!」
土御門魔矢「あれよ。携帯で呪いが伝染するっていう あの映画の着信音」
土御門真守「何てことすんの!」
土御門魔矢「それよりちゃんと廃墟にいるん でしょうね? また逃げてない?」
土御門真守「ちゃんと来たよ! 逃げるとよけい怖い目にあうから・・・」
土御門魔矢「よろしい。 で、言った通り部屋の中をチェックした?」
土御門真守「うん、そうしたら木でできた箱を 見つけたんだけど」
土御門魔矢「ちょっと写真送ってくれる?」
土御門真守「うん・・・はい、送った」
土御門魔矢「はーい・・・ん? アンタこれ、コトリバコじゃん」
土御門真守「コトリ・・・何それ?」
土御門魔矢「持ってたら死ぬやつ」
土御門真守「ええーっ!」
土御門魔矢「かわいそうに、まだ高校生なのに。 童貞のまま死んじゃうのね」
土御門真守「し、死にたくないよ!」
土御門魔矢「童貞のままじゃいや?」
土御門真守「単純に死にたくないよ! どうすればいいの?」
土御門魔矢「特殊な呪物だから、専門の神社に 行かないと祓ってもらえないわね。 いい? これから言う神社に行きな」
〇古びた神社
ホーホー・・・
土御門真守「言われた通りの神社に来たけど、 どう見ても廃神社・・・」
ホーホー・・・
土御門真守「神主さんなんていないし。 いても怖いけど・・・」
ホーホー・・・
土御門真守「うう、もう帰りたい・・・」
ポッポッ・・・
土御門真守「鳥の鳴き声しか聞こえないし・・・ ん? 何、今の声?」
ポッポッ・・・
土御門真守「あれ? いま塀の向こうを 女の人が歩いていったような・・・ こんな夜中に女の人・・・?」
ティィィィィィン!
土御門真守「ぎゃああああっ! ね、姉ちゃん?」
土御門魔矢「どう? 神社ついた?」
土御門真守「どう見ても廃神社だよ! 誰もいないよ!」
土御門魔矢「ホントに誰もいない?」
土御門真守「あ、なんかポッポっていう 女の人がいたけど・・・」
土御門魔矢「アンタそれ、 八尺様(はっしゃくさま)じゃん」
土御門真守「八尺様? 誰それ?」
土御門魔矢「見たら死ぬやつ。あんたちょっと ショタだし、確実に狙われるわ」
土御門真守「ええーっ!」
土御門魔矢「ま、追ってくると思うけど、 頑張って逃げて。 家に連れて来るんじゃないわよ。じゃね」
土御門真守「姉ちゃん! 姉ちゃん!?」
ポッポッポ・・・
土御門真守「いやああああああああ!」
〇シックな玄関
土御門真守「うう、やっと家に着いた・・・ もう朝だよ・・・」
土御門真守「八尺様、ついてきてないよね? コトリバコも神社に置いてきたし、 何もなければいいけど・・・」
土御門真守「でも、 ひとり暮らしじゃなくてよかった・・・」
土御門真守「家に帰れば姉ちゃんがいてくれるし、 これでもう安心だよ・・・」
〇明るいリビング
土御門真守「姉ちゃん、ただいま・・・ 姉ちゃん? でかけてるのかな・・・」
コトッ
土御門真守「ん? ぎゃあああああ!」
土御門真守「何でテーブルの上にコトリバコが? 捨てたはずなのに!」
・・・ポッポッポ
土御門真守「ヒッ!? 今の声って・・・ もしかして、追いかけてきた!?」
土御門魔矢「真守? 帰ってたんだ」
土御門真守「ひいいっ!」
土御門魔矢「なに! どしたの?」
土御門真守「姉ちゃん・・・姉ちゃ〜ん!」
〇明るいリビング
土御門真守「というわけで、帰ってきたら テーブルの上にコトリバコがあって、 八尺様っぽい声がして・・・」
土御門魔矢「アンタ、 家に呪いを持ち込むなって言ったわよね?」
土御門真守「好きで持ち込んだんじゃないよ! 元はと言えば姉ちゃんの命令で真夜中の 廃墟に行かされたからじゃないか!」
土御門魔矢「アンタのビビリを少しでも 直してあげようっていう姉心じゃん」
土御門魔矢「アンタだって、いつまでもこのままじゃ ダメってわかってんでしょ?」
土御門真守「それは・・・そうだけど」
土御門魔矢「アタシが何とかしてあげてもいいけど、 いい機会だから自分で何とかしてみ」
土御門真守「え? 自分で?」
土御門魔矢「いい? 真守、アンタは呪われたの。 特A級の2つの呪いに同時にね。 このままじゃ7日後に呪い殺されるの」
土御門真守「・・・7日後?」
土御門魔矢「そ。呪いは人の恐怖心が大好物なの。 だから7日間さんざん怖い目に あわされて、7日日に・・・ギャアッ!」
土御門真守「ぎゃああああ!」
土御門魔矢「ってね。それが嫌なら自分で何とかしな」
土御門真守「そんな、ムリだよ!」
土御門魔矢「ムリでも何でもや・る・の。あ、そうだ。 姉ちゃんこれから温泉旅行なんだったわ」
土御門真守「なんでこのタイミングで!?」
土御門魔矢「前から予約してたの。 んじゃ、お土産買ってくるからね〜」
土御門真守「姉ちゃん! うう、ホントに行っちゃった・・・」
ピンポーン
土御門真守「姉ちゃん?」
土御門魔矢「真守? ちょっと忘れ物しちゃった。 開けてくれない?」
〇シックな玄関
土御門真守「・・・あれ? 誰もいない?」
〇明るいリビング
土御門真守「おかしいな。 確かに姉ちゃんの声だったのに・・・」
ティィィィィィン!
土御門真守「ぎゃああああっ! この着信音心臓に悪いよ! 姉ちゃん?」
土御門魔矢「あ、言い忘れたけど、呪いがアタシの 声真似してドアを開けさせようとする かもしれないけど」
土御門真守「え?」
土御門魔矢「なんだ。もう開けちゃったんだ」
土御門真守「・・・どうしてわかるの?」
土御門魔矢「だって、 アンタの声に混ざって女の声がするよ?」
土御門真守「・・・女の声?」
振り返った僕の目の前に・・・
血のような真っ赤な着物を着た
おかっぱ髪の女の子が立っていた!
土御門真守「ひいいいいいっ!」
コトリ「はっはっは! まんまと騙されおって!」
血の気が引いて、視界が上から
暗くなっていく・・・いや、違う。
そうじゃなくて、上から何か暗いものが
垂れ下がって来てるんだ。
黒くて細い、髪の毛みたいなもの・・・
その先に切れ長の2つの目が・・・
土御門真守「ぎゃああああっ!」
八尺様「フフ、間抜けな子供め、 恐怖を絞り尽くしてやろう・・・」
恐ろしく背の高いワンピース姿の
女の人が、背後から僕の顔を
逆さに覗き込んでいた!
土御門真守「ぎゃー! ぎゃー! ぎゃー!」
土御門魔矢「あー、もう遅かったかー。 んじゃま、がんばって☆」
土御門真守「姉ちゃん!? ぎゃー! もうやだよー!」
コトリ「ほほっ、今度の贄はやけに騒がしいのう」
八尺様「フフ、殺し甲斐がありそう・・・」
コトリ「人を呪うなんてひさしぶりじゃからな。 たっぷり恐怖を味あわせてやろう」
八尺様「そう、恐怖と絶望を味わい尽くしてから、 ゆっくりと断末魔を搾り取って あげる・・・」
こうして7日後、僕は呪い殺されることに
なったんだけど・・・
コトリ「・・・おい待て、 最後に殺すのはわしじゃぞ? それはわかっておるな?」
八尺様「はい? 私に決まってるでしょ?」
コトリ「ポッと出の新人が何を偉そうに! 先輩に譲らんか!」
八尺様「はっ、老害が何を大きな顔を。 そんなもの人気順でしょ?」
コトリ「わしの人気がお主に劣るじゃと? 取り消せ、若造が!」
八尺様「ネットで検索してみればいい! ヒットするイラストの数がダンチだから!」
土御門真守「あの、ちょっと?」
コトリ「おい、お前! お前はわしに殺されたいよな?」
八尺様「私よね? わ・た・し!」
土御門真守「え? え!? そんなの・・・ どっちも嫌だよ〜!」
今度の新作は、まさかのホラー!?
もう表紙を見た瞬間から、うらやまけしからんと思ってしまいました。