ダメージ判定(脚本)
〇ホームセンター
──こうして持久戦が始まった。
変異種 硬質「ギャッヒ!」
リヒト「シッ!」
<硬質>が飛び込み爪を振り、こちらは躱しざまに掌底を叩きこむ。
<硬質>は吹き飛び、ひっくり返って倒れたものの、何事もなかったかのように立ち上がる。
変異種 硬質「ギャッハ!」
そして突撃、自慢の爪を振るってくる。
<硬質>の防御力は高く、こちらはダメージを与えられない。
刃物で切り付けてもダメ、バールや金槌のような鈍器で叩きつけても小さなヒビが入るだけ。
その僅かな亀裂もゾンビの自動回復能力によってすぐさま修復されてしまう。
最後に屋上から階下の駐車場に叩きつけてみたが、骨が折れた程度でこれも致命傷には至らなかった。
──現状の装備では、どうしても<硬質>の回復速度を上回ることが出来ない。
変異種 硬質「ギャッヒ!」
もう何十回繰り返したか分からない突撃を、カウンターで弾き返す。
さすがに何度も喰らって慣れたのか、<硬質>は転倒せずに襲い掛かってくる。
もちろん、迎撃する。
格闘スキル自体はこちらのほうが上なので、守りに専念すればそうそう致命傷を負うこともなかった。
それでも戦い続ければミスをする。現に何発かいいのをもらっている。
変異種 硬質「ギャッギャ」
『いい加減、諦めろ』とでも言いたげに<硬質>が嗤う。
リヒト「・・・それはこっちの台詞なんだけどな」
<硬質>が余裕ぶっている隙に、ウエストポーチに手を突っ込む。
十数個の核を掴み取り、口内に放り込む。
噛み砕き、飲み込む。
途端に空腹感が和らいだ。
リヒト「まさか、卑怯とか言わないよな? 回復アイテムはゲームなら当たり前だ」
HPやMPはおろかスタミナさえも空腹ゲージで管理されているゾンビは、戦っている間、ずっとダメージを受けている状態だ。
空腹ゲージがスタミナと連動している以上、激しく動けば動くほど減りも早くなる。
リヒト「そりゃそうか・・・お前だって腹減るよな・・・」
だからこそ俺は、ずっと迎撃に専念してきた。最小限の動きで攻撃を躱し、カウンターを打ち続けてきた。
一方、こちらの守りを崩そうと激しく動き回ってきた<硬質>の腹の減り具合(ダメージ)はいかほどだろうか。
案外、総ダメージ量は同じくらいだったのかも知れない。
リヒト「けど、これで逆転したわけだ」
変異種 硬質「ギャギャ・・・」
<硬質>が苦し気な声を上げる。
目は虚ろ、口からは激しく涎を垂らしている。
リヒト「だよな、他人が飯食ってるの見たら、余計に腹減るよな?」
通常のゾンビは食欲を抑えられない。
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