〇牢獄
梨夢（りむ）「で、今度はネイトの研究内容を調べたいってわけ」
ヴェロニカ「よく分かりました。石ころみたいな顔をしている割に、よくやるじゃないの貴方」
梨夢（りむ）「石ころみたいな顔・・・」
ヴェロニカ「まあいいでしょう。数日大人しくしたことだし、今日辺りまた動いてみたら？」
ヴェロニカ「そこの田舎臭い珍味のような顔の男を連れて行きなさい」
侍丸「・・・」
侍丸「えっ。拙者でござるか」
ヴェロニカ「他に誰がいるのよ。普段は沼の底に沈んでいて時々息継ぎをしに出てくる魚みたいな顔をしているじゃないの」
侍丸「ハイギョ・・・？」
ヴェロニカ「もう一人の方は辛気臭い顔してカビを数えているだけ。役に立ちそうにないし」
梨夢（りむ）（パスカル・・・どうしたんだろう）
梨夢（りむ）（ここ数日、自分の牢屋にこもりきりで・・・ずっとうつむいてる）
梨夢（りむ）（お姫様が心配なんだろうな・・・）
梨夢（りむ）「早く帰る手段を見つけないとね」
ヴェロニカ「ええ。早くしないと全員カビになってしまいますわ」
侍丸「そうと決まれば行くでござる！拙者が梨夢殿を抱えて行けば早いでござるよ」
梨夢（りむ）「ござる？」

〇古生物の研究室
侍丸「到着！でござる」
侍丸「そっと下ろすでござる・・・」
梨夢（りむ）「うっ・・・視界がぐるぐるする・・・」
梨夢（りむ）「でもちょっと面白かった・・・♪」
梨夢（りむ）「よし！気合を入れて探しましょう！」
侍丸「応！でござる！」
侍丸「で、何を探すんでござるか？」
梨夢（りむ）「ネイトの研究の内容。書類とか手当たり次第に引っ張り出して見てみよう」
梨夢（りむ）「うーん・・・これと・・・これも・・・」
梨夢（りむ）「む！これは・・・なになに？」
梨夢（りむ）「”某日に研究所は閉鎖”」
梨夢（りむ）「”資金不足により・・・”」
梨夢（りむ）「”運営が厳しく・・・”」
梨夢（りむ）「”閉鎖後の施設類の管理は、亡きヴァルトの息子であるネイトに一任されたし”」
梨夢（りむ）「・・・うーん」
侍丸「梨夢殿、何か見つけたでござるか？」
梨夢（りむ）「うん。そっちは？」
侍丸「棚の隙間に手紙を見つけたでござる」
梨夢（りむ）「おお、さすが忍・・・」
侍丸「拙者、隙間を覗くのが好きでござるからな！」
梨夢（りむ）「あまり人に言わない方がいいやつ・・・」
梨夢（りむ）「さて、手紙の内容は・・・」
梨夢（りむ）「”息子へ。私のしたことは無駄だったとは思わない。ただ、母さんを見つけられなかったことは心残りだ”」
ヴァルト「ある日、お前の母さんはこつぜんと姿を消した。ネイト、お前もよく覚えているだろう」
ヴァルト「母さんは異世界に飛ばされてしまったんだ。私はあの日から・・・研究とこじつけて母さんを探し続けていた」
ヴァルト「・・・実は。一つだけ、お前に言っていないことがある。お前の母さんは────」
ネイト「・・・物音がすると思ったら」
梨夢（りむ）「げ。まずい・・・見つかった」
ネイト「研究所を荒らしまわって、どういうつもりだ？」
ネイト「もっとしっかり拘束しないとダメなのか・・・？」
ネイト「縄で縛るのと、手錠をかけておくのと、どっちがいいか選ばせてやろう」
侍丸「どっちでもどうぞでござる!!」
侍丸「さあ！どうぞどうぞ！拙者の両手はこちらに！」
梨夢（りむ）（自ら拘束されに!?）
梨夢（りむ）（ネイトが明らかに困っている・・・）
ネイト「・・・」
ネイト「用があるのはお前じゃない！僕の妻の方だ！」
侍丸「え？え？では拙者が妻でござる！」
侍丸「さあどうぞ！」
ネイト「なんなんだお前は・・・」
梨夢（りむ）「あ、あー、ごほんごほん！ヘイヘイ！勝手に出歩いて申し訳ない！」
梨夢（りむ）「実は私、つい・・・つい・・・あの、つい出歩いてしまったわけなんですつい」
梨夢（りむ）「つい・・・本当についなんですついつい。わざとであり、わざとではないと言ったら嘘になりますがわざとだと言えばわざとなんです」
侍丸「拙者が妻でござる！」
侍丸「さあさあ！」
梨夢（りむ）「拙者でござる・・・」
ネイト「・・・」
ネイト「???」
ネイト（混乱してきた・・・）
ネイト「ええと、とにかく・・・わざとじゃないなら良いんだ」
梨夢（りむ）「かたじけない。勿体なきお言葉。牢屋で反省してきます」
ネイト「ああ、うん。そうしてくれ・・・」