新宿の惨劇

スヒロン

エピソード1(脚本)

新宿の惨劇

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〇田舎駅の改札
「う・・・ん。お兄ちゃん・・・? はっ、電車が・・・? そうだわ、新宿駅に向かう途中で、いきなり脱線して・・・ 誰か?!」

〇田舎駅の改札
伊能美咲「はっ!? 大丈夫ですか!? 起きてください・・・! ひ、酷い・・・! みんな・・・死んで・・・!」

  電車の脱線。
  そこには、無数の遺体があった。
  ひしゃげた屋根が背中に突き刺さった遺体。
  首が折れた遺体。
  親子の遺体。

〇田舎駅の改札
伊能美咲「ひどい・・・! けど、脱線は昼の三時ごろだったはず・・・! 気絶して、何時間も経った・・?」

〇田舎駅の改札
医者「キミ、大丈夫かね!? さっさと逃げるぞ。私は医者だ。もう、生存者はいないようだ・・・!」
伊能美咲「ええ・・・けれど、まだ生きている人がいるかも・・・! それに、あの時・・・前の車両で「バケモノだ!」という声が!」
医者「キミい、バカになる薬でも飲んだか? バケモノなんているはずがない! これはゲームじゃないんだ! さあ、さっさと逃げるぞ!」
伊能美咲「けど、まだ生きている人がいるかも・・・?」
医者「あれだけの脱線で、いるはずがない! 私は医者だぞ!? さあ、こっちへ・・・」

〇外国の駅のホーム
  次の瞬間、ズチャリ
  ズルリ。
  ズチャリ。
  と何か湿ったものを壁に貼り付けたような音が鳴った。
  それは足音だった。
  美咲の表情が恐怖で彩られた。
  
  異様な大きさのぬいぐるみがあった。それは、クマのぬいぐるみ・・・?
  その口元が、血で濡れている。

〇田舎駅の改札
伊能美咲「きゃあああっ!? クマのぬいぐるみ・・・? 血が・・・」
医者「いい加減にしたまえ! これはゲームじゃないんだ! ゲームじゃ・・・ うわあああっ!」
  ばくん。
  そんな、むしろ軽快な音。
  医者はクマのぬいぐるみに足を食べられていた!
  ゴリン、ゴキっ。
  それは骨の折れる音。
医者「これはアアア。ゲームじゃないイイイ!誰かああ! ゲームじゃないいい! 助けっ、ひいやああああ!」
伊能美咲「(腰が抜けて・・・) だ、誰か・・・ ううう・・・ごめんなさい・・・」
クマのぬいぐるみ「うるる。 旨い・・・旨い。 ウマイ。 ガツガツ、グルルル」
伊能美咲「(しゃべれる・・・?  このクマはしゃべれるの?)」

〇田舎駅の改札
ピュ・成田「ちょっと、あんた。死にたくないなら、こっちに来んかい。美少女だからって、若いままで死にたいんか?」
伊能美咲「ええ・・・? あなたは?」
ピュ・成田「成田や! アイドルになるために上京したのに、ワケの分からんクマのバケモノ・・・! わたしゃ、こんなトコで死ぬ気ないで」
ピュ・成田「そのクマが、オッサンを食ってる間や! さあ、逃げるで!」
伊能美咲「・・・はいっ」
  美咲は、「成田」と名乗る女子高生と一緒に、窓の隙間から外に出た。
  ・・・・
  暗い!
  それは、暗闇。
  スマホの明かりでなんとか照らしているが、少し前しか見えない・・・

〇外国の駅のホーム
伊能美咲「はあっ、はあっ。 ゼエゼエ、ここまでくれば、大丈夫だわ! 成田さん・・・ありがとう」
ピュ・成田「どういたしましてよ」
伊能美咲「私、伊能美咲です! お兄ちゃんに会うために新宿駅に・・・成田さんのお名前は?」
ピュ・成田「成田でええやんか・・・名前なんて・・・」
伊能美咲「いえ、キチンとお礼を言わなければ。成田さんのお名前を是非・・・!」
ピュ・成田「ええい、東京モンは堅いなあ・・・」
  何故か成田は名前をイヤがっている・・・?
ピュ・成田「ピュ・・・や」
伊能美咲「え? ピュ・・・?」
ピュ・成田「ええい、私の生まれた国では普通の名前やねん。やたら、キラキラ呼ばわりされるけど、れっきとした名前やで」
伊能美咲「いえ、キラキラなんてことはないです。 ピュさん、ではここから逃げ延びよう! まず他の生存者を探しましょう」
伊能美咲「ここは地下の『新宿駅・丸の内線』・・・ ここではスマホが通じないし、まず地上に上がらないと・・・」
伊能美咲「酷い脱線事故でしたが、他の生存者も、あの”クマのぬいぐるみ”に襲われないように、救出しないと・・・」
ピュ・成田「ううん、あんた美咲。さっきから、エライ頼りになるなあ。まるでレンジャー隊みたいやで」
ピュ・成田「私はテキトーに走ってるだけやけど、これでも”陸上部”やねん。走るのには自信があるで」
伊能美咲「いえ・・・私は、兄が”自衛官”なんです。なので自然に緊急時のことを学んできました。新宿にも、兄に会うために・・・」
ピュ・成田「お兄ちゃん、きっと無事やよ!」
伊能美咲「(親切なピュと一緒で良かったわ)」
  美咲とピュは、スマホのライトで周囲を照らしながら、階段を一歩ずつ歩いていく。
  どこもかしこも死体だらけで、損傷も激しい。
ピュ・成田「ど、どういうことや・・・? 脱線での死人は分かるけど、なんでこんな上階まで死体だらけなんや・・・?」
伊能美咲「あの”クマのぬいぐるみ”のような化け物が他にも・・・? ああ、駄目です。何故かスマホが通じない・・・!」
ピュ・成田「・・・こうなったら、ハラを据えて生き延びるしかない・・・さあ、ここはコンビニや。水や食料を貰っていくで」
伊能美咲「ピュこそ、物凄く頼りになるわ」

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コメント

  • 変わってしまった世界で、出会った彼女とのこれからが気になります。
    裏切られたピュさんは美咲さんを信じられないようですが、なんとなく彼女は裏切らないんじゃないかな、と思いました。

  • お互いどんな目的で生きているかなんか分かりませんよね。
    何を考えているのかも。
    でも状況が状況だけに、相手のことを理解してる場合ではないのかもしれません。
    本来交わらなかった者同士が交わる!続きが楽しみです!

  • 新宿の街で何が起きているのか、どこがどうなってあんな大きなくまがでてきたのか、謎だらけなので今後の展開が楽しみです。成田は人間不信な感じですが、彼女とのやりとりを通して人を信頼できるようになったらいいなとも思いました。

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