エピソード1(脚本)
〇魔法陣2
私には、ほんの少し先の未来が見える・・・
〇広い改札
〇駅のホーム
──(電車の音)
菅沼未来「電車の音なんて久しぶり・・・」
──私はいつもベッドホンを付けている。
自分の能力を開かないように
なるべく情報を閉ざしている。
だけど・・・
──昨日、ベッドホンが壊れてしまった。
菅沼未来「無事に過ごせるといいけど・・・」
山原健太「おーっす!」
菅沼未来「・・・」
山原健太「おい、無視すんなよ、幼馴染み。」
菅沼未来「──・・・」
山原健太「あれ?今日は音楽聴いてねーの?」
菅沼未来「別に・・・」
──(キーン)
菅沼未来「──!!」
健太の手を掴む、未来。
山原健太「・・・な、なんだよ?」
菅沼未来「行くよ!」
──健太を引っ張り、走り出す未来。
山原健太「どしたんだよ?」
山原健太「おい!ちょっと!!」
菅沼未来「いいから、言うこと聞いて!! 早く!!」
菅沼未来「伏せて!!」
山原健太「は、はい!?」
──(爆発音がする)
山原健太「・・・」
菅沼未来「・・・」
山原健太「何だよ、これ・・・」
人々が倒れている。
悲鳴を上げながら逃げる人々。
〇黒
〇広い改札
──駅には立ち入り禁止のテープが貼られている。
的場刑事「なんてザマだ・・・」
菅沼未来「・・・」
山原健太「・・・」
的場刑事「──君たちは?現場にいたと聞いたが」
山原健太「はい・・・」
的場刑事「何か気付いたことはあるかい?」
──未来を見る健太。
的場刑事「・・・?」
菅沼未来「・・・特には」
的場刑事「何か思い出したら連絡をくれ」
山原健太「・・・わかりました」
トボトボと歩いて行く二人。
健太と未来の背中を見つめている的場。
的場刑事「あの二人だけ、ほぼ無傷、ねぇ・・・」
〇通学路
──黙って歩いている二人。
山原健太「あのさ・・・」
山原健太「お前、なんで・・・」
菅沼未来「・・・何?」
山原健太「いや、何でもねぇ」
山原健太「・・・送る」
菅沼未来「・・・」
──俺はコイツがたまにわからなくなる。
『嫌な予感がする』と言って、
コイツに助けられたことが今までも何度もあった。
まさか・・・
──エスパー・・・なのか・・・?
だけど、あれは・・・
今日のは・・・
俺はそこで考えるのを辞めた。
まさかを考えると、
コイツを疑うことになるからだ。
山原健太「(小声で)そんなの…男じゃねぇ」
健太は、隣で歩いている未来の横顔を見つめる。
〇玄関の外
〇女の子の部屋(グッズ無し)
──ベッドの上で考え事をしている未来。
菅沼未来「・・・」
机の上には壊れたベッドホンがある。
菅沼未来「まずはこれを買いに行かないと・・・」
──私には、60秒先の未来が見える
──人よりもほんの少し先の未来が見えてしまう。
──そう、あれは母が亡くなった日だった。
──母は私の目の前で交通事故に遭った。
──あともう少し早く母の手を掴むことができたら・・・
──そんなことを思っていたある日、
──耳鳴りが鳴るとフラッシュバックのように60秒先の未来が見えるようになった
菅沼未来「だけど・・・」
──明るい未来だったことは一度もない。
母の写真をじっと見つめる未来・・・
〇通学路
下を向き、歩いている未来。
未来の後ろ姿を見つめている健太。
山原健太「・・・」
ふぅっと小さなため息をつき、
未来に近寄る。
山原健太「おっす!」
菅沼未来「・・・」
山原健太「相変わらず素っ気ねーな」
山原健太「もう朝から暗れーな! もっと元気に行こうぜ!」
菅沼未来「元気な方がおかしいでしょ」
山原健太「ま、まぁ・・・そうだけど・・・」
角を曲がる未来。
山原健太「おい、どこ行くんだよ」
山原健太「学校、そっちじゃねーぞ」
未来を追いかけ、手を掴む健太。
菅沼未来「・・・何?!」
山原健太「・・・わり」
山原健太「・・・学校、行かねーの?」
菅沼未来「・・・行くとこ、あるから」
山原健太「・・・俺も行く」
菅沼未来「は?なんで?」
山原健太「(小声で)ほっとけねーし…」
菅沼未来「何?」
山原健太「な、なんでもねーよ!」
菅沼未来「あっそ」
的場刑事「・・・ったく、 全然犯人の手掛かりが見つからねぇ」
的場刑事「あれだけの爆発を起こしておいて、逃げ切れるわけ・・・」
向かい側から未来と健太がやってくる。
山原健太「・・・あ」
菅沼未来「・・・?」
山原健太「・・・ど、どーも」
菅沼未来「・・・」
的場刑事「昨日の無傷学生か」
菅沼未来「・・・」
山原健太「なんつー呼び方するんすか」
的場刑事「職業柄な」
的場刑事「学校か?」
山原健太「・・・まぁ、そんなとこっす」
的場刑事「一つ聞いていいか?」
的場刑事「どうしてお前ら二人、 爆発直前に走って逃げた?」
菅沼未来「・・・」
山原健太「それどういう意味っすか」
的場刑事「防犯カメラだよ。 前の店の映像にお前らが映ってたんだよ」
的場刑事「あのまま電車を待ってたら、 二人ともきっと大怪我だったよなぁ」
山原健太「・・・そんな言い方!!」
的場刑事「何で爆発が起きるって、わかった?」
菅沼未来「・・・」
菅沼未来「・・・行こう、健太」
山原健太「・・・お、おう」
未来と健太が立ち去る。
的場刑事「怪しい感じはしないが・・・」
的場刑事「引っかかるねぇ・・・」
──的場に背中を向け、歩き出す未来と健太。
──キーン
菅沼未来「・・・刑事さん!!」
山原健太「・・・?」
菅沼未来「刑事さん!!伏せて!!」
的場が振り向く。
的場刑事「・・・ん?」
走る未来。
菅沼未来「刑事さん!逃げて!!」
菅沼未来「・・・早く!!」
的場刑事「・・・なんだ」
的場に向かって、矢が飛んでくる。
的場刑事「・・・!!」
菅沼未来「逃げてください!!」
矢が的場の腕に当たる。
的場刑事「・・・うっ」
的場、矢の方向を見ると男がいる。
的場と目が合うと去っていく男。
的場刑事「・・・くそっ」
的場刑事「おい!待て!!」
菅沼未来「だ、大丈夫ですか?!」
腕から血が出ている的場。
腕から矢を抜く、的場。
山原健太「・・・救急車、呼びます」
菅沼未来「・・・」
〇病院の入口
〇病院の廊下
菅沼未来「──また、助けられなかった…」
山原健太「・・・大丈夫か?」
菅沼未来「・・・」
──包帯を巻いた、的場が出てくる。
菅沼未来「大丈夫ですか?」
的場刑事「・・・ああ」
的場刑事「・・・何でわかった?」
菅沼未来「・・・」
山原健太「あんた、また疑ってるのかよ」
的場刑事「刑事は疑うのが仕事だ」
山原健太「おい」
的場刑事「・・・でも、この子のお陰で助かった」
山原健太「・・・こ、こいつ、エスパーなんすよ」
的場刑事「・・・エスパー?」
山原健太「昔から危ない時は、なんか助けてくれるんす」
菅沼未来「・・・!!」
菅沼未来「・・・未来が見えるんです、たまに」
的場刑事「・・・!?」
山原健太「未来?」
菅沼未来「って言っても、本当に少しです」
菅沼未来「危ないことが起きる前に 数十秒後の出来事がフラッシュバックみたいに再生させるっていうか、、」
山原健太「・・・!!」
菅沼未来「でも、あまりいい能力じゃないんです」
菅沼未来「未来が見えても、いい未来に変えられるとは限りませんから・・・」
山原健太「・・・」
的場刑事「俺はあんたに助けられたけどな」
菅沼未来「・・・」
的場刑事「警察にも特殊能力課ってのもある」
的場刑事「別に変なことじゃねぇ」
菅沼未来「・・・!!」
的場刑事「ただ、能力を活かすも殺すも自分次第だろ?」
的場刑事「あんたがもし手伝ってくれるなら 未来もちょっと変わるかもな」
山原健太「・・・それどういう意味だよ」
的場刑事「・・・爆弾犯だよ。」
的場刑事「あんなひどい爆破起こして、まだ捕まらねぇ」
的場刑事「未来変えるっつーのは、そういうことだろうよ」
山原健太「・・・あんな何言ってんだよ」
山原健太「こいつ普通の女子高生だぞ」
的場刑事「お前には聞いてねえよ」
菅沼未来「・・・」
的場刑事「さぁ、どうする?」
菅沼未来「私・・・」
菅沼未来「・・・」
菅沼未来「やります」
──私はこの時の答えを
いつか後悔する日が来るとは夢にも思っていなかった
一分後の未来が見えるという設定、面白いですね!!
続き見ます!!
1分先の未来予知ができても、それが良いことばかりもたらす訳でもなく、苦悩することも多いでしょうね。そんな未来の心情が詳らかに描かれていて、作品世界に惹き込まれました。
超能力にも惹かれましたが、3人のキャラクターがそれとは反比例して現実的なところがより面白かったです。未来さんが疑われちゃうだろうな…という私の気持ちに健太さんのモノローグが合わさって、途中で健太さんの方が別の方向へ行くのが頼もしくてよかったです。序章のようですが、ここまででも十分魅力的な情報があって楽しめています。