「前世で結ばれた縁を、次の人生へと結んでみせましょう」(脚本)
〇学校の屋上
29983番さん(女神界って、学校みたいな風景の場所もあるんだ・・・・・・)
自分が、不慮の事故で亡くなった人間だと女神様から説明を受けた。
不幸な事故で亡くなった人間は、異世界に転生できるという説明もあった。
29983番さん「って、なんだそれ!」
32085番さん「転生させてもらえるだけ、ありがたいと思うけどな~」
29983番さん「転生先が決まらない同士なのに、呑気ですね」
32085番さん「だって、転生先の設定は大抵なんでも変更できるんだよ!」
32085番さん「妄想が楽しすぎて、転生できないんだよね~」
32085番さん「私は、できる限り安定した生活を送る予定!」
29983番さん「安定した人生なんて楽しいですか?」
32085番さん「安定した生活=楽できるってことだよ! 少年!」
29983番さん「女神にでも転生したらどうです?」
32085番さん「女神・・・・・・」
29983番さん「変化はなくても、生活が安定してそうですよ」
32085番さん「その手があったか!」
32085番さん「ありがとう! 少年っ!」
32085番さん「このお礼は必ず!」
「君を幸せにしてみせるからねー」
29983番さん「はぁ」
女神D「お待たせしました」
29983番さん「また来たんですね・・・・・・」
女神D「29983番さんは放っておくと、何も食べなくなってしまいますからね~」
29983番さん「カップラーメン嫌いなんですか?」
女神D「いえ、同じ味を繰り返し口にすると、飽きてきてしまうんですよ」
女神D「食事も仕事の一環と考えると、同じ味が巡ってくるのも仕方ないかもしれませんね」
女神D「私の夢はですね、美味しい食を通して笑顔で毎日を過ごすことなんです」
29983番さん「女神という役職を辞めない限り、なかなか実現が難しそうな夢ですね」
女神D「でも、ほら! 夢は諦めたら、そこで終了と言いますから」
女神D「私は、私の元にやってきた夢を大切に生きていきたいと思っているんです」
毎日が同じ業務の繰り返しであろう女神様にも、夢があるんだなって不思議な感覚に陥った。
それと同時に、眩しいくらいの笑顔で自分の夢を語ることができる女神様のことを羨ましいと思った。
自分も、生前には夢があったなって懐かしくもなった。
だから、今の自分が余計惨めに思えてきてしまう。
女神D「では!」
女神D「いただきますっ!」
29983番さん「・・・・・・いただきます」
異世界に転生するか、成仏して新しい人生を迎えるのを待つか。
長いこと決めかねている変わり者の俺と、異世界転生の世話をしているこの女神様。
特別仲がいいわけではないと思うけど、時間が合うときは一緒にご飯を食べる仲へと進展。
29983番さん「俺がいなければ、女神様はもっと自由に時間を使うことができる・・・・・・」
29983番さん「女神様?」
女神D「これは!」
女神D「パッケージが同じと見せかけておきながら、味がちゃんと改良されていますよ!」
29983番さん「・・・・・・そうですか?」
女神D「はいっ!」
29983番さん「・・・・・・んー」
29983番さん「この間食べたときと、特に変わりがないような気がするんですけど」
女神D「あ!」
29983番さん「今度は、どうしましたか?」
女神D「29983番さんとの仲が深まったから、より美味しく感じられたのかもしれませんね!」
29983番さん「は!?」
女神D「29983番さん」
29983番さん「・・・・・・はい」
女神D「私、29983番さんと一緒にご飯を食べることができて幸せに思います」
29983番さん「っ」
女神D「一緒にご飯を食べる相手がいるって、幸せなことなんですね」
29983番さん「ほら、口を動かしていると麺が伸びますよ」
女神D「明日は何を食べましょうか?」
女神D「29983番さんは、何が食べたいですか?」
俺の相手をするのは、すっごく面倒だったと思う。
だって、ここは異世界転生を希望している魂が集まる世界だから。
29983番さん「・・・・・・明日も一緒に食事できるとは限りませんよ」
女神D「もしや異世界転生すると決意・・・・・・」
29983番さん「女神様は、俺以外にも相手をしなければいけない人がたくさんいるじゃないですか」
29983番さん「仕事してください、女神様」
女神D「29983番さんは、甘い物は平気ですか?」
29983番さん「人の話、聞いて・・・・・・」
女神D「29983番さんが思わず美味しいと唸ってしまうような食べ物、絶対に紹介してみせますね!」
女神D「いっぱい食べて、いっぱい寝て、いっぱい休んで・・・・・・」
女神D「また明日も、29983番さんのいろんなお話を聞かせてください」
異世界転生を希望していなかった俺が、異世界転生したいと思うようになるまで。
あと・・・・・・日。