ゾンビ映画の中の人

基本、二回攻撃

脱出ルート(脚本)

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〇CDの散乱した部屋
お母さん「だから、うるさいって言ってんでしょ!!」
  頬に痛みが走る。
???「ご、ごめん、なさい!!」
お母さん「謝って済む問題じゃない!! だいたいアンタ、いつも泣けばいいと思ってんでしょ!?」
???「ち、違──」
お母さん「言い訳すんな!」
  また叩かれる。
  痛いのは嫌だ。
  叩かれるのも嫌だ。
  何より、怒っているお母さんを見るのが、もっともっと嫌だった。
  だから、布団の中に逃げ込んだ。顔を枕に押し付けて、声と、涙と、お母さんを隠した。
お母さん「・・・ほんと、嫌! ・・・どうせ、私が悪者なんでしょ!?」
お母さん「なんでぇ、なんでよ! なんで、アタシばっかり、こんな目に遭うのよ!!」
  気付けば、お母さんのほうが泣いていた。
  チャンスだと思った。
  僕もお母さんも、二人して痛いんだから、きっと仲直りできると思ったんだ。
???「お母さん・・・だいじょうぶ? どこが、痛いの・・・?」
お母さん「う、うるさい! アタシに喋りかけるな!!」
  お母さんはそう叫ぶと、家から飛び出していった。

〇黒
  アンタなんて、生まなきゃよかった

〇おしゃれなリビングダイニング
リヒト「おはようございます」
ツトム「おはよう、リヒト君・・・・・・昨日はすまなかったね・・・」
リヒト「いえ、俺は何も聞いてませんから」
ツトム「・・・そうだったね・・・君にこれを渡しておくよ」
リヒト「地図・・・この点は?」
ツトム「ああ、これは私たちが持っている情報を書き込んでおいたものなんだ」
ツトム「まず、この点が自衛隊の基地で、ここまで行ければ保護してもらえる」
ツトム「次に、この点が知り合いのコミュニティの位置になる」
ツトム「そして、大きな丸で囲われているのが変異種の情報だ。目撃情報から特徴や出没範囲などを大まかに書き表している。」
ツトム「このルートが、今ある情報から算出した、安全と思われる逃走ルートだ」
ツトム「もちろん、何かあった時の為に複数のルートを用意してある」
リヒト「・・・どうしてこんな貴重なものを」
ツトム「何を言っているんだ、私たちはもう仲間だろう」
リヒト「でも、俺が逃げたらライカちゃんのことは・・・」
ツトム「関係ない。君は君のことを最優先に考えればいい」
ツトム「ライカのことは、そうだな・・・頭の隅にでもおいてくれればいい」
リヒト「・・・ツトムさん」
ハナエ「はいはい、難しい話は終わり。全員、席に着いて」
ハナエ「今朝は珍しくマイカが作ってくれたのよ」
マイカ「お、お母さん! あ、あの・・・お口に合えばいいんですけど・・・」
リヒト「おいしそうだ・・・さっそく頂いてもいい?」
マイカ「是非!」
  全員で、マイカちゃんが用意してくれた朝食を食べる。
  彼女の作った玉子サンドは、あまり味がしなかったけれどその分、優しい味がした。
  今日から好物が玉子サンドに変わってしまいそうな、そんな気がした。

〇中規模マンション
ツトム「送っていかなくていいのかい?」
リヒト「ええ、一人で行けますから」
ハナエ「リヒト君なら大丈夫だと分かってるけど・・・くれぐれも、気を付けてね」
マイカ「リヒトさん、あの、これ・・・よかったら・・・」
マイカ「お弁当・・・ちょっと失敗しちゃったんですけど・・・」
リヒト「ありがとう、頂きます」
マイカ「あの、このお弁当箱、お気に入りなんです・・・だ、だから、いつかちゃんと返してくださいね」
リヒト「・・・うん、いつか必ず返します」
リヒト「それじゃあ、お世話になりました。」
リヒト「・・・また、会いましょう」
  後ろは振り向くまいと決め、歩き出した。
  さもなくば足を止めてしまいそうだったから。
リヒト(普通の家族か・・・か・・・)
  自分という存在が酷く薄っぺらいものに思えた。

〇物置のある屋上
サトル「なるほど、朗報だな」
  感染予防薬である『虫くだし』を渡し、ついでに自衛隊のいる保護区域についても教えておく。
サトル「・・・今の装備では突破は難しそうだ。」
リヒト「そうなんだよね」
  どの移動ルートにも、必ず一度はゾンビ密集地帯を通る必要があった。
  ゾンビは動きこそ鈍いが、とにかくタフで、力が強い。装甲を追加した車両でないと車が持たない。
  元となる車両も重要だ。密集地帯を抜けるなら重装化した状態でゾンビを乗り越えなければならない。
  つまり、日本では珍しい大型のオフロードカーが必要になってくるのだ。
サトル「避難用に必要な数は確保してあるが、長距離を移動するのは不安だ。」
  ホームセンターには五十名からなるメンバーがおり、予備も考えたら十台は確保したいところである。
リヒト「ピストン輸送って手もあるけど・・・まあ、戻って来ないよね」
サトル「一度、保護されたあと、危険を冒して戻れる奴は少ないだろう」
サトル「そもそもとして移動自体を嫌うメンバーも出てくるはずだ」
  ホームセンターは良い意味でも悪い意味でも安定している。防衛力は高いし、若い人も多い。
  店舗には自給自足に必要な物資が全て揃っている。
  屋上農園も軌道に乗っているため、このまま救助を待てば・・・と考えるメンバーが居てもおかしくはなかった。
サトル「主要なメンバーには伝えてみるが・・・」
リヒト「くれぐれも移動派と残留派で対立するような事態にはしないでね」

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