初恋はなぜ死んだ

あかい都麻

エピソード1(脚本)

初恋はなぜ死んだ

あかい都麻

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〇田舎道
  ○△県岡本町──
  8月10日午後15時

〇ボロい家の玄関
  高梨キヨ宅

〇古風な和室(小物無し)
沙希「ふう・・・とりあえず片付け終わりっと」
沙希「しかし暑いな・・・おばあちゃん、よく冷房なしでやってこれたな・・・」
  ピンポーン
沙希「はーい!誰だろ・・・」
みのり「沙希~!!久しぶり元気だった!?」
沙希「みのり!?」
みのり「大変だったね、キヨおばあちゃん倒れちゃって・・・しばらく入院だって?」
沙希「うん、私もびっくりして・・・ 東京から新幹線乗って、慌てて病院に駆けつけたんだけどさ」
沙希「病室に入るなり『あんた大学はどうしたんだい!!帰りな!!!!』──って」
沙希「怒鳴られたんだよ。ありえなくない?」
みのり「アハハ!!ひどすぎ!!」
沙希「まあまあ元気そうだったよ。 でも歳が歳だからね・・・」
沙希「ちょうど大学も夏休みだし、しばらくはこっちにいて着替えとか持っていったりしようかなって」
みのり「そっかそっか」
みのり「おばあちゃんもホントは喜んでると思うよ~」
沙希「まあ他に選択肢もないしね・・・うちの父も仕事仕事で来ようともしないし。 自分の親なのにクソだわ」
みのり「あ~あいかわらずなんだね、沙希のお父さん・・・」
みのり「・・・帰ってくるなら連絡くれたらよかったのに」
みのり「6年ぶりじゃん!!こっち戻るの」
沙希「そんなになるかあ・・・」
沙希「なんかでかいコンビニができてたね」
みのり「あーあそこね、2年前くらいにできたんだけどさ~」
  ブロロロロロ・・・キキッ
みのり「おかげでうちの商店の売上が落ちちゃってもう大変でさ~」
  カタンッ・・・
沙希「ん・・・?」
  ブロロロロロ・・・
沙希「郵便か・・・ちょっと見てくるね」
みのり「うん」

〇ボロい家の玄関
沙希(高梨沙希様── 私あて?)
沙希(『暑中お見舞い申し上げます』 ・・・差出人は・・・)
沙希「え!!永瀬くん!?」
みのり「え・・・?」
沙希「みのり、見てよ」
沙希「永瀬くんから暑中見舞い! 懐かしいな~!!」
沙希「永瀬くん、今は何してるんだろ? 最近は連絡とってなくてさ」
沙希「しかしホント、みのりといい・・・ みんな耳が早いなあ、私がこの町に来てからまだ2日しか経ってないのに」
沙希「みのり?」
みのり「違うよ・・・」
みのり「それ・・・永瀬くんからじゃないよ」
沙希「え?」
沙希「でもほら 『うちにも寄ってね 永瀬より』 って──」
みのり「そんなはずない!!」
みのり「それイタズラだよ、 だって・・・」
みのり「永瀬くんは・・・もう・・・」
みのり「半年前に・・・亡くなったんだから・・・」
沙希「え・・・?」

〇実家の居間
  永瀬くんは、中学のときの同級生だ
  私が両親の離婚のゴタゴタで
  父方の祖母のもとに預けられた中2の春──
  みのりとも、永瀬くんとも、
  そのときに出会った
沙希「・・・川で溺れて・・・?」
みのり「警察は、事件性はないって・・・」
沙希「事故・・・ってこと?」
沙希「あんなに慎重だった人が? 用水路に落ちるのが怖いとかいって道の真ん中を歩くようなやつだったじゃない」
沙希「夜中に川に近づくわけないよ」
みのり「・・・」
みのり「・・・遺書も見つからなかったし」
沙希「自殺なんてますますありえない!!」
沙希「『約束』したんだから・・・」
沙希「そうだよね?」
みのり「そうだけどさ・・・」
沙希「納得できないよ・・・」
沙希「だいたい、どうして教えてくれなかったの」
沙希「半年も前なんて・・・」
みのり「ごめん、沙希」
みのり「知らせようか何度も迷ったんだけどさ」
みのり「なんか・・・沙希はもう東京のひとなんだし、こんなこと報せていいのかなって」
沙希「・・・なにそれ」
みのり「う・・・ぐす・・・」
沙希「・・・」
沙希「ごめん・・・みのりもつらかったのに」
みのり「うう・・・わたしもまだ信じられなくて」
みのり「永瀬くんがどうしてって・・・」
沙希「・・・」

〇古い図書室
  永瀬くんとは、図書室でよく会ううちに話すようになった
永瀬「これ面白かったよ 『アクロイド殺し』」
沙希「へー、じゃあ次はそれにしようかな」
  話すのは本に関することばかりだった
  私に関心がない父のことも、出奔した母のことも、厳しい祖母のことも話さなくてよかった
  二人とも、特に推理小説にはまっていた。
  展開を追うのに夢中になれて──
沙希「・・・余計なことを考えなくてすむところがサイコー」
永瀬「わかるかも」
  居心地のいい時間だった
みのり「ねーねー、新作できた!!読んで読んで!!」
  みのりは、なんと自分で推理小説を書いていた
みのり「ミステリ作家に、俺はなる!!」
永瀬「みのりならなれるよ」
永瀬「今回もちょっと・・・犯人がわかりやすいけど・・・」
みのり「ゲッ、まだ3ページしか読んでないのに!?」
沙希「犯人をだいたい2番目に登場させる癖があるよね・・・」
みのり「マジで!?」
永瀬「あはは、次は4番目くらいにしてよ」
  永瀬くんはいつも穏やかだった
  その穏やかさに、いつも救われていた
  ──大切な人だった
  初恋、だったのかもしれない・・・
  そうだ・・・それに彼は
  『約束』してくれた・・・
  そんな人が自殺なんてするはずがない!!

〇実家の居間
沙希「やっぱり・・・このままハイそうですかなんて言えないよ」
沙希「事故も・・・自殺もありえないって思っちゃう」
沙希「少なくとも暑中見舞いのハガキ・・・この差出人は突き止めたい」
みのり「イタズラだよきっと」
みのり「永瀬くんと仲良かったの覚えてる誰かがさ・・・」
沙希「そうだとしても悪趣味すぎ!! 絶対に許せない・・・」
みのり「・・・わかった」
みのり「わたしも協力する!!」
沙希「え・・・でもみのり、忙しいでしょ」
沙希「そっちも短大は夏休みだろうけど、ご実家のお店もあるんだし」
みのり「そっちはなんとかやりくりするよ」
みのり「わたしだって、こんな・・・永瀬くんの名前を使ったイタズラ許せない」
沙希「みのり・・・」
みのり「それに・・・わたしも、わたしなりに考えてたの・・・永瀬くんがどうして死ななきゃいけなかったのか」
みのり「一緒に調べてみよう」
みのり「ハガキのことも・・・永瀬くんのことも」
沙希「ありがとう、みのり」
沙希「正直、よそものの私だけじゃ不安だったんだけど・・・みのりが一緒だと心強いよ」
沙希「未来のミステリ作家の頭脳も借りれるしね」
みのり「うわ、プレッシャーだな~」
沙希「まずは・・・」
沙希「永瀬くんのご実家に行きたいと思う」
  こうして私たちの探偵もどきの日々が始まった
  ただ真実を知りたかった
  ──彼の死をきちんと受け止められなかっただけだったのかもしれないけど。
  私たちの探偵ごっこが、どんな結末へ行き着くのか、
  この時はまだ知るよしもなかった・・・

コメント

  • 沙希あての謎の暑中見舞いや、永瀬くんの死の真相など、次から次へと気になることばかりの展開で次話以降も読みたくなって仕方ないです。

  • 続きがとても気になります!
    誰がなんのためにハガキを送ったのだろう…。
    こんなことをして得する人物…まだまだ続きを読まないとわからないことだらけですね!

  • もしかしてもう伏線はまいてあったのかもしれませんが、いまのところまったく気づきませんでした。初恋の人が亡くなっていたなんて、悲しすぎる。せめて彼女が真実にたどり着けますように。続きが読みたいです。

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