ゾンビ映画の中の人

基本、二回攻撃

ゾンビのルーティン(脚本)

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〇ホームセンター
  コミュニティ ホームセンター
  ホームセンターに陣取ったこのコミュニティでは、出入り口をシャッターで閉ざし、更に内側に車を停めてバリケードにしている。
  人の匂いに誘われて常にゾンビに集られているのだが、頑丈なバリケードを超えられず、恨めしそうに唸り声をあげるばかりだ。
  ついでに、俺が定期的に間引きしているので数もさほど多くならない。
ゾンビ「ぐあ・・・」
  一匹の首をねじ切り、物音に反応して集まって来たゾンビどもを竹槍でまとめて串刺しにする。
リヒト「よいしょっと!」
  竹槍を引き倒し倒し、ゾンビ共を転ばせる。
  後は頭を踏みつぶしていくだけだ。
  ゾンビは首を切り離されるか、心臓または脳を傷つけられると死亡する。
  逆に言うと、それ以外では死なない。手足を落としても逆に生えてくるくらい往生際の悪い生物だ。
リヒト「やっぱ、まとめて動けなくするのが一番だな」
リヒト「・・・小さいな」
  心臓に張り付いた小石を取り出す。俺はこれを核と呼んでいる。
  核にはゾンビエネルギー的なものが詰まっているらしく、食べると少しだけ腹が満たされる。
  ゾンビ映画でよくある共喰いってやつだ。
  いや、俺以外の個体でやっているのを見たことないから、きっと変異種ならではの行動なのだろう。
  手に入れた核をウエストポーチに乱雑に仕舞うと、俺は配管を伝って屋上に昇った。

〇物置のある屋上
リヒト「や、ただいまー」
サトル「おかえり、リヒト」
サツキ「遅えんだよ、リヒト! 心配すんだろ!」
リヒト「ごめんごめん。困窮したコミュニティが出てきたからお世話してたんだよ」
サツキ「だからって一週間も連絡よこさねえで・・・あたしがどんな思いで──」
サトル「サツキ、それは後だ」
サトル「リヒト、そのコミュニティについて詳しく教えてくれるか?」
リヒト「うん、駅前にコンビニや飲食店が入っていた雑居ビルがあってね」
リヒト「その居酒屋に十人くらいのコミュニティを作ってたんだけど、ビル内の食料を食べ尽くしちゃってね」
リヒト「で、食料調達とその方法なんかを伝授してきたんだ」
サトル「・・・なるほどな、それで構成は?」
リヒト「今は若い女性がリーダーやってて、残りも女の子ばっか。戦力にはならないかな」
サツキ「女か・・・リヒト、こっちに連れて来れるか?」
リヒト「うーん・・・無理をすれば」
サトル「それならしなくていい」
サツキ「サトル! アンタ、女だから見捨てようって──」
サトル「違う。リヒトに無理させて、死んでしまったらどうする」
サツキ「──ッ!?」
サツキ「ごめん・・・あたしが悪かった・・・女子供って聞いて頭にのぼっちまった」
サトル「・・・頭にのぼるのは血だ。頭によじ登ってどうする」
サツキ「こ、言葉のアヤだよ!」
サツキ「せっかく心配してやったのに、お前なんかもう知らねえし! ばーかばーか!」
  走り去るサツキを二人で見送る。
サトル「すまんな」
リヒト「何が? サツキ、いい子じゃないか。 あ、そうそう!」
リヒト「これ、欲しがっていた農業系の書籍」
サトル「ありがとう、サツキに渡してくれるか? 今はあいつが農業大臣だ」
リヒト「オッケー。で、作物の状況は?」
サトル「二十日大根は収穫できた。他の作物も順調だ。あと十人くらいなら受け入れが出来る」
リヒト「流石、ホームセンター。種も土も道具もあるし、もう一年くらいなら余裕で生き伸びられそうだね」
サトル「その前に救助が来て欲しいが・・・リヒト、しばらくは休めるんだろ?」
リヒト「いや、またすぐ出るよ。農園も居酒屋も心配だし、他のコミュニティも探したいし」
サトル「・・・なあ、リヒト。サツキはずっと、お前を待っていた。最近は、心配で夜も眠れなかったみたいだ」
リヒト「それを俺に言って、サトルはどうして欲しいの?」
サトル「出来れば、応えてやって欲しい」
リヒト「・・・サトルは、それでいいの?」
サトル「・・・あいつの幸せが一番だ」
  サトルは深く頭を下げると、静かに去っていった。
リヒト「ゾンビなんかに自分の女を任せるなよ・・・」
  レンガで囲われた屋上庭園には、様々な作物が植えられていた。
  何本もの畝の中央に、サツキがジョウロを持って立っていた。
サツキ「ふふ、今日も元気だな、お前たちは」
サツキ「・・・なあ、聞いてくれよ、リヒトのやつ、ようやく帰って来たんだ」
サツキ「無事でよかったよ・・・本当に・・・」
サツキ「だから、お前たち、早く大きくなるんだぞ」
サツキ「リヒトに、あたしの野菜を食べてもらいたいんだ・・・頼むぜ、みんな・・・」
リヒト「・・・サツキ」
サツキ「・・・リヒト、てめぇ、いつからいやがった!」
リヒト「今日も元気だな、の下りから」
サツキ「い、一部始終、全部聞かれてるじゃねえか・・・」
サツキ「こ、これは違うぞ! 植物も声をかけられると喜びっていうから試してただけだかんな!」
サツキ「か、勘違いすんなよな!」
リヒト「大丈夫だよ。実はサツキがお花に話しかけちゃう系女子だなんて誰にも言わないから」
サツキ「ちょ、おまっ────」
リヒト「ところで、これ。頼まれてたお花の図鑑」
サツキ「わ、やった! この図鑑、前から欲しかったんだー」
サツキ「って、なにやらせてんじゃごらぁ!」
リヒト「大丈夫だよ、誰にも・・・言わないから」
サツキ「顔背けながら言っても説得力ねえからな!? クソ、いつかぶん殴ってやる・・・」
リヒト「それは困るね。早めに退散するよ・・・じゃあ、またね」
サツキ「ま、待てよ!」
サツキ「お前、また他のコミュニティに行くのか!?」
リヒト「うん、ちょっと状況聞いたらすぐ出ようと思う。欲しい物があればリストにして渡して。持ってくるから」
サツキ「そうじゃねえよ! もっとゆっくりしてけばいいじゃねえか!」
サツキ「大変だろ、他のコミュニティの世話なんて!」
リヒト「まあね、ココほど上手くいってる場所はないかな」
リヒト「でもさ、今にも崩壊しそうなコミュニティなんて放って置けないでしょ。勿体ない」
サツキ「・・・勿体ない?」
リヒト「あ──いや、せっかく生き残ってるのに、って意味で」
サツキ「・・・死なれたりしたら目覚めが悪いってのは分かるけどさ」
サツキ「それでリヒトが倒れたら意味ねえじゃねえか。お前、全然、休んでねえじゃん」
サツキ「世話になってるアタシ等は休んでんのに、お前ばっか大変な思いして・・・そんなの不公平じゃねえか」
リヒト「・・・ありがとう、心配してくれるんだ?」
サツキ「か、からかうなよ、真剣な話してんだから」
リヒト「ごめんごめん、サツキが可愛いからさ」
サツキ「──ッ!?」
サツキ「か、可愛いとかいうな!!」
リヒト「冗談だから。とりあえず俺の心配はしないでいい」
リヒト「無理はしてないし、こっちも目的かあってやってることだから」
サツキ「わかったよ。もう言わねえよ・・・」
リヒト「うん・・・じゃ、俺はこれで・・・」
サツキ「あのさ、リヒト・・・本、ありがとうな・・・大変だっただろ、本当に助かった・・・」
リヒト「どういたしまして、じゃあね」
  手を振って、屋内に向かう。
リヒト(居心地、いいなぁ・・・ココ・・・)

〇山中の坂道
  コミュニティ 樽美山農場
  俺たちが住む樽美市は風光明媚な場所だ。駅から少し離れると山や森がある。
  この辺は純粋にゾンビが少ない。
  自然豊かな場所だから人の匂いも消えるらしく、ゾンビたちも集まらない。
  そんな数少ない個体も──
ゾンビ「ぎい、いぃぃぃ──!!」
  コミュニティまでたどり着けない。
リヒト「憐れだな・・・」
  ゾンビには知性がない。匂いや音に反応して寄ってくる。
  だから、風鈴みたいな物を作り、落とし穴でも掘ってやれば簡単に罠にかかってしまう。
リヒト「腹、減ったよな? 今、楽にしてやるから」
  ゾンビを殺し、落とし穴から引っ張り上げて核を抜き取る。
  獣に食い荒らされても可哀そうだから、穴を掘って埋めてやる。
  俺は、農園の周囲にある罠を全て回り、ゾンビたちを処理していった。

〇廃工場
  樽美山の頂上近くには古びた農作業場があって、それがこのコミュニティの拠点になっている。
  周辺には芋畑やミカン畑が広がっていて、一年中、何かしらの作物が採れるようになっていた。
リヒト「園長、ハルカ先生。ただいま戻りました」

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