読切(脚本)
〇大広間
ざわざわ、ざわざわ・・・。
司会者「はーい、それでは前世が虫だった皆さん、これからパーティーを始めたいと思いまーす!」
司会者「あなた方は虫から人に転生してもう25年は過ぎていますねー。きっと良い人間の大人になったことでしょう!」
司会者「という訳で、虫時代を懐かしむ同窓会というか、もういい年だから相手を見つけちゃおうぜ的な場を用意しましたー!」
司会者「どうぞ本日は大いにお楽しみくださいませーっ!私もイケメン男見つけるぞーっ!」
ざわざわ、ざわざわ・・・。
「・・・はー、なんだか緊張するなあ」
トンボ山田「こういうパーティーに参加するの初めてだから、どう振る舞えばいいのかわからないな・・・」
トンボ山田「服装もどうしたらいいか悩んで、結局こんな派手なスーツにしちゃったけど、もしかして俺浮いてる・・・?」
トンボ山田「みんなすごいラフな格好なんだけど・・・」
トンボ山田「うう・・・場違いな自分がなんだか恥ずかしくなってきた・・・早く帰りたい・・・」
「おーい!トンボ!お前トンボだろ!?」
ダンゴムシ池田「ひっさしぶりだなあ!オレだよ、オレオレ!わかる!?」
トンボ山田「えっ・・・・・・まさか・・・」
トンボ山田「顔出しのオレオレ詐欺師・・・?全くドジな詐欺師もいたもんだなあ」
ダンゴムシ池田「ちがーーーう!オレだよ、ダンゴムシだよ!今は「池田」って名前があるけどな!」
トンボ山田「だ、ダンゴムシ!?」
トンボ山田「久しぶりだなあ!虫時代と変わってないみたいで安心したぜ!」
ダンゴムシ池田「それはこっちのセリフだよ!何でお前スーツ着てるんだよ!」
トンボ山田「だってパーティーって言うからさ〜。普通ちゃんとした服装で行こうって思うじゃん?」
ダンゴムシ池田「そんなお堅いパーティーじゃないし、募集HPには「軽装可」って書いてあったじゃねえか」
トンボ山田「「軽装可」なら「正装可」とも言えなくはないだろ?」
ダンゴムシ池田「はー。相変わらずお堅いねえ。見た目に違わず」
ダンゴムシ池田「いや、そのメガネだけがぶっとんでるけども」
トンボ山田「トンボだったからな。体のどこかに羽がないと落ち着かないのさ」
トンボ山田「現にお前もダンゴムシみたいな服着てるだろ」
ダンゴムシ池田「これはたまたまだ」
ダンゴムシ池田「ところでトンボ、お前人間に転生した後、虫から転生した奴に会ったか?」
トンボ山田「ああ、わずかだが会ったよ。カマキリだった奴とか、蜂だった奴とか」
ダンゴムシ池田「そうなのか?オレは全然会わなかったぞ。やっぱり虫から転生した奴は少なかったのかなーって思ってたけど」
ダンゴムシ池田「でも今日のパーティーに来たら、虫から転生した奴だけでこんなにいる。ちょっと安心したぜ」
トンボ山田「同じ虫同士だと落ち着くよな。俺も友達だったお前に会えて良かったよ」
ダンゴムシ池田「そうだな。あ、お前の連絡先教えろよ。また会いたいし」
トンボ山田「それは遠慮しとく」
ダンゴムシ池田「なんでだよ!」
「あれ?そこにいるのはもしかして・・・。トンボくんに、ダンゴムシくん?」
トンボ山田「フォウ!?そ、その甘い声はまさか・・・」
ダンゴムシ池田「う、嘘だろ・・・?あのオレたちにとってアイドル的存在だった・・・?」
モルフォ蝶嶋「もう、アイドルだなんてやめてよ恥ずかしい!」
トンボ山田「うおおおおおおおうっ!やっぱりモルフォちゃんだぜええええええええ!」
ダンゴムシ池田「いやっふうううううううう!オレ人間に生まれ変わって良かったああああ!こんなにかわいいモルフォちゃんが見れるなんてええっ!」
モルフォ蝶嶋「もー、二人とも大袈裟だよー。あ、あと私、人間だと蝶嶋って名前だから、よろしくね」
ダンゴムシ池田「あいよ!ちなみにおいらは池田だってばよ!」
トンボ山田「かしこまり。拙者は山田でござんす!」
モルフォ蝶嶋「ふ、二人とも、相変わらずだねぇ〜」
ダンゴムシ池田「そりゃあ天下のモルフォちゃんに会えたら、テンションも上がるってもんよ」
トンボ山田「そうそう。埃まみれの家に現れた家事代行サービスみたいな?」
モルフォ蝶嶋「特殊な例え!掃除くらいしなさいよ!」
トンボ山田「ところで、モルフォちゃんは今何の仕事やってるの?アイドル?」
モルフォ蝶嶋「まさか・・・。Youtuberだよ」
ダンゴムシ池田「えーっ!そうだったの!?今時の人じゃん!」
モルフォ蝶嶋「この前、チャンネル登録者数100万人超えたんだ!」
トンボ山田「さ、さすが・・・。ゆーちゅーばー、か。あとで検索してみよう」
ダンゴムシ池田「モルフォちゃんがやってるなら、オレもyoutube始めようかなあ。モルフォちゃん、その時はオレとコラボしような」
モルフォ蝶嶋「それは遠慮しとく」
ダンゴムシ池田「なんでだよ!」
フン・・・。お前ら、くだらん話をしているようだな・・・。
トンボ山田「な、なんだこの声は・・・そしてこのBGMは・・・」
よもや俺のことを忘れた訳でもあるまい。虫界の中でも最強と呼ばれるこの俺をな・・・。
ダンゴムシ池田「う、嘘だろ、まさか・・・」
モルフォ蝶嶋「あ、あいつも転生したって言うの・・・?あの黒光りの身体を持った・・・」
フッ。そうだ、久しぶり、だな・・・。
アランG「俺はアラン・・・。またの名をG・・・」
トンボ山田「言うなあああああああああ!お前の真の名前はタブーだから!口に出したら終わりなやつだから!」
アランG「何だ、俺に向かってその口の聞き方は・・・」
アランG「俺が前世で引っかかったホイホイにお前もはめさせるぞ・・・」
トンボ山田(ホイホイに引っかかったんだ・・・哀れなやつ・・・)
モルフォ蝶嶋「あ、アランくんはどうしてここに来たの?会いたい人でもいたの?」
アランG「・・・フッ・・・。知れたこと・・・」
アランG「将来の伴侶を見つけるため・・・それだけだ」
トンボ山田(同じ虫同士じゃあ、お前と結婚したい奴なんてなおさら見つけられないだろ・・・)
モルフォ蝶嶋(ましてやこのビジュアル・・・。キュンとする以前に威圧感でみんな逃げ出しちゃうよ・・・)
アランG「・・・モルフォ殿」
モルフォ蝶嶋「・・・あっ、はい!」
アランG「俺の・・・伴侶になってくれぬか」
モルフォ蝶嶋「えええええええええええっ!!」
トンボ山田「いや流石にそのお願いは無謀すぎるー!!」
ダンゴムシ池田「ていうかこいつってこんなキャラだったっけ?」
トンボ山田「い、いや、虫時代の時は正直、話したことなかったからよくわかんない・・・」
モルフォ蝶嶋「確かに・・・。とにかく近寄り難くて関わったことなかったから、「威圧感のある虫」って印象だけだったな」
アランG「どうなのだ、モルフォ殿」
アランG「返事を聞かせてくれぬか?」
モルフォ蝶嶋「あ・・・えーーーーーっと・・・・・・・・・・・・・・・」
モルフォ蝶嶋「普通に無理です・・・ハイ」
アランG「な・・・なんということだ・・・。一体俺のどこがダメだというのだ・・・」
トンボ山田「・・・お前を取り巻くもの全部がダメだと思うけどな」
アランG「トンボ・・・後でお前の家にホイホイ100個送ってやるからな・・・覚悟しとけよ・・・」
トンボ山田「なんでだよ!ホイホイに囚われすぎだろお前!」
アランG「くっ・・・悔しい・・・が、」
アランG「いつまでも拘泥していては男が廃る・・・ここで身を引くべき・・・か」
ダンゴムシ池田「な、なんだ・・?BGMが急にしんみりし出したぞ」
トンボ山田「いやこんなシーンBGMで盛り上げなくていいよ!無駄にBGM使ってんな」
アランG「モルフォ殿・・・。いい伴侶を見つけるんだぞ。どうか幸せに・・・な」
アランG「あの時、俺を振って良かった、って思えるような相手が見つかれば、俺はそれでもう満足だ・・・」
トンボ山田「誰と付き合ってもお前を振って良かったとは思うだろうけどな」
アランG「・・・トンボ、お前の通勤経路にホイホイ設置させるようにホイホイ製作会社に伝えておくからな」
トンボ山田「ホイホイネタしつこいな!」
アランG「さて・・・それでは俺はそろそろ去ろう」
アランG「いい男は、去り際は笑顔でいるもんだ」
アランG「・・・さらばだ、モルフォ殿」
ダンゴムシ池田「・・・行っちまったな」
トンボ山田「ああ。・・・・・・他の女性に求婚してるな」
モルフォ蝶嶋「なによ!ただの女たらしじゃない!気分が悪いわ!」
トンボ山田「そうだな。・・・じゃあ俺と付き合うか」
モルフォ蝶嶋「お断りよ!」
ダンゴムシ池田「じゃあオレとは?」
モルフォ蝶嶋「論外よ!」
前世の記憶を持ってるのですね!
虫…もきっと感情があって、きっと虫の時代も仲良しだったのかなぁ?と思うとなんだかほっこりしました!
前世が虫の街コンって発想がまたすごいですね!
でも、お互い虫の頃を知ってると、成立するカップルが少なそうな気が。
Gさんもがんばって伴侶を探してください!
読みながらある部分にリアリティーを感じました。転生という事で、私は前世何ものだったんだろう? フィーリングのすごく会う人ってその世界で同じ分類だったのかなあ?とか。