プロローグ(脚本)
〇繁華な通り
リヒト「く、来るな、うぁああぁぁぁ──!!!!」
〇血しぶき
────痛いイタイいたい────
生きたまま喰われた。
────痛いイタイいたい────
糞に集るハエみたいに次から次へとやってきて、俺の体に食らいついてくる。
────痛いイタイいたい────
ふざけるな──
────痛いイタイいたい────
死んでたまるか──
────喰ってやる────
「ハハ──アガッ!」
喰われながら食った。
────痛いイタイいたい────
殺されながら殺した。
──ウマイ痛イ──イタイ美味イ──
喰って殺して、喰われて死んで──
──ウマイ痛イ──イタイ美味イ──
そんなことを何回も何回も繰り返して――
────ウマイウマイウマイ────
〇大衆居酒屋
リヒト「ただいまー」
ミヤマ「おお、リヒト君。帰ってきたか!」
エハラ「遅かったじゃない、心配したのよ」
リヒト「囲まれちまって、逃げ出すのに苦労したんですよ」
リヒト「排管飛び移って屋根に登って、そのまま屋根伝いに──」
ミヤマ「そ、それよりも、今日の成果はどうだったのかね!」
リヒト「ああ、食料ですね」
コンビニから持って来たパンを渡す。
エハラ「・・・これ・・・だけ?」
リヒト「ええ、配管に飛び移った際に、ゾンビにリュックを掴まれたもので」
リヒト「つまり、ポケットの中に入ってた物しかありません」
ミヤマ「そんな・・・これっぽっちでは困る・・・」
ミヤマ「リヒト君、もう一度、食料調達に行ってはくれないかね・・・」
リヒト「無理っすね。疲れたんで。」
エハラ「し、仕方ありませんよ、ミヤマさん。リヒト君だって頑張ってくれているんです・・・僅かでも分け合って・・・」
リヒト「それじゃ自分、休みますんで」
割り当てられた部屋に向かいながら、ポケットに入っていた菓子を取り出す。
エハラ「ちょっと、リヒト君!?」
リヒト「なんですか?」
ミヤマ「あるんじゃないか食料!?」
リヒト「ん? ああ、これは自分用です」
エハラ「そんな、みんな、お腹が空いているのに!」
リヒト「俺だって腹減ってますよ。それに俺が調達に行ってる時に、空腹で動けなくなったらどうするんですか」
ミヤマ「それならせめて一言あってもいいだろう? き、君には協調性ってものはないのかね!?」
リヒト「・・・俺一人に食料調達を押し付けて、命からがら取ってきた物を譲ったら──」
リヒト「「これっぽっち」とか、「仕方ない」なんて言われて、感謝の言葉も無ければ、労われることもない」
リヒト「あまつさえ、もう一度行け? それで体力温存用の食料まで寄越せ?」
リヒト「それで明日になったら、また食い物取って来いってゾンビの群れの中に放り出すんですよね?」
リヒト「協調性ってすごいですね」
ミヤマ「それは・・・す、すまなかった・・・」
エハラ「ご、ごめんなさい、私たちも気が立っていて・・・」
リヒト「いえ、そうやって本性を出してくれたほうが、逆に見切りやすくなって助かります・・・」
ミヤマ「ま、待ってくれ、リヒト君!」
リヒト「十人分の食料運ぶのもいい加減、限界だったんでちょうどいいです」
エハラ「お、お願い、見捨てないで! あなたに去られたら、このコミュニティは全滅よ!」
リヒト「というか、この人数。さすがに俺でも、支えきれませんよ・・・」
リヒト「あ、そうだ。明日から二人も、食料調達に付き合ってください」
ミヤマ「そ、それは・・・」
エハラ「私たちにはコミュニティのみんなを・・・」
リヒト「そう、守る義務がある。なら、最も重要な食料調達を俺一人に任せるのが間違っている」
リヒト「万一、俺が事故で死んだらどうします? 調達場所は? 移動ルートは? 情報展開のためにも一緒に調達に行きましょう」
エハラ「け、けど・・・」
リヒト「別に、危ない橋を渡れってんじゃない。近くに待機してもらって荷物持ちをしてくれればいいんです」
リヒト「正直、重い荷物を持って逃げ続けるのが辛いんです。けど、軽くしたら何往復もしなくちゃならない」
リヒト「二人とも、本当に生き残りたいなら、自活する意思をもってください」
リヒト「最低限のリスクさえ背負えないというなら、俺は本当にココを去ります」
リヒト「やるかどうか、明日中に決めておいて下さい」
〇ビルの裏
リヒト「この通りを出たらコンビニです。なので、このビルの二階で待機しててください。」
リヒト「俺がセーフハウスにしてるところです。入り口は反対側にしかなくて、奥まった場所なのでゾンビたちも来られません」
ミヤマ「すごいな、さすがはリヒト君だ」
リヒト「ゾンビに追われていた場合、リュックだけ投げ込みます。ゾンビが消えたら、来た道を戻ってください」
ミヤマ「わかった」
リヒト「じゃ、登ってください」
ミヤマ「あー、えっと・・・どうやって・・・」
リヒト「・・・配管、あるでしょ?」
ミヤマ「・・・す、すまないが、手伝ってもらえないだろうか」
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