リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

第一話 燃える悪魔(脚本)

リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

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〇学校脇の道
ヒクイ「おい、ユリナ! 学校なんて、ついて来てもしょうがないだろ。 天使なんだから、目立つ行動は控えろよ!」
ユリナ「大丈夫! 人間に擬態しているから、悪魔にはバレないと思う。 居どころがバレるようなヘマは、しないわ」
ヒクイ「けど、その天界の監獄からこの町に逃げだしてきた悪魔ってのは、二十匹近くもいるんだろ?」
ヒクイ「油断していると、足もとをすくわれるぞ」
ユリナ「わたしを誰だと思っているの? 天界の悪魔監獄の警備主任で、中天使なのよ? そこそこ偉いんだからね」
ヒクイ「ふーん」
ユリナ「何よ、その信用なさそうな返事は? そりゃ、まともなところは見せられていない気はするけど・・・・・・」
ヒクイ「ちげぇよ。天界に興味がないだけだ。 どうせ行くこともないだろうし、ただの人間の俺には関係ねぇよ」
ユリナ「じゃあ、この町の悪魔を全て捕まえて、無事に天界へ帰れるようになったら、ヒクイを招待してあげる」
ヒクイ「・・・・・・」
ユリナ「何?」
ヒクイ「・・・・・・いや、俺に天界なんて似合わねぇよ」
女子高校生「見て、不良の鳥羽ヒクイよ! 女の子にカツアゲでもしているのかしら?」
男子高校生「しっ! 近づくなよ。目も合わせるな!」
男子高校生「隣り町の不良どもを一人で全滅させたんだろ? 人間じゃねぇよ」
ユリナ「ねぇ、周りから避けられていると思うのは、気のせい?」
ヒクイ「放っておけ。嫌なら帰れ」
ユリナ「嫌ってわけではないけど・・・・・・。 大丈夫? 友だちとか、ちゃんといる?」
ヒクイ「余計なお世話だ!」
ユリナ「ああ、いないのね」
ヒクイ「うるせぇ! 家から追いだすぞ」
ユリナ「ごめん、ごめん。もう余計なことはいわないから」
ユリナ「ちゃんと感謝しているよ? 人間なのに、わたしたち天使に協力してくれていること」
ユリナ(ヒクイは、見た目や言葉づかいは不良みたいで怖いけど、本当は優しい)
ユリナ(でも、周りの人間たちには理解されていないようなのが、ちょっと悔しいかな・・・・・・)
ヨモギ(恋っすか、先輩?)
ユリナ「はぁ!? 何でそうなるの!?」
ヒクイ「急にどうした!?」
ユリナ「ご、ごめん。何でもない!」
ユリナ(アルテミシア、急に何をいいだすの!? というか、思念波で人の思考に割りこんでくるな!)
ヨモギ(人間体のときは、ヨモギっすよ! 天使が人間に恋をするなんて、昔からよくあることじゃないっすか。 気にすることないっすよ)
ユリナ(いや、堕天する原因になることもあるんだから、少しは気にしろ・・・・・・)
ヨモギ(それより先輩、もともとの口調と仕事モードの口調とが混ざっているっすよ? 動揺しているんすか?)
ユリナ(う、うるさい! そもそも、わたしたちは仕事で来ているのよ?)
ユリナ(天界から逃げだした悪魔を捕まえなくちゃいけないんだから! 色恋沙汰なんかしている場合じゃ──)
ヒクイ「おい、何か騒がしくないか?」
ユリナ「え?」

〇大きな木のある校舎
下級悪魔「この世の全てを燃やしつくしてやるぜ!」
男子高校生「何だ、あいつ!?」
男子高校生「うわぁ、逃げろ!」

〇学校脇の道
ユリナ「うわぁ、いっていることがモロに三下っぽい悪魔がいる・・・・・・」
ヨモギ「下級みたいだし、力は大したことないっすね。ただ厄介なのが・・・・・・」
ユリナ「うん、殻が人間なことね」
ヒクイ「殻?」
ユリナ「天界と魔界は霊体の世界だから、悪魔はもともと霊体なの。だけど、人間界でむき出しの霊体は傷つきやすい」
ユリナ「上級悪魔は自分で肉体をつくって守れるけれど、下級悪魔にそんな力はない。 だから、人間にとり憑くの」
ヨモギ「力が弱いくせに人間を盾にしてくるから、厄介なんすよ」
ユリナ「あの人間、大丈夫かな。あんなに燃えて・・・・・・。早めに助けないと」
ヒクイ「けど、お前が戦ったら、天使だってバレるだろ。部下の天使を呼ぶのか?」
ユリナ「ううん、そんな時間はない」
ユリナ「大丈夫、一時的に肉体をもとの中天使リリウムの姿にさせるから。終わったらこの姿に戻れば、正体は隠せるでしょ」
ヨモギ「じゃあ、ウチも──」
ユリナ「ヨモギはその姿のまま、周囲の人間を避難させろ。大体、お前はもとの姿とほとんど見た目を変えていないだろう」
ヨモギ「ちぇっ。 仕事モードの先輩は頭がカタイっす」
ユリナ「ヒクイも、ヨモギに手を貸してやってくれ」
ヒクイ「俺、お前の部下じゃねぇんだけど?」
ヒクイ「・・・・・・まぁいいや、手伝ってやる。 ユリナ、気をつけろよ」
ユリナ「・・・・・・うん。 前みたいなヘマは、もうしない」

〇赤いバラ

〇大きな木のある校舎
リリウム「そこまでだ、悪魔!」
下級悪魔「誰だ!?」
リリウム「わたしは中天使リリウム。 お前を捕まえにきた」
下級悪魔「おっと! オレに手を出せば、どうなるかわかっているのか? この人間は燃えてなくなるぞ?」
リリウム「わたしに脅しが効くとでも? 燃やす間もなく、封印してやる。その人間には悪いが、殻ごとな」
下級悪魔(くっ。どうする? 霊体になって逃げるか?)
下級悪魔「・・・・・・いや、ハッタリだ! 天使が人間に手を出せるわけがない!」
リリウム(まずいな・・・・・・。 うまく人間から離したいのに・・・・・・)
リリウム「ん?」
下級悪魔「うわぁ! 何だ!?」
リリウム(急に、水が悪魔の上に降ってきた? いや、これはただの水ではない・・・・・・)
下級悪魔「くそ、ヒリヒリする! 聖水か!? こりゃたまらん!」
リリウム(悪魔が人間から離れた! 今だ!!)
リリウム「はっ!」
下級悪魔「うわぁー」
リリウム「捕縛完了!」
ヒクイ「やったか?」
リリウム「ヒクイが、聖水を上からぶち撒けてくれたの?」
ヒクイ「ああ、ヨモギに大量につくらせた」
リリウム「ありがとう。助かった」
リリウム「でも、あまり危険なことは────」
ヒクイ「俺はお前の部下じゃねぇって、いっただろ? 好きにやらせてもらうぞ」
ヒクイ「お前との約束があるからな。 俺は俺のやり方で、ユリナが失敗しないように手は尽くしてやる」
リリウム「ヒクイ・・・・・・」
ヒクイ「これが悪魔が封印された石か」
  ヒクイが石を拾いあげた。
ヒクイ「だからいっただろ? 人の縄張りに手を出すなって」
ヒクイ「勝てるわけねぇんだよ。 俺の正体にも気づけないくせに・・・・・・」
リリウム「何かいった?」
ヒクイ「何でもねぇ。 天界に戻るまで、大事に保管しておけよ。 ほら」
リリウム「うん。イリスの分も、頑張らないと。 この町の悪魔を捕まえて、裏切りものも見つけて、全部終わらせるんだ」
ヒクイ「ああ、応援しているぞ」

次のエピソード:第二話 逃げた悪魔

コメント

  • 面白い!!キャラクターが魅力的でテンポよく読めました!今回は恋愛ジャンル...!?あれ、なんだったっけ...!?今後の展開が気になります〜!!

  • ギャップのある(?)ユリナの性格がとても楽しいです。まだ明らかになっていない部分もいろいろありそうなので、続きが気になります。

  • 違う世界の二人ですが、すごく息が合ってていいですね!
    少なからず好意を持っているように見えて、ちょっとにまっとしました。笑

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