エピソード1(脚本)
〇駅前広場
リデル「ねえ理沙、」
リデル「僕にとって、 君と一緒にいられるこの瞬間が 全てだよ・・・」
理沙(あの冬、 私はあなたに)
理沙(全力で)
理沙(恋をした・・・)
〇空
理沙(目と目が合った瞬間に 恋に落ちた)
〇店の入口
理沙「ねえ、 だから・・・」
理沙「私がリデルに感じている違和感って そんな単純なものじゃないのよ・・・」
理沙「例えば、 目や髪の色が違うとか、 そんな簡単な事じゃ無い」
理沙「こんな季節にカフェの屋外で 冷たい飲み物を飲んでる事だって 普通じゃ無いかもしれないけど」
理沙「私にとっては小さな事だし どうでもいいわ」
理沙「どうしてあなたは私に 過去の事は 何一つ話してくれないの?」
理沙がリデルの手に触れようとする
理沙「そうやって いつも私に触れるのを避けるよね?」
理沙「気づいていないとでも思ってる?」
理沙「責めてるわけじゃないの。 あなたが何かを抱えているのに気づいてる」
理沙「だけど、 私はそんなに頼りない? あなたの支えにはなれないの?」
リデル「・・・」
リデル「ごめん・・・」
リデル「どうしても、 話せない事なんだ・・・」
リデル「でも、 これだけは信じて欲しい」
リデル「愛してるからこそ、 話せないこともあるんだって・・・」
〇空
理沙(私の中に 言いようの無いほどの)
理沙(愛しさと切なさが 降り積もる・・・)
〇空
リデル「理沙、 もうすぐ春だね・・・」
〇店の入口
リデル「今日は、 君に話さなきゃならないことがあるんだ」
理沙「なに?」
リデル「ごめん、 全部僕が悪いね 最初から分かっていた事なんだ・・・」
リデル「君とはもう お別れだ・・・」
理沙「どういう事!?」
〇空
リデル「荒唐無稽な話だと君は感じるかもしれない。 信じるも信じないも君次第だよ」
リデル「でも僕は君に話さずにはいられないんだ」
〇店の入口
リデル「僕の話を最後まで黙って聞いてくれないかな?」
リデル「話さないと、僕自身と、 それから君への想いを、全て否定する事になってしまうから・・・」
理沙「・・・・・・」
理沙「分かったわ、 話して・・・」
リデル「ありがとう・・・」
リデル「君が僕に他の人との違いを感じ始めているのも当然の事なんだ」
リデル「僕は、 この星の人間では無いから それも当然だと思う」
理沙「・・・!?」
〇カラフルな宇宙空間
リデル「僕の星では、決められた唯一の相手と一緒になるのが当たり前の事なんだ」
リデル「そうだね、この星の『普通』とは全く違う価値観だと思う」
リデル「自分で気づいて相手に出会える人もたくさんいる」
リデル「でもなかなか巡り会えない場合は、 この星で言う『占い師』に見てもらうんだ」
〇街の全景
リデル「その人が言う場所や時間に行くと大抵、その唯一の人に会える」
リデル「中には年齢がとても離れていたり、同性だったり、 今世では出会えない二人の場合もあるけど」
〇店の入口
リデル「僕の『唯一の相手』は、 遠い星にいる」
リデル「君だと知ったんだ」
リデル「これはとても稀なケースだから」
リデル「こういう時には、気づいた方が、 この場合僕が どうするか選ぶ事が出来る」
リデル「君と出会うか、 出会わないか・・・」
リデル「出会わずに、例えば他のパートナーを選ぶ事だって、もちろん出来るんだ」
リデル「でも、僕は どうしても君に会いたかったんだ」
〇幻想空間
リデル「出会った瞬間に、君だと分かったよ」
リデル「胸が震えるくらいに」
〇店の入口
リデル「愛しさで、何度も君に触れたいとも思ったし、 君に僕の全てを受け入れて欲しいとも思ったよ」
リデル「でも、離れなければならないのが分かりきっているのに、 そんな酷な事を僕はどうしても言えなかった」
リデル「そんな事を考えているうちに、 とうとう別れの季節がやって来てしまったんだ」
リデル「本当に、ごめん・・・」
リデルが袖口を大きく捲り上げて
理沙に見せてみる
リデルの腕は、
人間のそれとは全く違った
透き通るような透明さだ・・・
理沙「!!」
リデル「驚いたよね? ある程度、この星の人間に擬態出来る装備で来たんだ」
リデル「完璧な装備でこっそり旅行に来ている人もいるかもしれない・・・」
〇空
リデル「でも、僕たちがここにいられるのは、 寒い冬の間だけだ」
リデル「僕たちは、極端に体温が低くて、 日本の春では生きられないからね」
リデル「そして、この星の人間に触れられると、 火傷をしてしまうんだ」
〇店の入口
リデル「それでも、 何度も 君に触れたいと思った・・・」
リデル「最後にお願いがあるんだ」
リデル「君に触れてもいいかな・・・?」
理沙「!!」
理沙「・・・」
頷く理沙
リデル「良かった ありがとう・・・」
リデルがそっと理沙の頬に触れる
リデル「ごめんね、 触れるだけじゃ足りない」
リデル「最初で、 最後に・・・」
〇幻想空間
リデルは、そっと、
触れるだけのキスをした
〇店の入口
リデル「ごめんね、 本当に、君を愛しているんだ」
リデル「これからも、君の事を ずっと想っているよ」
〇空
リデル「さようなら・・・」
リデルは走り去って行く
〇繁華な通り
ただ、
理沙だけが取り残される
理沙(しばらくして・・・)
理沙(空に光る閃光を見た気がしたけど)
理沙(それは滲んで よく見えなかった・・・)
〇空
ある寒い冬のこと
〇繁華な通り
理沙(ふと流れるメロディーに 耳を澄ます)
♪ 雪が舞い散るこんな季節は
僕の事を想い出して
♪僕が君を愛していた事を
♪これは僕から君へのメッセージ・・・♪
理沙(はらはら舞い散る雪を見上げて私は)
〇空
理沙(遠い空のあなたを想った・・・)
怒涛の作品発表に驚いています。しかも、とても同じ人の作品とは思えない程、世界観の振れ幅にも驚いています。しっかりと、その世界に連れ込まれます。
切なくて、胸の奥が痛むようなお話でしたが、結ばれないことと知りながらも彼女に会いに来たんですよね。
とてもきれいなラブストーリーだと思いました。
最初から実る恋ではないことをわかった上で一緒にいて、段々と一緒に居るのも辛くなったでしょう…。
この別れ方が一番良い別れ方だったのでは?と私は思います!