月曜日2(脚本)
〇古いアパート
少女「ママもいっしょにおさんぽいこ!」
アヤ「ちょっとリュウイチ・・・なんで私がいきなりママなのよ?」
リュウイチ「いや、俺もいきなりパパって呼ばれてるんだぞ。俺だってよくわからないって」
アヤ「そもそも、この子どこから連れて来たのよ」
リュウイチ「それがさ、バイトから帰ったら押し入れの中でこの子が寝てたんだよ」
アヤ「・・・・・・」
リュウイチ「し、信じられないだろうけど本当なんだって!」
少女「パパとママ、ケンカ?」
少女「ケンカはダメだよ!」
少女「ケンカしたらごめんなさい、するんだよ」
アヤ「・・・はぁ、そうね」
アヤ「私はまた喧嘩する為にここに来たんじゃなかったわ」
リュウイチ「・・・ごめん、アヤ」
アヤ「私の方こそごめんなさい。悪かったって思ってる」
少女「なかなおりだね!」
アヤ「そうね。あなたのおかげよ、ありがとう」
少女「どういたしました!」
リュウイチ「それを言うならどういたしまして、だぞ」
少女「えへへへ」
少女「おさんぽいこー!」
女の子はそういうと勢いよく駆け出した
リュウイチ「切り替え早いなぁ・・・子供ってなんであんなに元気なんだ?」
アヤ「ねぇリュウイチ、あの子どうするの?」
リュウイチ「今から近くの警察署に連れて行こうかと思ってたんだ。それで散歩って事で連れ出して・・・」
アヤ「そういう事ね。リュウイチの話は全然信じられないけど、目の前にいるあの子は本物だし、なんとかしないとね」
リュウイチ「まったく疲れてるのになんなんだよ」
アヤ「ボヤかないの。私も一緒に行ってあげるから」
リュウイチ「そっか、それは助かるよ」
少女「パパ、ママはやくー」
アヤ「はいはい、今行くからあんまりはしゃがないのー」
リュウイチ「・・・・・・」
少女「ママー!よかったね!」
アヤ「え?何が?」
少女「パパがかえってきて!」
アヤ「パパってリュウイチの事よね?」
少女「うん!パパがかえってこなくてママいつもさみしそうにしてたから」
少女「きょうはげんきでよかった!」
アヤ「え、ええ。ありがとう」
リュウイチ「ほら、なんの話してるんだー。行くぞー」
少女「おさんぽ、しゅっぱつー!」
少女「パパ!ママ!」
女の子はそういうと、両手を俺たちに差し出した
俺とアヤはそんな女の子の手を握り、歩き出した
〇警察署のロビー
警察官「うーん、この管内ではお子さんの捜索願いは出されてませんね」
リュウイチ「そうですか・・・」
警察署についた俺達は「迷子の子供を保護した」と言って警察署の人に色々と調べてもらったが、当てが外れてしまった
少女「ママ、ワタシけーさつははじめて!」
アヤ「ねぇ、知ってた。良い子にしてないと逮捕されちゃうのよ」
少女「だいじょうぶ! ワタシはホイクエンでもいいこだねっていわれてる!」
アヤ「そうなんだ。偉いわね」
少女「えへへへ」
警察官「立ち入った事ですので失礼になるかもしれませんが・・・」
警察官「あの子はお2人のお子さんではないのですか?」
リュウイチ「あ、いや、どう説明したらいいのかわからないんですけど、僕たちの子供では・・・」
警察官「私は古い人間ですので今の若い人達の事はよくわかりません。ただ色々な家族の形があるという事は知っています」
警察官「私にも子供がいましてね」
警察官「今はもう大きくなって私には寄り付きもしませんが、小さい頃はあの子とおんなじで親にべったりでした」
警察官「部外者の立場から見て勝手に言わせて頂きますが──」
警察官「今日そこであった見知らぬ人に普通はあんなに懐きませんよ。子供は警戒心が強いですからね」
リュウイチ「・・・そういうものですかね」
警察官「偉そうに言ってますが、私もよくわかりません。ただ親をやってきたつもりです。その経験からのただの直感ですよ」
警察官はそう言うと俺に一枚の紙を差し出した
その紙には「子供相談所」と言う文字がデカデカと書かれていた
警察官「色々困った時は誰かを頼ってください。頼る事は恥ずかしい事じゃありませんからね」
リュウイチ「・・・ありがとうございました」
〇警察署の入口
リュウイチ「ダメか・・・」
アヤ「しょうがないわよ。本当の事を言ったって誰も信じてくれないでしょ」
リュウイチ「アヤは信じてくれたじゃん」
アヤ「それは私がリュウイチをよく知ってるからよ」
アヤ「リュウイチはバカでアホだけど嘘だけはつけないんだから」
リュウイチ「褒められてるんだか、貶されてるんだか・・・」
少女「んー」
アヤ「どうしたの?」
少女「ねむい・・・」
少女「ママ、だっこ」
アヤ「色々歩いて疲れちゃったか・・・」
アヤ「ほら、おいで」
少女「んー!」
女の子はアヤに飛びつくように抱きつき、アヤはそんな女の子を大事そうに抱き上げる
リュウイチ「・・・・・・」
アヤ「何よ、リュウイチ。ニヤニヤして・・・」
リュウイチ「いや、アヤって子供好きだったんだなぁって」
アヤ「んー、自分じゃわからないけど人並みだと思うけど」
リュウイチ「いやいや、絶対好きだよ」
アヤ「だから人並みだって」
少女「んー」
リュウイチ「この子が起きちゃうから静かにするか」
アヤ「──そうね」
俺とアヤはそれだけ言うとゆっくりと歩き出す。
アヤと俺の肩がぶつかったが、その事が何故か嬉しく感じた。
〇古いアパート
リュウイチ「さて、ここまで戻って来たけどどうするかな」
アヤ「今日のところは私がこの子を預かるわ」
リュウイチ「いいのか?」
アヤ「いいも何もそうするしかないでしょ。この子だって女の子なんだから・・・」
リュウイチ「いやいや、アヤ。俺はそんなに危ない人間じゃないぞ」
アヤ「それはわかるけどリュウイチのボロアパートに置いとくのはかわいそうでしょ」
アヤ「寝る場所だってないだろうしね」
リュウイチ「そう言われると反論出来ない・・・」
アヤ「とりあえず朝一に私の所まで来て。私は明日も仕事だから急には休めないし、リュウイチはバイト午後からでしょ?」
リュウイチ「ん、ああ、わかった」
アヤ「そんな情け無い顔するんじゃないの。じゃあ頼んだわよ、パパ」
リュウイチ「そんな事言われてもなぁ・・・」
少女「いちごー!」
リュウイチ「・・・いちご」
アヤ「ふふ、可愛い寝言ね」
リュウイチ「そう言えばアヤも好きだよな、いちご」
アヤ「・・・いちごー!」
リュウイチ「・・・・・・」
アヤ「つ、ツッコミなさいよ・・・」
リュウイチ「いや、なんか、ごめん・・・」
アヤ「バカ!」
リュウイチ「あ、おい!?ちょっと待ってって、駅まで送るから!」
アヤ「早く来ないと置いてくわよー」
少女「んー」
リュウイチ「だから待てってー」
俺はスタスタと先を行くアヤを追いかけて歩き出した。
〇改札口前
アヤ「送ってくれてありがとう」
リュウイチ「ああ、でも本当にここまででいいのか?」
アヤ「ええ、大丈夫よ」
リュウイチ「・・・・・・」
リュウイチ「いや、やっぱり家の前まで送るよ」
アヤ「だからそれはいいって、リュウイチだって疲れてるでしょ?」
リュウイチ「それを言ったらアヤもだろ?それに俺がそうしたいからそうするだけだから」
アヤ「・・・・・・」
アヤ「わかった。ありがとう」
リュウイチ「はは、気にしない気にしない」
リュウイチ「じゃあ行こう」
〇中規模マンション
アヤの住んでいる所は俺の住んでいる場所から電車で二駅先にある場所だ。
駅から歩いて10分程度の場所にあるマンションの前に着くとアヤが足を止めた。
アヤ「リュウイチ、ありがとう」
リュウイチ「いや、こっちこそ色々と悪い」
アヤ「最初にリュウイチが子供を連れてた時は驚いたわ」
リュウイチ「いや、俺の方が驚いたわ。今でも意味がわからないしさ・・・」
アヤ「まあ、そうよね。それにこの子もずっとこのままって言う訳にも行かないしね・・・」
リュウイチ「だよなー・・・」
少女「えへへ──」
リュウイチ「人の気も知らないで呑気に笑ってやがる・・・」
アヤ「ふふ、可愛いじゃない」
リュウイチ「まー、でも!こうなったらしゃーない!」
リュウイチ「俺が絶対にこの子を親御さんの元に帰す!」
アヤ「へー、リュウイチのくせにやる気じゃない」
リュウイチ「俺はやる時はやる男だぞ」
アヤ「──私との事もそれくらいやる気出してよね」
リュウイチ「ん?アヤ何か言ったか?」
アヤ「なんでもないわ。じゃあ明日はよろしくね」
リュウイチ「おう!任せとけ!」
アヤがマンションの中に消えて行く。俺はアヤの姿が見えなくなると踵を返して歩き出した。
リュウイチ「・・・・・・」
リュウイチ(なんか今日は色々とあったな。一体どうなってんだか)
リュウイチ(突然女の子が現れて俺がパパで、アヤがママって・・・・・・)
リュウイチ「・・・・・・」
〇中規模マンション
〇中規模マンション
リュウイチ(今までなんとなくやってきたけど、なんとなくじゃダメだよな)
俺の手に自然と力が入る。
リュウイチ「よし、決めたぞ」
リュウイチ「なんとなくはもうやめだ」
俺は帰り道を歩く。何度か歩いた同じ道は周りの風景も何もかもが変わり映えしない。でも、今日はなんだか違って見えた。