〇球場の観客席
実況コカンダ「さあまたまた予想外の展開。なんと急遽、エキシビションとして再戦が行われることが決定いたしました」
実況コカンダ「たった今惨敗を喫した騎士国ラウンズ。その監督としてチームを率いることになったのは、なんと神の御使いであるマコ選手」
実況コカンダ「マコ監督の指示により、騎士国ラウンズのスターティングメンバーは10名ほどに減り、全員が鎧を脱ぎました」
実況コカンダ「さらにマコ監督から直々にヤ・キュウの動きについてレクチャーを受けていおります」
解説ヒルダ「それで先ほど惨敗したチームの何が変わるのか？ 神の御使いマコ監督の采配に注目ですね」
実況コカンダ「果たして結末やいかに！ 二度目のプレイボールです！」

〇中世の野球場
ラクス王子「ううむ、何か落ち着かん」
実況コカンダ「一番バッターは先ほどの試合と同じくラクス王子。ですが先ほどとは違いユニフォームなる衣装を身にまとっています」
ラクス王子「神の御使い。本当にこれで戦うのか？」
マコ「戦争じゃないんだから守る鎧は必要ないの。それに体の動きが全然違うでしょ？」
ラクス王子「確かに防御を捨ることで動きやすさは格段に上がったな。・・・・・・なるほど。つまり攻撃特化型になったということだな！」
マコ「えっと・・・・・・その例えはよく分からないけど、それでいいから、とにかくまずはしっかり球を見て。イメージが大事だよ」
ドロシー「鎧を脱いだだけで私の球が打てるかしら？」
実況コカンダ「ドロシー選手。 振りかぶって第一球を・・・・投げた！」
　　ズドーン！
実況コカンダ「その細腕から想像できない剛速球が、キャッチャー壁に叩きつけられる！ ラクス王子、やはり手が出ない！」
副官イート「ああっ、やっぱりダメなんでしょうか」
マコ「・・・・・・ううん。 そんなことないよ」
副官イート「えっ？」
ラクス王子「ボールを見るか。なるほどな」
レヴィリック「ラクス王子め。しっかりと見ていたな」
マコ「きっと大丈夫だから、王子を信じてあげなって」
副官イート「そうですね。私たちが信じない訳にはいきません。なにせラクス王子は我がダルトンハイト騎士国の最強の聖騎士なのですから」
マコ「・・・・・・」
マコ「えーっ！ そうだったの！」
副官イート「知らなかったんですか！」
マコ「ただの色ボケ王子だと思っていた」
副官イート「否定はしませんが！」
ラクス王子「破滅の大魔女ドロシーよ。貴様の球のコースは完全に理解した。来るがよい、我が真の力を見せてやる」
実況コカンダ「身軽になったラクス王子。 素振りする聖剣が轟音を立てる」
解説ヒルダ「これはもしかするかもしれませんね」
ドロシー「・・・・・・」
実況コカンダ「さあ、緊張の面持ちを浮かべたドロシー選手。バッターボックスで聖剣を構えるラクス王子に、第二球を・・・・・・投げた！」
ヤマクモ「ふむ、これは打たれたな」
ラクス王子「もらった！」
　　カキーン
ドロシー「・・・・・・あっちゃー」
実況コカンダ「・・・・・・打った、しかも飛んでいる、すごい飛んでいます！ 大きい、これは大きいぞ！ どこまで飛ぶんだこれは！」
実況コカンダ「ボールはそのまま外野の向こうにある線を超えた！ ・・・・・・えっ？ こ、これはつまりアレではないでしょうか!?」
解説ヒルダ「ホームランですね」
実況コカンダ「そ、それです！ ほ、ホームランです！ ホームランが出ました！」
観客「うおおおおおおおお！」
副官イート「うおおおおおお！」
マコ「うおおおおおお！」
実況コカンダ「なんと！ 先頭バッターのラクス王子！ 超長特大のホームラン！ ヤ・キュウ史上最初の一発を打ち上げました！」
ラクス王子「ふん、造作もない」
実況コカンダ「ゆっくりとホームを一周したラクス王子がそのままホームイン！ 騎士国ラウンズ一点先制です！」
マコ「はい、王子いえーい！」
ラクス王子「？ なんだ、神の御使い？ 両手をこちらに向けて？」
マコ「知らないのハイタッチ！ 手を合わせて喜び合うの！ はい、やって、イエーイ！」
ラクス王子「い、いえーい？」
マコ「ほら、皆とも！ 監督命令！」
ラウンズ選手たち「やりましたね王子！」
ラウンズ選手たち「自分感動しました！」
マコ「さあ、このままどんどん行くよ！ ハッピーズをやっつけろ！」
　　ズドーン、ズドーン、ズドーン
実況コカンダ「ストライクバッターアウト！ スリーアウトチェンジです！」
ドロシー「最初のは手加減してあげただけで、私がちょっと本気を出せばこんなモノだから」
レヴィリック「ホームランを打たれたことをかなり根に持っているな、この魔女」
実況コカンダ「一回の裏。聖国ハッピーズの攻撃は変わらず打線が爆発」
実況コカンダ「しかし鎧を脱ぎ身軽になったラウンズの選手たち。上手くボールを拾い、失点を押さえます」
実況コカンダ「四回の表。再びドロシー選手とラクス王子の対決」
実況コカンダ「先ほどとは状況が一転！ ラクス王子の聖剣が空を切る！」
　　グワン
ラクス王子「な、なんだ！ その曲がるボールは！」
実況コカンダ「ラクス王子、先ほどとはまったく違う球筋に今度は三球三振に打ち取られてしまった！」
マコ「うっわ。凄い変化球。 ドロシー、あんな球も投げられたんだ」
ラクス王子「おい、神の御使い！ あの球はなんだ！ どうやって打てばいい？」
マコ「きちんとよく見て。飛んできた球がどう変化するか予測するの。王子の腕前があればいけるから。あとは気合！」
マコ「頑張って！ 応援するから！」
ラクス王子「ふん、貴様の応援など・・・・・・」
ユニファ王女「ラクス王子、ファイトです」
ラクス王子「ユニファ！ 次のホームランはキミに捧げよう！」

〇中世の野球場
ラクス王子「我が聖剣の力を見よ！」
　　カキーン
実況コカンダ「七回の表、ドロシー選手対ラクス王子の三度目の対決！ まるで蛇のように曲がる球をラクス王子が打ち抜いた！」
実況コカンダ「これは高々と上がった。 外野の頭上を越えた！」
ラクス王子「ちっ、ホームランとはいかなかったか」
レヴィリック「外野急げ！」
マコ「王子、全力で走って！ あれなら一周回れる！」
ラウンズ選手たち「王子走ってください」
ラウンズ選手たち「そのまま一周すれば点数が入ります！」
ラウンズ選手たち「急いで！」
ラクス王子「むっ、そうであったな！」