第九話『聖国ハッピーズVS騎士国ラウンズ』(脚本)
〇中世の野球場
実況コカンダ「さあヤ・キュウ対決開始です。一回の表、聖国ハッピーズの攻撃。先頭バッターはドロシー選手」
実況コカンダ「対する騎士国ラウンズ。ピッチャーを務めるのは王子副官のイート選手。ラウンズ一のボールコントロールの持ち主だそうです」
実況コカンダ「そのイート選手がボールを投げる先にあるのは、バッターボックスの後ろに置かれたキャッチャー壁なるモノ」
解説ヒルダ「こちらはボール同様にドワーフの神匠ビビゼルがオリハルコンを使い仕上げた壁」
解説ヒルダ「耐久力に優れているだけでなく、自動でストライクゾーンの判定もしてくれる優れものです」
実況コカンダ「神々の鉱石が惜しみなく使われるヤ・キュウ勝負。その内容に今から興奮が止まりません」
実況コカンダ「一塁に立つラクス王子の掛け声に外野に広がる聖騎士たちが声を上げる中、ピッチャーのイート選手が構えます」
ラクス王子「イート! ストライクだ! 絶対に外すなよ!」
副官イート「心得ております」
実況コカンダ「さあ、イート選手。 第一球を・・・・・・投げた!」
ドロシー「ふん、温いわね!」
カキーン
ラクス王子「なに!」
実況コカンダ「ドロシー選手。初球を高く打ち上げた。ボールは聖騎士たちが点在する外野に飛んで行く」
解説ヒルダ「このまま地面に落ちる前にボールをキャッチすることができればアウトにできますが・・・・・・」
聖騎士たち「こっちに飛んできた」
聖騎士たち「おい、危ない! ぶつかるぞ!」
聖騎士たち「うわっ!」
ガシャーン
実況コカンダ「なんとボールに取ろうと駆け寄った騎士たちが接触! ボールはそのまま落下! 地面を転がる!」
ラクス王子「何をやっておるか、貴様ら!」
実況コカンダ「外野の聖騎士たちがわちゃわちゃしている間にドロシー選手はあっさり二塁に到達。あざやかなツーベースヒット」
レヴィリック「案の定、大した戦略立ても練習もしてこなかったようだな」
実況コカンダ「さあ二番バッターのレヴィリック選手がバッターボックスに入りバットを構える」
カキーン
実況コカンダ「イート選手の初球をこれも綺麗に打った! 内野の頭を超えて外野を転がるボール。おっと、聖騎士たちが拾うのに手こずっている」
解説ヒルダ「鎧が邪魔で上手く拾えないようですね。しかもボールを投げるのが下手くそです」
実況コカンダ「その間にドロシー選手がメインベースに生還。ハッピーズ一点先制です」
ラクス王子「貴様ら! 真面目にやらんか!」
〇中世の野球場
実況コカンダ「さあヒットが続き疲労困憊のピッチャーのイート選手。ここで迎えるはハッピーズ9番・神の御使いマコ選手」
実況コカンダ「冷や汗が止まらないイート選手。 第一球を投げた」
ひょい、どすん
実況コカンダ「おっとマコ選手、この一球を見送りワンストライク。続く第二球。・・・・・これも見送った。あっと言う間にツーストライク」
実況コカンダ「そして続く第三球。・・・・・・これも見逃した! なんとスリーストライクバッターアウト! これは予想外の展開だ!」
ラクス王子「ふん、神の御使いも大したことはないようだな」
実況コカンダ「これはどういう事でしょう、解説のヒルダさん?」
解説ヒルダ「あんな球いつでも打てるという、挑発の類でしょう。はっきり言ってマコ選手は相手のことをかなり舐めているようです」
ラクス王子「そうであったか! おのれ、小娘!」
マコ(誤解なんだよなー。私の実力が大したことがないってバレるからバットを振りもするなって言われているだけなんだって)
実況コカンダ「さあ、マコ選手の舐めプレイもあり、一回の表が終了。しかしハッピーズ、この回だけで一挙に大量の7得点を上げました」
実況コカンダ「続く一回の裏。騎士国ラウンズの攻撃。先頭バッターはダルトンハイト騎士国の第一王子であるラクス王子」
実況コカンダ「対するハッピーズのピッチャーはドロシー選手です」
ラクス王子「ふん、誰が投げるのかと思えばまさか女が投げるとはな。ここまできちんと届くのか?」
ドロシー「まあ、それなりに」
ラクス王子「絶望的な事を教えてやろう。私はイートの球を一度も打ち損じたことはないのだ」
ドロシー「あら、それは怖い」
ラクス王子「さあ、投げてこい! そのボール、我が聖剣のサビにしてくれよう!」
実況コカンダ「やる気満々のラクス王子。 その王子に向かってドロシー選手、第一球を・・・・・・投げた」
ヒュ、ずどーん!
ラクス王子「・・・・・・・」
実況コカンダ「・・・・・・ううううぉぉぉぉぉ!」
実況コカンダ「な、なんと凄まじい球だ! もの凄い剛速球! 速くてまったく見えませんでした!」
ドロシー「はい、ワンストライク」
ラクス王子「・・・ま、待て! なんだその球は! イートの球と全然違うではないか!」
ドロシー「だって私、腕力じゃなくて、魔法の力で投げてますから」
ドロシー「それじゃあ、王子。たっぷりと私のことを絶望させてくださいね💛」
ちゅどーん、ちゅどーん
実況コカンダ「ストライクバッターアウト! ラクス王子、まったく手が出ませんでした!」
〇中世の野球場
実況コカンダ「これは一方的な展開だ。ハッピーズの猛攻止まらず、逆にラウンズはドロシー選手の前にヒットを打つことすらできません!」
ラクス王子「イート! いつになったら、私の次の打順は回ってくるのだ!」
副官イート「選手全員が一巡した後ですから、あと89打席後になります」
ラクス王子「だからそれはいつだ!?」
副官イート「このままのペースだと。 34回の表になります」
ラクス王子「・・・・・・おい待て、ヤ・キュウは9回で終わりではなかったのか?」
副官イート「はい。つまりこのままでは王子の打順はもう回ってきません」
ラクス王子「なんということだ!」
どすーん!
実況コカンダ「またまた三球三振! そして四回の裏もラウンズが点数を返せなかったことで特別ルールが適用されます」
実況コカンダ「両チームの点数が30点差以上付いたままその回を終えた場合、最後まで試合は続けられずそこで試合終了」
解説ヒルダ「コールドゲームです」
実況コカンダ「これにより聖国ハッピーズ対騎士国ラウンズのヤ・キュウ対決は、4回コールドゲーム。36対0でハッピーズの勝利です」
ラクス王子「・・・・・・」
ラクス王子「バカな・・・・・我が軍が、この私が負けたというのか? こんな一方的に?」
マコ「そりゃ負けて当然でしょ」
ラクス王子「神の御使い! 貴様、何をしにきた!?」
マコ「何をって、賭けのこと忘れていないでしょうね?」
ラクス王子「ぐぬっ、そうであったな。・・・・・・分かった。騎士に二言はない、なんでも言う事を聞こう」
マコ「それじゃあ、早速だけど。全員鎧脱いで」
ラクス王子たち「!」
ラクス王子「神の御使い。・・・まさか貴様! 我々を全裸にして自分のハーレム選びをするつもりなのか!」
マコ「そんなことするか!」
マコ「そうじゃなくて、鎧を脱いでこれを着てってこと!」
ラクス王子「・・・・・・なんだこれは?」
マコ「私が作ったユニフォーム。それを着たらさっさと再戦するわよ」
ラクス王子「再戦、だと?」
マコ「今から私が騎士国ラウンズの監督をやるから。すぐにハッピーズにリベンジよ」
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