第7話 吸収(脚本)
〇電器街
僕はオタクになりたかった
一つの物事に熱中し、その情熱を裏付けるだけの膨大な知識を保有する──そんなオタクに憧れていた
オタク「────」
オタク「────」
何故なら、それは僕にはない感情だから
僕には──何かを探究したい、深くまで知りたい、推したい──といった“情熱”が、生まれつき備わっていなかった
まるで抜け殻のように、ただ呼吸をしている。そんな虚しい存在が僕だった
〇美術室
僕は絵が下手だった
世界に興味を示せない僕の、世界に対する解像度はとても低かった
描こうとしても、どんなものだったか思い出せない。見ながら描いても、特徴を上手く捉えられない
女子「──」
女子「──」
好きなものがないから、それを語ることもできない
広く、浅い知識しか僕は得られなかった
仮に僕がオタクになれたとしても、それは世間で言うところの「にわかオタク」でしかない
本物のオタクにはなれない。世界への解像度は低いまま、表面だけを切り取って生きている
僕にはいつも、“実感”がなかった
「物事を咀嚼する」「自分の血肉に変える」といった“実感”を、どうしても得ることができなかった
〇ラブホテルの部屋
だから僕は“実感”を求めてしまう
喜びも悲しみも怒りも、痛みも苦しみも身近なものにしたくなる
人間への興味を失いたくないから。世界との繋がりを維持したいから──
「んんっ」
「痛いってばぁ・・・」
僕は夢の中で頬をつねるように、彼女の身体を弄んだ
「あっ!」
舐めたり、嗅いだり、触れたりして、その存在を確かめる
しょっぱい。くさい。あたたかい
色々な味が、これが夢ではないことを──
「うっ〜〜〜」
──“実感”させてくれた
〇ホストクラブ
「よいしょー!」
「ほらほらお前も飲めよ〜」
傲慢ちゃん「よいしょー!」
ホスト「よいしょー・・・」
傲慢ちゃん「全然進んでなくない? 私の酒が飲めねーのかー?」
ホスト「黄泉くん」
ホスト「・・・はい」
ホスト「ごめんね〜。指名入っちゃったから続きはまた今度──」
傲慢ちゃん「続きはねーよボーケ!」
傲慢ちゃん「早く次の人呼んできて。私の酒が飲める人なら誰でもいいよ」
ホスト「・・・」
ホスト「莉奈ちゃん、お金を使ってくれるのはありがたいけど、もうちょっと遊び方を考えてほしいかな」
傲慢ちゃん「は? 私の遊び方が一番正しいだろ〜?」
傲慢ちゃん「バカにはわかんないだろーーけど!」
嫉妬ちゃん「・・・」
ホスト「やっほー! ぴとちゃん」
嫉妬ちゃん「黄泉っち〜会いたかったよ〜」
嫉妬ちゃん「あれ? 顔赤いよ。もしかしてまた──」
ホスト「うん、また」
嫉妬ちゃん「あの客本当にありえないよね〜! そもそも担当もいないやつ姫じゃないんだから来んなよ!」
ホスト「まじそれな〜。それに比べてぴとちゃんは最高のお姫様だよ」
嫉妬ちゃん「でしょ〜! だって私は一番に黄泉っちのこと考えてるから〜」
傲慢ちゃん「聞こえてんぞ〜あのアマ〜」
ホスト「・・・」
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嫉妬ちゃん、私の身内と同じ道を辿る気がするのは、きっと気のせいじゃない筈(笑)
戸羽節がバンバン効いてて良きです👍