空熊

望月カトラ

第一話(脚本)

空熊

望月カトラ

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空熊
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〇センター街
  空から熊が降ってきた。
  何の脈絡もなく、いきなりだ。
  そのまま落下してきて地面に激突するかと思ったら、そうはならず、僕の目の前でピタリと止まった。
  そして、空中に浮いた状態で動きを止めると・・・・・・
熊「ブヒィ~!」
  と鳴いて、その毛むくじゃらの身体を包み込むように黒い霧が発生した。
  これ、吸っても大丈夫なやつかな?
  成分はよくわからなかったけど、見た感じ体に悪そうだったので僕は息を止めた。
  やがて熊を覆っていた黒い霧が晴れていく・・・・・・。
  中からは、なんとも可愛らしい女の子が出てきた。
  フワリとした金髪ロングヘア―に青い瞳をした美少女が、宙に浮かびながら、こちらに向かって笑顔を振りまいている。
  なんだこれ? 僕は一体どうなってしまったんだ?
  あまりの衝撃に、僕は呼吸をしていないことを忘れ、うっかり息を吸ってしまった。
  甘い匂いがした。
女の子「こんにちわ! 私はラーメンの神です!」
  ・・・・・・・・・・・・えぇ~っと、この子は何を言っているんだろう?
  僕は困惑して首を傾げた。
  すると、少女も同じように首を傾けた。
  うーん。これはあれかな? きっと、夢を見ちゃってるんだよね。
  うん。多分そうに違いない。
  だって普通に考えておかしいもんね。こんな可愛い子が現れるなんてさ。
  いやーしかし凄いな夢のクオリティの高さは。まるで現実みたいじゃないか。
  ・・・・・・あ、でも待った。よく考えると今の状況ってかなりヤバくない?
  夢の中で死んじゃったりしたら、目覚めること無く永遠に眠り続けるとかあり得るんじゃないかな?
  さっき変な霧吸っちゃったし、早く目を覚まさないと!
  僕は自分の頬を思いっきり殴ってみる。痛かった。
  ダメか・・・・・・じゃあ次は、そうだな・・・・・・あの子に話しかけてみよう。
  あんな現実感のない子と会話したら現実が恋しくなって目が覚めるはずだもの。
僕「・・・・・・君は誰だい?」
女の子「はい! 私はラーちゃんですよぉ!」
ラーちゃん「ラーメンの神です! よろしくお願いしますぅ!」
  ・・・・・・やっぱり変人だ。こいつ頭がおかしい。
  でもおかしいな。まだ僕の目は覚めない。
  そして、僕の本能が告げている。この子の言う事を聞かない方がいいと。
  とりあえずこの場を離れようと歩き出した瞬間、彼女が話しかけてきた。
ラーちゃん「待ってください!」
ラーちゃん「あなたには私のお店で働いて貰います! だから行っちゃだめです!」
  彼女は必死に訴えてくる。
  だけど、僕としては全然話を聞く気になれなかった。
  悪いけど他を当たってくれないか? そういう気分じゃないんだよ。
  それになんか胡散臭いしさ。
  しかし、そんな僕の態度など気にせず、彼女は更にまくし立てる。
ラーちゃん「いいですか!? あなたは選ばれたのです!」
ラーちゃん「あなたにしか出来ない仕事があるんですよ!」
ラーちゃん「ほら、行きましょう! 私と一緒に働くんですっ!」
  強引に腕を引っ張ってくる、自称神。
  面倒くさくなった僕は、つい反射的に振り払ってしまう。
  すると、勢い余って彼女の体が少しだけ飛んでしまった。
  慌てて手を伸ばそうとしたのだが、既に遅かった。
  ラーちゃんはそのまま地面に落下してしまったのだ。
  急いで駆け寄ろうとしたんだけど・・・・・・その時だ。
熊「ブヒィ・・・・・・」
  熊になっていた。
  さっきの美少女が熊になってしまったのである。
  ・・・・・・いや、熊に戻ったという方が正しいのだろうか。
  熊が先か、美少女が先か。
  僕はそんなことを考えながら、ひとまずその場を離れたのであった。

コメント

  • 情報過多とはまさにこのこと…笑
    熊がブヒィ、ラーメン神、な、なるほどね?
    とにかく理解に時間がかかるシチュエーションではこんな感覚になるということですね!

  • 熊のようで熊でない何かが、美少女に変身っておもしろいですね!
    ラーメンの神にスカウトされると、おいしいラーメンを作れるようになるのかな?
    食べてみたい!と思いました。

  • 熊から変身したラーちゃんだからより魅力的です。ラーメンの神、ラーちゃんなのでしょうね。きっと主人公はラーメンにちなんだなにかありそうですね。

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