第七話『ダルトンハイト騎士国ラクス王子、見参』(脚本)
〇謁見の間
レヴィリック「・・・・・・以上が今回の計画になる」
ユニファ王女「・・・・・・」
ヒルダ「神の御使いであるマコ様とヤ・キュウを使い、まずは二つの大国からこの国を守り、ゆくゆくは世界から争いを失くす、ですか」
ヒルダ「話は分かりましたが、本当にそれが成立するのですか?」
レヴィリック「成立させる。その為にも最初の相手はダルトンハイト騎士国がうってつけだ」
ヒルダ「標的は、事ある毎にユニファ様に求愛してくるウザたらしいラクス王子」
ヒルダ「その為に、わざと情報を流し、あの熱血王子を国境沿いに引っ張り出し、先ほど並べた『幾つもの策』を要する、という訳ですか」
ヒルダ「だからと言って、ユニファ様をそのように使うことには賛同できません。あまりにもリスクが・・・・・・」
ユニファ王女「構いません、ヒルダ」
ヒルダ「ですが、ユニファ様・・・・・・」
ユニファ王女「このままいけば我がユグド聖国は滅亡を免れません。それだけでなく、この世界からは争い火が消えることもないでしょう」
ユニファ王女「この戦乱の世にあって、争わぬことなど夢物語なのかもしれません。ですが、そうであっても、私は人々の悲しみを失くしたい」
ユニファ王女「これは私の我儘。それを叶える可能性を、こうしてレヴィリックは用意してくれたのです」
ユニファ王女「それなのに何を悲観することがあるでしょう? もし我が身を捧げるかと問われても、私は喜んで頷きます」
ユニファ王女「ですから皆さん。こんな私の我儘に、どうか最後まで付き合ってくださいませんか?」
レヴィリック「何を今更」
ヒルダ「我々は命尽きるその時までユニファ様にお仕えする所存」
「ユニファ王女万歳!」
ユニファ王女「マコさんも、お願いできますか?」
マコ「当然でしょ。一応これでも神の御使いってヤツだし、ユニファの友達なんだから、バッチリと怖い神の御使いを演じてみせるよ」
ユニファ王女「ありがとう、マコ」
〇城の廊下
ヒルダ「マコ様」
マコ「どわっ!」
マコ「も、もうヒルダさん! なんでいつもいつも音もなく背後に現れるんですか! びっくりするから止めてください!」
ヒルダ「失礼しました。ついつい前職の癖で、確認したくなりまして」
マコ「確認?」
ヒルダ「いつでもヤレる確認でございます」
マコ「何を?」
ヒルダ「私、ユニファ様の志に感銘を受け、前職から足を洗い、身の回りのお世話するメイドとなりました」
ヒルダ「ユニファ様の笑顔をお守りすることが私の使命であると考えております」
ヒルダ「ですからマコ様。くれぐれもよろしくお願いします。もしユニファ王女に万が一のことがあれば・・・・・・」
ヒルダ「私、何をしでかすか分かりません」
マコ「・・・・・・が、頑張ります」
ヒルダ「よろしくお願いします」
ドロシー「あれ、マコ? ヒルダと何のお喋り」
マコ「お喋りというか・・・・・・脅迫?」
ドロシー「なら、しっかりやらないとね。さあ、行きましょうか。レヴィリックがラクス王子との謁見を取り付けたそうよ」
〇戦地の陣営
副官イート「ラクス王子。レヴィリック宰相の一団がご到着されたとのことです」
ラクス王子「・・・・・・来たか」
ダルトンハイト騎士国・第一王子
聖剣に選ばれし聖騎士ラクス
兵士「ユグド聖国レヴィリック宰相、入られます!」
兵士2「あれが近隣諸国を荒らし回った元大盗賊の宰相か」
兵士3「おい! あの後ろにいるのって・・・」
兵士2「破滅の大魔女ドロシー。 それに一太刀千人斬りのヤマクモ」
兵士3「ユグド聖国にいるという噂は本当だったのか。あの二人だけで小さな国なら簡単に亡びるぞ」
レヴィリック「これはこれはラクス王子。これほどの軍勢を率い、我が国との国境まで何の御用でしょうか?」
ラクス王子「知れたこと。ユグド聖国に神の御使いが現れたと分かった以上、一刻も早くユニファを救出せねばならん」
ラクス王子「神の御使いの毒牙がユニファに伸びると思うと居ても経ってもいられん」
レヴィリック「王子は我が国の王女にご執心のようですな」
ラクス王子「ユニファの隣に立つのは私だ。決してお前のような薄汚い犯罪者でもなければ、得体の知れぬ神の御使いでもない」
ラクス王子「話は終わりだ。 すぐにユニファを引き渡してもらおうか」
レヴィリック「今回、我々がこうして謁見を申し出ましたのは、ラクス王子及びダルトンハイト騎士国にご助言する為でございます」
ラクス王子「助言だと?」
レヴィリック「神の御使いの恐ろしさは我々も身をもって体験させられております。何卒、兵を引き、以降我が国に手を出すのはお控えください」
ラクス王子「なんの冗談だ? いくらお前の囲う傑物たちが集まった所で我が騎士団が後れを取ることはない」
レヴィリック「ですが無事では済みますまい。間違いなく半数以上が命を落とす。そして我々を倒した所でその後に控えるのは神の御使い」
レヴィリック「ダルトンハイト軍の全滅は必須かと」
兵士「ざわざわ」
ドロシー「ラクス王子。 私からも一言よろしいでしょうか?」
ドロシー「私、些かながら魔術の心得もあり、興味本位で神の御使いに魔術勝負を仕掛けました」
ドロシー「ですが結果は見事なまでの惨敗。 まったく歯が立ちませんでした」
ラクス王子「お前ほどの魔法の使い手がか!」
ドロシー「神の御使いはもはや人の域に在らず。 あれこそまさに天上を統べる神々に等しき存在かと」
レヴィリック「ヤマクモからもあるようでございます」
ヤマクモ「・・・・・・」
レヴィリック「ヤマクモ?」
ヤマクモ「・・・・・・」
レヴィリック「(こそっ)城下にある色町ならどこでも使える二時間無料券」
ヤマクモ「我も先だって神の御使いと剣を交えたが、一太刀を浴びせることなく敗北を喫した。あの者こそまさに天衣無縫の豪傑よ」
ラクス王子「最強の武人と呼ばれた男にそこまで言わせるとは」
ドロシー「・・・・・・」
美しい声「私からもお願い致します」
ラクス王子「その声は・・・・・・」
ラクス王子「ユニファ、我が運命の君! 貴方も来ていたのか!」
ユニファ王女「ラクス王子、どうか争いはお止めください」
ラクス王子「ユニファ。貴方の優しさは誰もが理解するところだ。だがユグド聖国の命運はもはや尽きている」
ラクス王子「戦局が変わったのだ。近くユグド聖国は、我がダルトンハイト騎士国かザッハ帝国の手に落ちる。これはもはや覆らぬ運命だ」
ラクス王子「私とて無闇な血を流さず穏便に事を進めるつもりだった。だが、ユグド聖国に神の御使いが現れたとなっては話が別だ」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)