ビンダーパープル

但馬感象

3面 ふた(脚本)

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〇音楽スタジオ
一切利夫「江藤鉱!」
江藤鉱「はいっ」
一切利夫「『メガボーン』の一週間の最大数をはかれっ」
一切利夫「「自分が気づきませんでした」じゃ 済まされないときがあるんやぞっ」
  社員の一切さんがそう言っている。
  『メガボーン』
  その都度イラストが入って
  小難しいことなく
  イラストに合わせて
  タッチペンでアクションすればいい
  トロンボーンぽく 伸び縮みしてみたり
  6つ太鼓があれば叩けばいい
江藤鉱(あ、これ、思い出だ ここ行ったよなーみんなでとか そのときの仲間と叩いて思い出したり)
江藤鉱(アドベンチャーゲームっぽく シリアス展開になったり なかなか稀有なゲームだな)

〇駅前広場
  駅で珠未さんと一緒になって、
折中珠未「今日私空いてるんですけど」
  みたいなことを言うので、
江藤鉱「じゃあ一緒にいますか」
  ってなって、
  仕事終わりだったら21時からだから
  終電には帰すこと考えると3時間
  ごはん食べてホテルでって、
  そんなこと計算して──

〇ラブホテルの部屋
  ・・・ホテル、先に入っていて
  あとからセンターちゃんがやってくる。
  こっちはお笑いの気鋭ツルハシ。
  マタギが着るようなノースリーブのチョッキ
  柔らかい毛のモファを直肌はおって、
  値踏みするようにセンターちゃんを
  ジトと見る。
  神妙な面持ちのセンターちゃん。
センター「ごめんなさいっ 私、やっぱり今日は帰りますっ」
ツルハシ「ええーっ」

〇備品倉庫
折中珠未「鉱くん」
  珠未さんが呼んでくる、
  倉庫の棚間通路入ってきて、俺のいる、
  本置いてある方へ歩いてくる。
折中珠未「ぼうずのけさきて ぼうず丸もうけ」
江藤鉱「何?」
折中珠未「社員さんに言われて。 鉱くんに伝えればわかるって」
江藤鉱「知らないよ・・・」
折中珠未「それよりも・・・」
折中珠未「秋原さんとよく話してるの、ずるい」
  って、ヤオヨロゲーム攻略本持ってくる。
  きっかけづくり?また別のお話?
  ・・・・・・
折中珠未「信頼してますから、ふたのところ以外は」
  ──とか言ったかな、珠未さん。
  一緒に倉庫整理しようってなって
  丸いプラゴム質の器とカードのパック、
  それぞれ2つあって、
江藤鉱(これ、中に入れ込めないかな、んー、 ふた閉まりきらんけどいっか)
  と、無理入れにしたものを、珠未さんの前の
  空ダンボールに手放して落とす。
  わざと惰性に手放したっけ、
江藤鉱「それじゃちょっとまずいっすかね?」
  って言ったら、そう返ってきたかな。
江藤鉱(これパックの袋なくしていいんかな、 したら中あけておさまる、ふたも閉まる)
  と、そこに他のスタッフ男女1人ずつきて、
跳ね髪先輩「江藤さん、本、大丈夫ですか?」
江藤鉱「何か間違ってました?」
跳ね髪先輩「完璧ですよっ!」
跳ね髪先輩「あーどうしてそんなにできるんだろうっ 入って間もないのに」
  おしゃれ跳ね髪の見慣れないスタッフだけど
  俺より全然先輩の男性。
  そのあと忙しくなって
  それどころじゃなくなったけど、
  珠未さんといれたしいっか。
  ・・・・・・
毛物店長「・・・空気の虚空もここまでくると」
毛物店長「ありがとー」
  店長さんにお礼言われて。
江藤鉱(好評だなー)
  片足に先の尖った革靴、それを
  テープ透明のでぐるぐる巻きにしてる自分。

〇未来の店
  今日は週末だから倉庫オンリーじゃなくて、
  フリーだったりするので、どうかなと・・・
  星羽さんには、
葵星羽「大丈夫?あそこは、映画のところ」
江藤鉱「はいっ・・・とりあえず見てみます」
  見て足りなきゃ入れるってことだけど、
  店内早々からお客さん多いな。
  珠未さんも品出しか、
  近いエリアで奮闘してる。
  俺も4、5種類だったら
  目で、目測で行くっかな、と思ったら
  結構映画関係種類も多くて、
  こりゃメモちょちょっと
  しといた方がいいかな、まぁ賑わってるね。

〇地下駐車場
  珠未さんが入金に行くのと一緒になって
  エレベーターで地下まで降りるのに、
折中珠未「・・・ああっ怖いっ 何か面白いことしなきゃ、ああっ」
江藤鉱「そんな、いいですよ」
  ドア開けてあげたりしつつ、
  エレベーターの前では
折中珠未「どうですか? (飲み会、行きますか?)」
  照れて恥じらったような、
  少し上目使いの珠未さん。可愛いなー。
  そんなやりとりをしつつ、
  肩にかけてる手提げから
  珠未さんの写ってる
  ヤオバザスタッフ募集広告を
  取り出そうとすると、
  傍らにうつる自分の腕が
  白塗りしてるように白い。
  【真奈の刻】の死と生を繰り返す
  踊りの手振りをするとそう見える。

〇事務所
折中珠未「そうです、ヤーくんとは空気合うんです」
  珠未さんえらい詳しい。
  からだというか生物というか、
折中珠未「あ、違います、ミトコンドリアの中には タンパク質が入っていて・・・」
  とか、栄養とかそういうことなのかな、
  俺より詳しい。じゃあ俺いらねーじゃん
  とか思うんだけど。
  ヤーくんて誰?知らんけど。

〇未来の店
江藤鉱「プレゼントボックス引くんですね?」
  星羽さんに頼まれて、でもどこの?
  倉庫じゃなくて、事務所、社員さんにか。
一切利夫「星羽さんわかってる?どこの引くか」
葵星羽「はーい、棚のところCゾーン」
  ・・・とか言ってるの聞こえたかな。
  そこ引いてくるか。
  一応聞いた方がいいかな。
  店内は営業終ってガランとしてる。
  棚替え、改装中とか、床や壁に
  ベニヤ板か張ってあって保護してたりする。
  と、入口、店内のフロアからすると
  一段低くなっていて、クローズしてるその
  下から潜り抜けておばちゃんが入ってくる。
  眼鏡かけて薄く笑ってて小柄、
  髪は結んでて耳前にも垂れている。
江藤鉱「あ、すみません、 もう営業は終了してまして」
  と、駆け寄ってお声がけしたらば
  ヒュンと脇駆け抜けて店内走り回る。
  バックの方に入っていった?
  追いかけないと。
  俺えらい汗かいてる裸?
  星羽さんさぼってないですよ。
  おばちゃん捕まえないと。
  裏に入ると見覚えのない男が
  俺を遮るようにつかみかかってくる。
  何守り?うちのスタッフ側じゃないの?
  何で邪魔すんの?
  からだのサイズが不自然に
  縮こまってるような、
  顔が豆細長くて短髪のおさまった男。
  振り払って、おばちゃんはどこだ──
  と、おばちゃんは入口付近に
  仰向けに倒れていて、
おばちゃん「何にも悪いことしてないのに・・・」
  大丈夫かな、怪我とかさせちゃってないか、
  大事にならなきゃいいけど・・・
  でも止めない訳にいかなかったしな、
  あくせくし過ぎてたかな。

次のエピソード:4面 元気ですか?

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