誰が娘を殺したか・・・

奇怪堂 -kikkaidou-

誰が娘を殺したか・・・(脚本)

誰が娘を殺したか・・・

奇怪堂 -kikkaidou-

今すぐ読む

誰が娘を殺したか・・・
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒
  私がこの世に生を受けて四十年余り。
  この身、この心すべてを神に捧げてきた。
  私には娘がいた。
  妻を早くに亡くした私にとって娘はこの世で最も大切な愛する存在だった。
  だが、娘は死んだ。殺されたのだ・・・。私は悲しんだ・・・私は苦しんだ・・・。
  しかし私は思った。これも神の与えたもうた試練なのだと・・・。
  そう私が娘の死を受け入れようとしていた時に、その『男』は突然現れたのだ──

〇教会の中
男「こんばんは、牧師様。 少し私とお話しませんか?」
牧師「あ、あぁ、構いませんよ。 懺悔をお望みですか?」
男「いやいや、神に許しを請うことなど私にはありませんので」
男「そんなことより、娘さんのことは残念でしたね。殺されたんですって?」
牧師「っ!」
牧師「な、何故そんなことを・・・。誰かからお聞きになったのですか?」
男「えぇ、まあそんなところです。 しかし、さすが牧師様、娘が殺されたというのに落ち着いたものですね」
男「普通の親なら犯人を殺してやりたいとか、復讐を考えてもおかしくないでしょうに。これも神の試練だと、もう受け止めておられる」
牧師「何でそのことをっ!?」
牧師「・・・私とて犯人を殺してやりたい、復讐することも考えましたっ」
男「なら──」
牧師「しかしっ、そのような事──」
牧師「復讐など、ましてや人を殺すなど神がお赦しになるはずがありませんっ」
  そう。だから私は・・・。これも神の試練なのだと娘の死を受け入れ・・・
  そうしなければ私は・・・
男「そうですか、人を殺すことを神はお赦しにならない、ですか」
男「く、くくく、あははははっ」
牧師「な、何がおかしいっ」
男「いえね、私 実は牧師様も知らない──」
男「いえ、牧師様が忘れていることを思い出させてあげようとやってきた次第でして」
牧師「わ、忘れていること?」
男「えぇ、誰が娘さんを殺したのか、をね」
牧師「ば、馬鹿な!私がそんなこと知っているはずが──」
男「いえ、牧師様は知っているはずです。 娘さんが殺された場に牧師様は居たのですから」
男「さあ、思い出させてあげますよ。この私が・・・」
牧師「何をするつもりだっ」
  男が牧師に手をかざす
牧師「う、うわぁ」

〇教会の中
娘「お父さんはいつもそうっ、神様神様って」
娘「お母さんが死んだ時も『神様が与えたもうた運命だったんだ』って、涙一つ流さないでっ」
  そうだ、あの日は何か些細なことで娘と喧嘩になって・・・。
娘「お父さんは神様に縋っていないと生きていけない弱い人間なんだわっ!」
娘「・・・そうよ、神様なんていない方がいいのよ。 神様を信じているなんてバカなんだわ」
  娘のその時の嘲ったような表情。
  そして私だけでなく私が全てを捧げてきた神さえも侮辱した娘が許せなくて──
  私は・・・

〇教会の中
男「さ、全てを思い出せましたか?牧師様・・・」
牧師「私、が・・・・・・娘、を・・・?」
男「こ・ろ・し・た」
男「そう、お前はもう神に見放された人間なんですよ」
男「お前が信じていたモノはもう何も残ってないんだよっ!この大罪人~っ! あはははははっ」
牧師「う、嘘だ。こんなの何かの間違いだ・・・。私は私は・・・」
  男が牧師に囁きかける──
男「さてこれからどうするぅ?欲のままにやりたい事をやりたいだけやる」
男「欲望にまみれた人生ってのが私のオススメなんだけど・・・」
牧師「私が・・・私が・・・」
牧師「あ、あは、あはははは!!」
男「ありゃりゃ、こりゃダメだ」
男「まあ、こいつが神に縋る事ももうないだろうから死ぬまで気長に待ちますか」
男「あはははははっ」

〇教会の中
娘「お父さんは神様に縋っていないと生きていけない弱い人間なんだわっ!」
娘「そうよ神様なんていない方がいいのよ」
悪魔「神様を信じているなんてバカなんだわぁ」

〇教会の中
悪魔「アハハハハッ」
  誰が娘を殺したか・・・fin

コメント

  • 争いごとを引き起こすのは大体が思想や宗教の違いからだと思います。神を信じるか否かは別として、人にその考えを強要するのは間違えですね。主人公は本来の自分の姿まで殺してしまったようですね。

  • 神の存在を軸に事象を考えるようになると、このような思考になるのでしょうね。敬虔な信仰を否定したくはないのですが、、、難しいものですね。

  • 何だか考えさせられるお話しでした、何がよくて何がいけなくて、何が正解で何が間違いなのか、、、ストーリーの展開が楽しかったです。

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ