九番宝石の向こう側

てんなな

なり損ない探検家の小冒険(脚本)

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〇個人の仕事部屋
※※「確かに、宇宙は広い。地球じゃいつか水平線の先へ辿り着くけど、星々の海じゃ境界線を決めることだってままならない」
※※「けれど、太陽系も出られていない私達に、伸ばせばいつか手が届くと言ってくれるほど甘い世界でもないわ」
※※「隣の銀河は見えていても、深海のすべては見通せないように、月に足をつけてもムチュ・チッシュの頂に足がつかないように・・・」
※※「地上で探す方が気長で、簡単だと思うけど、それでも行くの?」
北村 悟「必要とあらば、海底からダイヤでもすくい上げてみせるがね。 そういう冒険は簡単すぎてもつまらない、そうは思わないか?」
※※「アテのない旅なんて、今時流行らないと思うけれど。 簡単でない方が良いというのは・・・」
※※「ま、お手並み拝見ってことにしておいてあげるわ。年上には敬意を払わないとねえ?」

〇地球
北村 悟「ま、格好付けて出てきたは良いものの、だ」
北村 悟「分からんもんだな。地球の写真なんざ、今更自分で撮るもんじゃあないと思っていたんだが」
北村 悟「それが遠ざかってるとなると、ここまで気分が変わるもんなのか・・・」
  事故だろうとは思っている。量産性優先のまん丸いボールちゃんは、長年の相棒ってわけじゃあないが、記録された活動時間は長い。
  だが、たったふたりで数十台の面倒を見ている若いのに、推進器の金属疲労ぐらい見抜けとドヤすのも良心のある行いとは思えない。
  ・・・まあ、元の作業軌道に戻れとだけ主張するクソシステムには、戻れるなら戻ってるわと文句を付けても許されるとは思うが。
北村 悟「おっさんが変な冒険心を出したところで、こういうつまらない結末に終わるだけだぞ、って・・・」
北村 悟「素直に忠告するようなことにはとうとうならなかったな、あいつ。 次の同僚がどんなやつか知らないが、苦労するぜ、間違いない」
  へんじはない。
  通信機は救難信号の発信で忙しいのだ。
  実感はなくても自分に言い聞かせる必要はある。
  俺はいま、死にかけている。

〇廃列車
北村 悟「人生に行き詰まったら環境を変えろ、てえ説教臭いことを言う奴は、俺の世界じゃ小説や漫画の人間が言うことだった」
北村 悟「ガキだった頃は、地球自体が行き詰まってからだ。 新しい環境を切り拓くのに、文字通り血を見なきゃならなかった」
北村 悟「血を吐いて勉強してた頃も、 それで入った会社で他人の血を見ていた頃も、宇宙なんて目に入っていなかった・・・」
北村 悟「他人であれ自分のであれ、足下を見てないといつか必ず”すくわれる” それが地に足のついた生き方と言われていた」
北村 悟「じゃあ、地面に縛り付けられたくなければ・・・足下を見たくなくなったら、どこに目線をやればいい?」
北村 悟「まさか、これも見なかったことにして、目を閉じちまうってわけにも、いかないだろ」

〇岩山
北村 悟「宇宙採掘事業の枠に潜り込んで、金も貯まってきたとこだったんだがなあ」
  宇宙に出るようになって、独り言が増えた。嘆きも。
  嘆いても仕方がない。それはそうだが、今は嘆く以外にすることがない。
  できることは方向転換が1回と、宇宙服を着て飛び出すこと。そこに見えている小惑星に向かうか?
北村 悟「ダメだな、ひとりの墓にはデカすぎて、俺じゃ埋もれちまう。 ”睡眠薬”を使うのは最後の手段にしたいが・・・」
北村 悟「な、なんだ!? くそ、目が・・・!! 走査されたのか!?」
北村 悟(強力な電探は身体や電子機器に悪影響を与える、と聞いたことはあるが・・・つまりは、自然現象じゃない)
北村 悟「やっぱりだ、ザ・安物の業務支援システム様が、ウンともスンとも言わねえ」
北村 悟「星図には何も載ってなかったが、どこかの母船が来てるか、ステーションでもあるか・・・」
北村 悟(海賊の拠点、って線もあるか・・・)
北村 悟「裏側か?もうちょっと流されてから、角度を変えてもう一度──いや、ありゃ、なんだ」
北村 悟「・・・サカナ?」

〇アクアリウム
  遭難し、救助が来る様子が皆無なんて状況でも、宇宙で魚が泳いでいるわけがないのはわかる。
北村 悟「目がおかしくなったか、いや、だが、記録映像で見た覚えはあるぞ。 暗い海で、岩陰に隠れて、獲物を待ってる魚が、あんな感じだ」
北村 悟「自然物には、見えないな。 さっきの発光のあるじはあいつで、俺を誘い込もうとしているのか」
  普段であれば、絶対に近づかない。
  危険出力での電探の使用(疑い)で、連邦警察に通報してもいい。
  
  しかしだ。
北村 悟「どうせ抵抗できる身分じゃない、か。 あいつを気にしながら無抵抗で漂流し続けるよりは・・・」
北村 悟「あいつが何なのか、知りたいな」
北村 悟(船としては中型船ってところだろう。 案外、本当に魚を元にした生きた宇宙船──生体宇宙船かもしれん。珍しいが、あり得る範囲)
北村 悟(救難信号に全く応じないから、通信機故障でもなければまともな存在じゃないが、仮に生体宇宙船なら海賊の線は薄い)
北村 悟「扱いがかなり難しいし、金もかかる。海賊ごときにゃ維持できない。この場合は、帝国八大企業か」
  方向転換が終わって、切れるカードは残り一枚だけになる。
  軌道はサカナの横をかすめるぐらい。拾ってくれねば、小惑星に落ちる
北村 悟「八大企業の連中だったら・・・はっきり言って苦手なんだが。 一応、呼びかけてみるか」
北村 悟「返事はないが動きもない、 ここまで無視されるといっそ清々しいな」
北村 悟「仕方がない。この手は使いたくなかったが・・・」
北村 悟「いっちょ、こっちから乗り込んでやりますか」

〇薄暗い廊下
北村 悟「思ったよりあっさり侵入できちまったな。 海賊船かもと思っていたが、いまは俺の方がよっぽど海賊らしいぜ」
北村 悟「与圧室は開いてて、動力は生きてたし、空気もある。 しかし、勝手に入っても警告も出迎えもなし」
北村 悟「全員で小惑星に降りてるとかか? 漂流が終わったのは助かるが、戻ってきた船員にズドン、は避けてえな、流石に」
北村 悟「実は沈没寸前でした、実は伝染病が、なんて話だったら、とんだ間抜けだが、まずは艦橋を探して──」
礼奈「あのー、ちょっとー」
礼奈「人の家を超☆危険地帯みたいに言うの、やめてもらっていいかな?」
北村 悟「・・・どこから聞いてた?」
礼奈「全部。おじさん、海賊?」
北村 悟「いや、やってることは無許可乗船だし人がいないなら動かして帰れないかなと思ってはいたがまだ盗ってないから密航者止まりのはず」
礼奈「早すぎてわかんないんだけど、ここを動かせるのは私だけだよ。 ちょっと落ち着いたら?怪しい者にしか、聞こえないし」
北村 悟「・・・そりゃ、ごもっとも」
  己の命をサカナに委ねると決めて方向転換を入れた、あの瞬間。俺の命運はこの娘に握られてしまったらしい。
  この、あまりにも器用に動き回る、”車椅子の”少女に。
  ・・・後の相棒に。
  もっとも。この時の俺は、どう詫びて穏便に地球へ送ってもらうかで頭がいっぱいの、単なる格好悪い漂流者に過ぎなかったのだが。

次のエピソード:救護義務

コメント

  • 小さい時に宇宙の果ての果て・・・その先の先は!と考えながら頭が痛くなっていました。主人公の探求心とこの少女の存在が相乗効果を生み新たな発見があるのか楽しみです。

  • 地球から宇宙へ旅行ができる時代がやって来ました。宇宙へ出てみたいです。どんな冒険が待っているのか楽しみです。でも、やはりお金次第でしょう。

  • 宇宙って広いですよね。
    その中の「漂流者」って感じが良かったです。
    当事者の彼にはとんでもないことでしょうが、ロマンを感じてしまいました。
    宇宙船にいた彼女は何者なんでしょうね。

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