読切(脚本)
〇改札口前
美世「・・・えーと、もうそろそろ待ち合わせの時間だね」
美世「伊予姉ちゃんと佳代姉ちゃんとの久々の再会!楽しみだなー!」
美世「二人とも大学生になってから、実家に全然帰ってこなかったもんなー」
美世「お土産買ってきてくれるかな、楽しみ!」
美世「お、伊予姉ちゃんからメッセージが来てる。なになに・・・」
美世「待ち合わせ時間から20分くらい遅れます、かあ。まあしょうがないか」
美世「この調子じゃあ、佳代姉ちゃんも遅刻かな?あの二人、双子故に妙にシンクロしているところあるし」
「美世ー!おまたせー!」
美世「・・・あっ、そ、その声はもしかして・・・。佳代姉ちゃん!?」
佳代「いやー遅れてすまんない、電車なんて久々に乗ったもんだがら!」
佳代「しっかしここはぎょーさん人がおるのお!なんだい、なにかのイベントでもやってるのかい?」
美世「・・・・・・・・・・・・」
美世「すみません。どちら様でしょうか」
佳代「・・・・・・ええっ!?」
美世「知り合いかと思ったら、見た目も話し方も私の記憶上と食い違っておりましたので」
佳代「・・・あーごめんごめん!ついあっちの訛りが出ちゃってた!というかわっちだよ、佳代だよ!」
美世「私の知っている佳代姉ちゃんは自分のことを「わっち」とは言いません」
佳代「いやーこれはもう大学生活で染みついちゃって、もう直せないのよ・・・」
美世「・・・4年くらいでそんなに染みつくものなの?」
佳代「うん、もうあっちに行って1ヶ月後には一人称変わってた」
美世「変わるの早っ!影響受けすぎだよ!」
佳代「わっちのいる大学って、結構地元出身の子が多かったからねー。その土地の訛りを話す人が多かったのよ」
美世「やばい、「わっち」に違和感がありすぎて話が頭に入ってこない・・・」
美世「同級生の子も自分のことを「わっち」って言うの?」
佳代「いや、普通に「私」って言うよ。「わっち」は大学の教授とかじっちゃんばっちゃんとかが使ってたかな」
美世「大学の教授使うんかい!」
佳代「わっち、大学では同年代の子よりも年上の人とよく関わってたから。農業専攻だったから、目上の人と関わる機会が多かったんだよ」
佳代「そうして話しているうちに、話し方がうつっちゃって・・・。本当に人って変わるんだない」
美世「また出てるよ、訛り」
美世「・・・というか・・・、ツッコむべきか迷ったんだけど。その格好、ナニ?」
佳代「えっ、格好?わっちの格好、なんか変?」
美世「うん・・・サングラスはまあ夏だからいいとして・・・。頭に被っているのは一体・・・」
佳代「・・・あー!これね。これは紫外線対策だよ」
佳代「農業やってると、ずっと外で紫外線浴びることになるから。少しでも防御力をあげるために着けてるの」
美世「今は農業やってないじゃん!」
佳代「いやーそうなんだけど、この被り物がないと落ち着かなくて・・・。大学の講義中もずっと着けてるよ」
美世「教授はそれに対して何も言わないの?」
佳代「言わないよ。教授も同じ格好してるし」
美世(どんな大学だよ)
佳代「ところで、伊予は?もう待ち合わせの時間過ぎてると思うんだけど」
美世「伊予姉ちゃんは遅れるって。さっき私に連絡来た」
美世「伊予姉ちゃんも佳代姉ちゃんみたいに変わっちゃってるのかなー」
佳代「伊予は都会に住んでたもんねー。思いっきりギラギラした格好とかしてるんじゃない?」
美世「そ、それはちょっと接し方に困っちゃうな」
佳代「大丈夫、きっと根は変わってないと思うから。わっちのように」
美世(伊予姉ちゃんもそうだったけど、佳代姉ちゃん前はもっとおとなしかったと思うけどなー・・・)
美世(しかも二人とも恥ずかしがり屋で、目立つタイプでもなかったし)
美世(今は佳代姉ちゃんこんな格好してるから、周りの人たちみんなの視線が釘付けになってるのに・・・本人は全然気にしてないみたい)
佳代「あ、そうそう。お土産持ってきたよ」
美世「えっ、お土産!?やったー!!」
美世「はっ!でも佳代姉ちゃんのお土産って・・・もしかして野菜とか?」
佳代「あっはは!確かに農業専攻してるけど、さすがにお土産は野菜じゃないよー」
美世「良かったー。もしこれで美代が嫌いな野菜だったら、佳代姉ちゃんの嫌がらせだと思っちゃうよー」
佳代「さすがにかわいい妹にそんなことはしないよ。ということで・・・はいっ、これ!」
美世「・・・・・・・・・・・・・・。なに、これ」
佳代「なにって、石に決まってるじゃん」
美世「・・・いや、見たらわかるけど・・・。なんで石?」
佳代「小学生って、よく石集めてるでしょ?だから美世も好きかなって」
美世「・・・私、石集めてるなんて一言も言った覚えないけど・・・」
佳代「大丈夫、美世にもいずれ石収集ブームがやってくるから。誰でも通る道だから」
美世(それはない)
佳代「農作業してると、畑に石がごろごろ転がってるのよ。だからそれらをこの際だからいっぱい持ってきちゃった」
美世「結局農業関係!」
佳代「50個くらい持ってきたから、美世と同じクラスの子、それと先生に渡す分全部あるよ」
美世「いらん!」
佳代「ちぇー。美世が喜んでくれると思ったのに・・・」
佳代「・・・あ、そうそう。もっと欲しくなるかと思って、近日中に宅配便で石100個送ろうと思ってたんだけど、いる?」
美世「いらん!嫌がらせか!!」
佳代「はいはい、わかったよ。じゃあ50個に減らして送るね」
美世(いやそもそも送ろうとしないでええねん・・・)
「二人とも、ごめん!待った?」
美世「お、この声は、伊予姉ちゃん?」
美世(佳代姉ちゃんみたいに変な方向に変わってたらどうしよう・・・。場合によっては、すぐにでもこの場から逃げ出したいんだけど)
「いやー、こっちは電車の本数少ないね。ついついのんびりしちゃってた」
佳代「あはは。都会慣れってやつだね」
「・・・・・・・・・。え、あの、そちらのサングラスをかけた方、どちら様?」
佳代「ちょっ!伊予までそんなこと言うの!?ひどい!わっち、双子の妹の佳代だよ!」
「私には自分のことを「わっち」と呼びそんな格好で出歩くような妹はいません」
佳代「ひどい!あっちじゃあ、この格好がスタンダードなのに!わっちの大学の地元の人に謝れ!」
「場をわきまえろって言ってんの!ここは駅のホームなんだから、もっと別の格好で良いでしょ!」
佳代「ぐっ・・・それは・・・てぃーぴーおーってやつですかい!?」
佳代「わっちはオールウェイズこの格好なの!あっちではみんなそうなの!・・・多分」
「いやいや絶対違うって。しかも「多分」て。自信ないんじゃん」
佳代「ぐぬうっ・・・!やはり妹では姉には勝てんのか・・・!」
美世「・・・ていうかさ。TPOって言うんならさ、」
美世「伊予姉ちゃんのその格好もどうなの?」
「えっ?私、どこか変?」
佳代「・・・あっ、確かに!何かわっちの記憶にある伊予とは違うなーと思ってた!」
「えええー?そうかなー?あっちでは、anytime,anywhereこの格好でも特に何も言われなかったけどなー」
伊予「一体どこが変って言うのさー」
美世「全部だよ!お前誰だよ!つーかどこの世界線から来たんだよ!」
佳代「ミニスカでおしゃんてぃーに変化してるのかなーって思ってたけどこの変化はまさかの予想外」
伊予「私?私はアングラ王国から来た魔法使いよ」
伊予「普段は魔法使いであることは隠して大学生として生活しているわ。裏では悪い魔物をやっつけているの」
美世「しっかり設定まで作ってる!」
佳代「こんな奴にてぃーぴーおーなんて言われたくないわ」
佳代「一番場をわきまえてないじゃん。魔法使いであること隠す気ゼロの格好じゃん」
美世「そうだよ!A○IBAとかH○RAJUKUとかならいいけどさ!こっちに来てまでそんな格好するのはどうかと思うよ!」
伊予「もー、何よ二人してー。そんな悪い子には・・・」
伊予「金平糖の雨を降らせる魔法をかけちゃうんだzo☆」
美世「も、もうだめだ・・・ついていけん・・・怒る気力もなくなってきた・・・」
美世「佳代姉ちゃんの変貌ぶりを遥かに上回ってる・・・」
佳代「えー?わっちは割と普通なんだけどもなあ」
伊予「何言ってんの。私の方が普通だよ」
美世「どっちも普通じゃない。あと伊予姉ちゃん!さっきから小さい子供に手を振るな!」
伊予「だってー、子供達が私をみて目を輝かせてるんだもんー」
佳代「どんだけ目にフィルターかかってんだよ、実際は口をあんぐり開けて困惑した目をしてるだろ」
伊予「あ!そうそう、美世にお土産があるんだけど!」
美世「お土産ー?何か悪い予感がするし、別にいらないよ・・・」
伊予「えっとー、まずは、私の今の服装と同じ服とー、」
美世「やっぱりしょうもないやつだった!絶対着ないし、いらんわ!」
伊予「えー。コットン100パーセントなのにー」
美世「素材の問題じゃない」
伊予「あとはねー、食べ物なんだけど・・・」
佳代「どっかの王国のゲテモノスープとか、ありそう」
美世「ありえる。今のうち断っとくよ、いらないから」
伊予「えー!これ結構高かったのに!もったいない!」
伊予「じゃあいいよ、私が全部食べちゃうから!都会では行列ができるほど有名なプリンとチーズケーキ!!」
美世「!!!??」
美世「・・・・・・・・・・・・・・・」
美世「・・・あ、あの、伊予お姉様?」
佳代「お姉様?」
美世「お姉様のその服装、と〜っても素敵ですう!みんなの視線も釘付けですよお!」
佳代「み、美世・・・?」
美世「さっきはごめんなさい。実は私、ホラ吹き一族の弟子になったもんで、さっきはその練習だったんですう」
伊予「あら〜そんな一族に入ったの!?もう、あなたならもっと良いところに入れるでしょ!入る場所は選びなさい!」
美世「ごめんなさい〜でもホラ吹きの師匠との出会いに運命を感じてしまって・・・」
佳代「なんか急に架空の話をし出したぞ?これはもしや・・・」
美世「だからお姉様、お土産くださいな☆」
佳代「やっぱり食い物目当てで話を合わせてやがるこの女!」
美世「おほほ。何を言っているのか全然わからないですわよ、佳代さん」
佳代「ついに「姉ちゃん」呼びしなくなった!」
伊予「・・・もう、しょーがないなー。一泡吹かせられたから、今回は許してあげる。はい、お土産!」
美世「わーい!プリンー!チーズケーキー!!伊予お姉様ありがとー、大好き!!」
佳代「ち、ちょっと美世、わっちの石は!いらないの!?」
美世「それはいらん、腹も心も満たされんわ」
佳代「ひどいー!!」
伊予「まあまあ。ずっとここにいるのもなんだし、早く家に帰ろうよ」
佳代「い、いや、まだ帰れない!わっちのプライドが・・・!」
伊予「はいはい、めでたしめでたしー」
美世「めでたしー!」
佳代「・・・なんじゃあこいつら、おいもと一緒に煮っ転がししてやろうかあ!!」
感化されやすい人っていますよね。笑
二人とも感化されやすいみたいで、読んでてすごく楽しかったです!
ツッコミも的確すぎて笑えました!
姉は高校卒業後、大阪の看護学校に進学して3か月後にはもうすでに関西弁になっていて!?ってなったのを想いだしました。周りに感化されやすい人、そうでない人っていますよね。でも、長年一緒にいた家族だとその変化にちょっとがっかりするのも共感できました。
一卵性双生児の2人がここまで違う方向に変貌してしまうとは、、、言葉の訛りは私も経験があるのでごもっともとしか言えないですがw それと、美世のキレッキレなツッコミは最高ですね!