不光な世界に希望あれ

水色人間。

第1話 不光な病気(脚本)

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〇月夜
  とある世界には「日が昇る」という表現があるらしい
  この《日》またの名を《太陽》は、
  僕らの住まう惑星のまわりを回っている恒星のこと
  僕らを照らす自然のランプ
  《太陽》は回っているため、
  隠れたり、現れたりするらしい
  もしもそんな世界なら、こんな残酷な病はないのだろう
  体が光るなんて・・・
  光源病──
  体の一部が発光する病気
  光の強さや範囲は人によって異なる
  この世界には《太陽》がない代わりに
  人間が光る
  光は化物を呼び寄せることから、
  光のない世界の災厄──
  《不光な病気》と呼ばれている
  目を開けていられないくらいの光・・・
  赤ん坊の産声・・・

〇怪しげな酒場
ノア=スペンサー(どれだけビールを流し込んでも、僕の渇きは潤うことはないんだ・・・)
ノア=スペンサー「どうして・・・」
ノア=スペンサー「どうして僕だけ・・・!!」
  妻は《光源病》を患っていた
  右腕だけが発光しているだけで、《光源病》の中でも軽症な方だった
  結婚生活は、幸せな日々だった──
  赤ん坊は、《全身発光》という《光源病》でも異例な状態で生まれて、死んだ
  全身発光──
  光源病の一種で、全身が発光している状態のこと
  光も非常に強く、生まれて間もなくに亡くなってしまう
  子は死に、
  力尽きて、妻も死んだ・・・
ノア=スペンサー「どうして僕だけが生き残ってしまったんだ・・・!!」
ルカ=マクスウェル「おい、もうそのへんでやめておけ」
  ルカはビールを奪い取り、代わりに豆を僕の前に置いた
ノア=スペンサー(これで僕の、この感情が収まると?)
ノア=スペンサー「お前、舐めてんのか!?」
ノア=スペンサー「こんなんで、僕が収まると思ってんのかよ!?」
ルカ=マクスウェル「そんなこと思ってるわけねえだろ!!」
ルカ=マクスウェル「ノアが苦しいのは、わかってる・・・」
ルカ=マクスウェル「ノアがボロボロになっていく姿を見たくないんだ・・・」
ノア=スペンサー「ルカに何がわかるんだよ!!」
ノア=スペンサー「いいよな、家族も恋人も《光源病》じゃなくて!!」
ノア=スペンサー「ああ、そうか。 《光源病》じゃない人を選んでいるのか」
ノア=スペンサー「・・・・・・」
ルカ=マクスウェル「今日はもう帰れ・・・」

〇海辺
???「「日が昇る」って知ってる?」
ノア=スペンサー「ううん、知らない」
???「あそこにたくさん星があるでしょ? その星がものすごく近くにあるの」
???「それをね、《日》《太陽》って呼ぶの」
???「《太陽》はね、世界を照らすの」
ノア=スペンサー「意味がわからない・・・照らす?」
???「電気をつけなくても明るくなるの!」
  想像してみた──
  僕らがいる暗い世界じゃなくて、どこかにある明るい世界のこと
ノア=スペンサー「楽しそうだな!!」
  いつの記憶かわからない
  その子は誰だったのかもわからない
  ただ、確かにいつだったか、誰かと話した──

〇寂れた一室
「ノア!! いるのか!!」
「大変だ!! 今、《イーター(光の捕食獣)》の群れが街を襲ってるんだ!!」
  ルカの声によって目を覚ました
  扉を開けるとルカがいた
  顔面蒼白で、走ってきたのか汗だくだった
ノア=スペンサー「どうしてそんなに慌ててるんだ?」
  《イーター》は光に導かれて現れる
  だから、電気を消して家にいれば何も問題ない
ノア=スペンサー「とりあえず電気を消すぞ」

〇寂れた一室
ルカ=マクスウェル「今の状態のノアだと・・・」
ノア=スペンサー「それができるなら、とっくにやってるさ・・・」
ノア=スペンサー「妻子を失っても、死ぬのは怖いんだ・・・」
ノア=スペンサー「一回寝たから、酔いも覚めてる 心配には及ばない」
ノア=スペンサー「でも、どうして《イーター》が?」
ルカ=マクスウェル「光源病の子供が街の外に出てしまって、呼び込んでしまったみたいだ」
ノア=スペンサー「化け物を呼び寄せる《不光な病気》だな・・・」
ノア=スペンサー「光ってるのにな・・・」
ルカ=マクスウェル「希望の光はないってことだろ・・・」
ノア=スペンサー「ああ、あれは希望なんかじゃない」
ノア=スペンサー「あのさ・・・さっきはごめん・・・」
ルカ=マクスウェル「いいや、俺も殴ったし。ごめんな」
ノア=スペンサー「誰だ?」
  誰かが扉を叩いている
ルカ=マクスウェル「おい、なんかおかしくないか?」
  何かが体当たりしているような音・・・
  扉がメキメキと唸りを上げ始めた。
ノア=スペンサー「嘘だろ・・・」
  扉が壊れた

〇寂れた一室
イーター(光の捕食獣)「グルルルゥ・・・」

次のエピソード:第2話 エスケープ

コメント

  • 奇妙な病気なのですね。
    でもこの世界では当たり前、というか認識としては一般的なのですかね…。
    イメージですが、非常に生きにくい世の中なんだろうなぁと感じます…。

  • 光が不吉な象徴となる世界で、人間が光る病気になるってところに関心を持ちました。
    たいていは光は幸せの象徴ですよね。
    そんな中で不幸が重なった彼はどうなるのでしょうか。

  • 最後の展開、ふたりのうちのどちらかが、気づかないうちに病気になっていたってことかなと推測しました。間違っていたらすみません。太陽のない世界にいたら太陽に憧れますよね。私たち地球では太陽は当たり前のように存在していますが、人類の歴史でいつかこんな日が来ないとも限りませんね。毎日太陽の光に感謝して生きたいものです。

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