チャイルドレイク

びわ子

シンクホール(後編)(脚本)

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〇黒
  目の前のコテージに向けて
  大量の岩が落ちていくのを
  俺はただ上を見上げ
  落ちるのを待つしかなかった・・・
神野アヤト「なんで・・・」
神野アヤト「なんでこんな所に連れてきたんだよ!」
  感情が抑えきれずとーちーに
  強い言葉を発してしまう・・・
神野アヤト「皆んなをこんな日に 無理やり連れて来るから・・・」
  いや・・・違う
神野アヤト「う・・・うわ──────ん!」
  無力な自分を正当化する為に
  ”誰かのせい”にしたかったんだろう
神野ツカサ「アヤト・・・」
神野アヤト「さ、触るな!」
神野アヤト「本当の父親でもないくせに!!」

〇黒
神野ツカサ「ア、アヤト・・・」
神野アヤト「・・・」
  ガ・・ガガ・・・
  ア・・・アヤ・・・・・・
神野アヤト「マツリの声だ!!」

〇洞窟の深部
神野アヤト「マツリ!!聞こえるか!?マツリ!!」
  マツリ『とー・・ガガッ・・アヤ・・
   助け・・・』
神野ツカサ「どうした!?聞こえているか!?」
  マツリ『い・・ガガッ・いたいよ・・・
   ガッ・・・・いい・・・』
神野アヤト「なんだよ!電波が悪い!!」
神野ツカサ「ナヲコ!!マツリ!!聞こえるか!?」
  ナヲコ『大丈・・・よマツ・・・必ずとー
   ち・・・アヤトがきて・・ら』
神野ツカサ「くそ!!今すぐ助けにいくからな!」
神野ツカサ「アヤト行くぞ!!」
神野アヤト「あぁ!!」

〇城のゴミ捨て場
  コテージへの入口は
  完全に石や砂で埋まっていた
神野ツカサ「この辺にドアがあるはずなんだ!」
  とーちーは力任せに
  大きな石をどけていく
神野アヤト「わかった!ここらへんだな!」
  俺も同じ場所の小さい岩を
  一つずつ確実にどけていった
  掘っても掘っても
  石の下には次の石が現れる
  ──1時間程、経った頃
  とーちーが手を止めた・・・
神野ツカサ「あ!?あったぞ!!」
神野アヤト「・・・!?」
  俺たちは必死で岩をどけたが
  ドアは変形して押すことも
  引くこともできない状態になっていた
神野ツカサ「あー!ちくしょう!!ここまで来て!」
  ナヲコ『・・ガッ・・・ガガッ・・・
   アヤト、とーちー聞こえる?』
神野アヤト「かーちーだ!聞こえてるよ! とーちーもいる!2人は無事なの!?」
  ナヲコ『無事で良かった・・・
  私は大丈夫だけど
  マツリが痛めてた足が悪化したみたい』
「なんだって!?」
  ナヲコ『トランシーバーの電波が
  繋がる間に伝えとくわ・・・ガッ・・・』
神野ツカサ「いま開ける!待っててくれ!!」
  ナヲコ『この中は電気も使えて食料もあるから心配しないで・・・ガガッ・・・』
神野ツカサ「開け!開け!このドア!」
  ナヲコ『節約の為に6時間毎に10分だけ電源をいれるから・・・ガッ・・・』
  ナヲコ『アヤト・・・とーちーを信じて協力してね・・・ガガッ・・・ガッ・・・』
  ナヲコ『マツリと待ってる・・・・・・ガガガッ・・・』
神野アヤト「かーちー・・・」
  ガガッ・・・ガッ・・・・・・・・・・
神野アヤト「かーちーぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
神野ツカサ「くそー!開きやがれ!!」
神野ツカサ「はぁ、はぁ・・・」
  とーちーの指は擦り傷で
  血だらけになっていた
  1人の力じゃドアは
  開きそうもないことを
  俺はわかっていたのに・・・
  でも・・・
  2人なら・・・
神野アヤト(2人を助ける為・・・)
神野アヤト(えぇい!・・・くそ!!)
神野アヤト「俺も・・・俺も手伝うよ・・・」
神野ツカサ「・・・」
神野ツカサ「・・・頼むアヤト」
神野ツカサ「”せーの”の掛け声を俺が出す ”の”のタイミングで引っ張っぱろう!!」
神野ツカサ「いくぞ!」
「”せーーーーーーーーーーーーーーの”」

〇城のゴミ捨て場
  駄目だ・・・
  2人でもビクともしない・・・
  何度も何度も
  押したり引いたりを繰り返したが
  シェルターになる程のドアを
  人の手でこじ開けるなんて不可能だった
神野アヤト「あかない・・・」
神野アヤト「どうやっても開かない!」
神野アヤト「もう、どうしたらいいんだよ!」
神野ツカサ「・・・」
神野ツカサ「アヤト・・・ ひとつのアイデアがある 聞いてくれるか?」
神野アヤト「助けるアイデアがあればな!」
神野ツカサ「今、俺達がいる場所は何処かわかるか?」
神野アヤト「はぁ?琵琶湖の底だろ!!」
神野ツカサ「いや、ここは”琵琶湖の底の底”だ」
神野ツカサ「昔スキューバダイビングで沖縄に行った時に似たような話しを聞いたことがある」
神野ツカサ「地下水による浸食等の変化が起こり、地下の岩石もしくは空間が崩壊し」
神野ツカサ「中の穴が地表にまで到達して 陥没が起こる現象を」
神野ツカサ「そう・・・ ”シンクホール”と呼ばれていると!!」
神野アヤト「シンクホール?」
神野ツカサ「実際、世界中で同じように 陥没が起きているんだ」
神野ツカサ「コレが海の中なら”ブルーホール”とも 呼ばれてるらしいが・・・」
神野ツカサ「今はとりあえず”シンクホール”として 認識しておけばいいと思う」
神野アヤト「シンクでもブルーでも どっちでもいいから 助ける方法を言えよ!」
神野ツカサ「わかった、本題に入ろう」
神野ツカサ「このキャンプ場は 500m毎にコテージが 6つ建ち並んでいた」
神野ツカサ「もしかすると俺らと同じように 琵琶湖の底の底まで落ちた 宿泊者がいるかもしれない」
神野ツカサ「予備電源は約1週間しか持たない・・・」
神野ツカサ「つまり俺たち2人は、この先に進み!!」
神野ツカサ「人か道具を集め”1週間以内”に戻り!!」
神野ツカサ「かーちーとマツリを 助けなければならないということだ!」

〇洞窟の深部
神野ツカサ「危険が伴うがやるしかない! 行けるか!?アヤト・・・」
神野アヤト「・・・」
神野アヤト「・・・」
神野アヤト「い、いくに決まってるだろ!」
神野ツカサ「よし!さっき集めた道具で 使えそうな物を持って直ぐに出発するぞ!!」

〇岩の洞窟
神野ツカサ「持参するモノは決めたか?」
神野アヤト「あぁ」
神野アヤト「懐中電灯におやつが少し、 飲みかけのお茶、 あとは尖った木の棒」
神野ツカサ「俺は持っていくのは」
神野ツカサ「俺はベルト用隠しナイフ、スマホ、缶コーヒー、マッチにスチールウールに──」
神野ツカサ「忘れちゃいけない鼻うがいセットだ」
神野ツカサ「よし!行くぞ!!」
神野アヤト(待っててくれよ!マツリ!かーちー!)

〇岩穴の出口
神野ツカサ「先が開けてきたな・・・フゥ・・・」
神野アヤト「ハァ、ハァ・・・」
  コテージから歩いて少し経った頃
  とーちーが話しかけてきた・・・
神野ツカサ「・・・」
神野ツカサ「アヤト・・・」
神野アヤト「ん、何!?」
神野ツカサ「さっき俺に ”本当の父親でもないくせに”といったな」
神野ツカサ「誰かに言われたのか?」
神野アヤト「旅行の準備中に偶然落ちた本から とーちーと”知らない女”の 結婚写真を見つけたんだ・・・」
神野ツカサ「そうか・・・」
神野ツカサ「アヤト・・・」
神野ツカサ「俺は話すことに決めたよ」
神野ツカサ「ただ・・・かーちーの許可もいる ナイーブな話なんだ・・・」
神野ツカサ「だからこそ、かーちーとマツリを助けて ちゃんと2人で話そうと思う」
神野ツカサ「だから、その間も今まで通り 仲良くしてくれないか?」
神野ツカサ「・・・」

〇黒
神野アヤト「仲良くなんて・・・」
神野アヤト「仲良くなんてできる訳ないだろ!!」
神野アヤト「・・・」
神野アヤト(でも・・・)
神野アヤト(かーちー、俺に言ってたな・・・)
  ナヲコ『とーちーを信じて協力して』
神野アヤト「・・・」
神野アヤト「・・・ただ」
神野アヤト「仲良くはしないけど」
神野アヤト「協力はする」
神野アヤト「後は・・・」
神野アヤト「父さんとは呼ばないけど・・・」
神野アヤト「とーちーとなら・・・呼んでやるよ・・・」
神野ツカサ「ア・・・アヤト・・・」
神野アヤト「べ、別になかったことに したわけじゃないからな!」
神野ツカサ「・・・ありがとう」
神野アヤト「泣くなよ・・・」
神野ツカサ「な、泣いてないてなんかいない! 汗が目に入っただけだ!!」
神野アヤト(泣いてたくせに・・・)
神野ツカサ「あ!!見ろアヤト出口だぞ!!」

〇薄暗い谷底
  どう説明すれば良いのだろうか・・・
  山頂からの雲海を初めて見るような衝撃や
  オーロラを現地で見た感動とはまた違う
  半透明な石で囲まれた洞窟は
  ぼやけて良く見えないが薄っすらと
  空の青さが見えているように感じる
  現実ではあり得ない
  ゲームやアニメで見るような景色を前に
  俺達は魅入ってしまった
神野アヤト「なんだよコレ・・・ 琵琶湖の底の底なのに 天井から光が出てる・・・」
神野ツカサ「天井と同じ石が落ちているな」
神野ツカサ「これは水晶?・・・ いや・・・カルサイトか!!」
神野アヤト「カルサイト!?」
神野ツカサ「カルサイトは水晶に見えるが鉱石を通して文字などを見たときに、二重に見えた場合は、カルサイトだと言われている」
神野アヤト「それがどうしたの?」
神野ツカサ「カルサイトは別名”方解石”と呼ばれ 衝撃に弱く割れやすいんだ」
神野アヤト「崩壊? つまり・・・ この場所は崩れやすいってこと!?」
神野ツカサ「崩れる壊れるの漢字じゃなく、 方位の方に正解の解で方解と書く ま、実際崩れやすいんだけどな」
神野ツカサ「何メートルも石の分厚さがあるみたいだし 今すぐ崩落ということはなさそうだが また地震がくるとわからない」
神野ツカサ「この地面は、しっかりしてるが 水で濡れた様な場所は脆そうだ」
神野ツカサ「2人だと割れる可能性がある この場所に留まらず先を急ごう!」
神野アヤト「あぁ、わかった」
神野アヤト「・・・」
神野アヤト「石とか詳しいの?」
神野ツカサ「まあ、結婚するまで転職沢山したからな」
神野ツカサ「石のことは大体知ってるぞ 『石の妖精ストーンツカサ』 とは俺のことだ」
神野アヤト「そういえば さっき拾った、この石なにかわかる?」
神野ツカサ「うん?どれどれ」
神野ツカサ「お、 おい・・・アヤトこれは石じゃないぞ!?」
  とーちーの手から
  ボロボロと張り付いた石が
  剥がれ落ちていく
神野ツカサ「こ、これは小判!!」
神野アヤト「え!?小判!!」
「・・・」
神野ツカサ「アヤト・・・これはどうしたんだ!?」
神野アヤト「これは・・・ん!?」
神野アヤト「とーちー!!後ろに誰かいる!!」
「うっ!!」
神野アヤト「と・・・とーちー」
神野アヤト「うわ!!」
???「・・・」
???「・・・もて・・連れて・・ぞ!!」

次のエピソード:求めてない生存者

コメント

  • 面白いです!
    続きが楽しみです。

  • すごく緊張感のあるサバイバルになってきましたね! 続きをゆっくりと読ませていただきます😊

  • 次々に出てくる(起こる)チャレンジや問題。それに戸惑いながらも立ち向かっていく二人。まさかとーちが…
    最後の終わり方がぁぁぁー…気になること山積みです!

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