JJ(脚本)
〇刑務所の牢屋
陸本「保田さん・・・」
保田「ジェイだ」
陸本「なんで・・・あんなことを・・・」
保田「愛の後には」
陸本「保田さん!!」
保田「ジェイが来る」
陸本「・・・」
陸本「俺の・・・せいっすね・・・」
陸本「俺が、ジェイのことを知りたいなんて言わなければ・・・」
保田「愛の後には」
陸本「・・・」
保田「ジェイが来る」
陸本「俺が、戻します」
陸本「その、ジェイってのが何なのかを暴いて」
陸本「保田さんを、必ず元に戻します!!」
陸本「必ず助けます!!」
保田「愛の後には」
保田「ジェイが来る」
〇警察署の入口
姪原「っはああああ・・・」
姪原「保田め、余計なことを」
姪原「今日、いったい何回俺が頭下げる羽目になったと思ってんだよ」
姪原「ったく」
姪原「ジェイのことに首なんざつっこみやがって」
姪原「てめぇらしくもねえ」
陸本「今、ジェイって言いましたか?」
姪原「・・・誰だお前?」
陸本「○○警察署の陸本と言います」
姪原「ああ、保田んとこの」
姪原「そうか、保田をそそのかしたのはお前か」
姪原「面倒なことしやがって」
陸本「なっ!?」
姪原「いいか、糞餓鬼」
姪原「ジェイのことを詮索すんな」
姪原「お前が知る必要のないことだ」
陸本「あります!!」
陸本「保田さんは・・・俺のせいで、変わってしまいました」
陸本「俺には、保田さんを元に戻す責任があります」
陸本「ジェイを、知る権利があります!!」
姪原「ねえよ馬鹿」
姪原「いいか糞餓鬼、てめぇの倍の人生を歩んでる俺からのアドバイスだ」
姪原「面倒くさそうなことに首を突っ込むな」
姪原「隣で万引きしてるやつがいたら無視しろ」
姪原「道端で殴り合ってる馬鹿がいたら無視しろ」
姪原「遠くの方で人が殺されそうになってるのを見たら無視しろ」
姪原「巻き込まれそうならケツ巻いて逃げろ」
陸本「・・・そ」
陸本「それでもあなたは警察ですか!?」
姪原「警察である前に、人だ」
姪原「なんで俺が、自分の人生犠牲にしてまで他人を救わねえとなんねえんだ」
姪原「俺には、嫁も子もいんだよ」
姪原「『命を懸けて他人を救う』」
姪原「綺麗な言葉だな」
姪原「だが綺麗ごとだ」
姪原「助けられたやつは、人生助かるんだろうが」
姪原「命を懸けて人を救った俺はお陀仏」
姪原「残された嫁も、子を抱えて働かなきゃならん」
姪原「最低二人の人生がぶっ壊れる」
姪原「子を入れりゃ三人か」
陸本「・・・っ」
姪原「てめぇ、ここまで考えて、この俺に警察かどうかを聞いたか?」
姪原「感情に任せて、無責任なこと言ってんじゃねえよ糞餓鬼」
陸本「・・・」
姪原「あん?」
陸本「先程までの言葉、すべて録音させていただきました」
姪原「はあ?」
陸本「今の時代なら、出すとこに出せば問題になりますね」
姪原「この俺を脅す気か?」
陸本「取引ですよ」
陸本「あなたが知っているジェイについての情報を、すべて俺に下さい」
陸本「そうすれば、この録音データは削除して、どこにも出したりはしません」
姪原「・・・糞餓鬼が」
姪原「・・・」
姪原「旧館の資料室に行け」
姪原「俺から言えるのはそれだけだ」
〇警察署の資料室
陸本「・・・」
――本件、ジェイによる事件として、捜査を打ち切り。
陸本「・・・この事件もか」
陸本「俺が知らなかっただけで、ジェイを理由に捜査が打ち切られている事件がいくつもある」
陸本「でも、ジェイが何かを明記しているものはない」
陸本「これも違う」
陸本「あ!?」
陸本「これだ」
――ジェイとは、愛の反意語である。
陸本「こ、これだけ?」
姪原「よーお、精が出るな糞餓鬼」
陸本「・・・どうも」
姪原「お目当てのもんは見つかったか?」
陸本「まあ、少しは」
姪原「ま、何を見つけたかはだいたいわかる」
姪原「愛の反意語」
姪原「ジェイについては、それが全てだ」
陸本「え?」
姪原「以上、俺は帰る」
陸本「あ、ちょっと!?」
姪原「俺としたことが、関わりすぎた」
陸本「ま、待ってくだ」
「着いてくんな糞餓鬼!!」
「俺を殺す気か!?」
陸本「・・・っ」
〇警察署の入口
姪原「なあ、ジェイ」
姪原「俺はまだ、愛を持ってないよな?」
ジェイ「ああ」
ジェイ「お前はまだ、愛を持ってない」
姪原「そうか」
姪原「良かったよ」
姪原「俺はまだ、嫁と子と、一緒にいられる」
〇警察署の資料室
陸本「嘘をついている顔じゃなかった」
陸本「愛の反意語・・・」
陸本「どういう意味だ?」
陸本「愛の後にはジェイが来る」
陸本「先日の事件の被害者は、結婚したばかりの二人だった」
陸本「愛し合っていた」
陸本「だから、その後にジェイが来た、ということか?」
陸本「愛の反対・・・痴情のもつれが来て、二人で自殺を・・・」
陸本「いや、それだと保田さんの行動に説明がつかない」
陸本「愛・・・」
陸本「愛の反意語・・・」
陸本「いったい・・・」
ジェイについての謎が深まるばかりで、読んでいてドキドキします。どのような真相にたどり着くことになるのか、楽しみで読み続けたいです。