7月6日のスタンド・バイ・ミー

YO-SUKE

エピソード9(脚本)

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〇田舎の駅舎
秋山裕介「なあ、カズミーのお父さん、どこに行ったか心当たりないのかよ」
佐々木和美「あったらどうだって言うの? あんたたちに関係ないでしょ」
美砂「・・・先生」
佐々木和美「人の家のことに干渉しないで」
美砂「先生、裕介たちは——」
佐々木和美「美砂ちゃん、前に言ったわよね。 このバカ3人組は相手にしないでって」
美砂「・・・・・・」
佐々木和美「大人はね、きちんと他人との間に線を引いて、無駄な干渉をしないで付き合うものなの」
佐々木和美「ズカズカと、他人のプライベートに踏み込むような人間を、私は絶対認めない」
「・・・・・・」
佐々木和美「それが、たとえ自分の生徒でも」
美砂「・・・私は、認める」
秋山裕介「!?」
佐々木和美「・・・美砂ちゃん?」
美砂「バカは先生の方だよ」
美砂「裕介たちが、どれだけ先生のために走り回ってるかなんて、少しも考えたことないでしょ?」
佐々木和美「私は——」
秋山裕介「カズミー、前に言ってたんだろ? 北海道は雪が多くて寒くて、広大すぎるって」
秋山裕介「でも、だからこそ、一つ一つの街の灯りが尊くて、温かいって」
佐々木和美「・・・・・・」
秋山裕介「函館山から見える夜景がキレイなのは、街の灯りが、命の灯りだから」
秋山裕介「私たちはたくさんの命に守られて、この街で暮らしているんだって」
秋山裕介「まあ俺、カズミーが授業でそんな話したの、全然覚えてなかったんだけど」
佐々木和美「・・・・・・」
秋山裕介「伸生が、まるでカズミーみたいに言うんだよな。だから、それをカズミーたちに、思い出させるために——」
佐々木和美「?」
秋山裕介「あー! もうなんでもない!」
秋山裕介「美沙、おまえ先生を頼む。 俺が先生のお父さん探してくるから!」
美砂「あいつ・・・」

〇市街地の交差点
秋山裕介「くそー。 探すったって、手がかりなさすぎだろ!」
「おじいさん! 危ないから降りてらっしゃいよ!」
秋山裕介「・・・!?」

〇学校沿いの道
女性「ケガでもしたらどうするの!?」
秋山裕介「どうなってんだ!?」
女性「それがあの人、急にフェンス登っちゃって、なんか叫んでるのよ」
女性「こっちから何言っても聞いてくれなくて」
佐々木幸雄「まさるくん! 危ないからそんなところ降りなさい!」
  幸雄の視線の先にはジャングルジムがあるが、そこには誰もいない。
秋山裕介「・・・・・・」
  裕介は幸雄とジャングルジムを交互に見てから、意を決して走り出す。

〇学校沿いの道
佐々木幸雄「!?」
佐々木幸雄「ま、まさるくん! そんなところにいたのか!?」
秋山裕介「俺はまさるじゃねェ!!」
佐々木幸雄「・・・!」
秋山裕介「ここにはまさるはいねえ」
佐々木幸雄「? 何言ってるんだ」
秋山裕介「事情は聞いた。 キャンプ場で事故があったって」
秋山裕介「あんたのせいで、男の子が——」
佐々木幸雄「やめろやめろやめろ!」
佐々木幸雄「・・・君は誰だ?」
秋山裕介「秋山、裕介」
佐々木幸雄「そうか・・・まさるくんじゃないのか」
秋山裕介「・・・・・・」
佐々木幸雄「まさるくんはいい子だったんだ。 俺が学校を去る、最後の年に入学してな」
佐々木幸雄「でも、俺のせいであの子は・・・」
秋山裕介「だからって、あんたが全部背負い込むことねえだろ!」
佐々木幸雄「黙れ! 人生には取り返しのつかないことがいくつもある!」
佐々木幸雄「それが君のような子どもにわかってたまるか!」
秋山裕介「わかるよ」
佐々木幸雄「!?」
秋山裕介「俺はもう、じいちゃんに会えない」
秋山裕介「伸生だって東京にいっちまう。大事なものが、いつも、いつまでも同じように続くわけがないことは、わかってんだ」
佐々木幸雄「・・・・・・」
秋山裕介「でも、何年たっても、何十年経っても、胸の中に同じように居続けるものがあるんだって信じたいんだ」
秋山裕介「俺と伸生と学は、どこにいても、何をしてても友達で、困ったときはいつだって助けに行くって、そう信じたいんだ」
佐々木幸雄「・・・・・・」
秋山裕介「あんただってあるはずだ。 これまで生きてきて、つないできたものが」
秋山裕介「だから、それを俺たちが証明してみせる」
佐々木幸雄「もしかして、君は和美の・・・」
秋山裕介「・・・?」
  幸雄は納得したように、ゆっくりとフェンスを降りていく。
佐々木幸雄「・・・通りで頼もしいわけだな」
  そのとき、サイレンを鳴らして一台のパトカーが裕介たちの前に現れた。
秋山裕介「あんたは!」
後藤「お前たちの作戦は聞いた。 先生、行きましょう。お連れします!」
佐々木幸雄「後藤? お前は悪ガキの後藤じゃないか!」
秋山裕介「あんた、この人の生徒だったのか!」
後藤「先生、パトカーに乗ってください!」

〇湖のある公園
  夕日が沈みかけている。しかし公園内には、まだ人が集まっていない。
伊藤正樹「やはり厳しかったか・・・」
伊藤伸生「・・・・・・」
伊藤正樹「なあ、伸生。 もう諦めて——」
伊藤伸生「!」

〇湖のある公園
伊藤伸生「先生! 学! 美沙! それに裕介のお姉ちゃんも!」
井戸端学「駅のところで合流したんだ! 裕介のお姉ちゃんが、函館からたくさん連れてきたみたい」
秋山有紀「ちょうど和美先生が一年目のときに、うちら担任だったんだよね」
秋山有紀「うちらの学年は、みんな和美先生のファンだから。特に男子が」
  有紀の言葉に、彼女の後ろの男子高校生たちが「おー!」と野太い声を上げる。
佐々木和美「ねえ、いったいどういうことなの? こんなところにこんなに人を集めて」
伊藤伸生「訳はあとで説明します!」
伊藤伸生「それより皆さん、今から僕が指定する箇所にロウソクをお願いします! もう日が暮れちゃうんで!」

〇湖のある公園
秋山裕介「伸生! 学!」
伊藤伸生「バッチリだ!」
佐々木幸雄「これはどういうことなんだ!?」

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