時計塔のある町

松路 ふな

教会前にて神父は言った(脚本)

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〇暖炉のある小屋
  時計塔 ノアの部屋
ノア「ミカロフ、今日も来ないなぁ」
ノア「業務が忙しいのかな?日照りの対応で忙しいとか? 病気・・・病気になってないといいけど・・・」
ノア「うーん、うぅぅぅん・・・」
ノア「ダメよ、しんみりしちゃ! 気になる時は即行動するべし!」
ノア「ちょっと顔出すくらいなら迷惑にならない、よね・・・?」
ノア「よ、よーし!おうちに行くわよ!」

〇貴族の応接間
  アイディオ家 応接室
ノア「というわけで、ミカロフさんを訪ねに来たのですが・・・」
とあるメイド「申し訳ございません。ミカロフ様はこちらには・・・」
セルベ=アイディオ「ああ、来客があったと聞いて来てみたら。 ノアちゃんじゃないか」
とあるメイド「セルベ様・・・」
  柔らかな笑みでノアを迎えたのはミカロフの父、セルベ=アイディオだった。
セルベ=アイディオ「キミは少し下がっていてね。 僕が話をしたいんだ」
とあるメイド「かしこまりました」
  セルベが軽く頷いてメイドに退出を促すと、メイドは小さく頭を下げて部屋から出ていった。
セルベ=アイディオ「やあ、ノアちゃん。 いらっしゃい。来てくれて嬉しいよ」
  さあ、座って。と椅子をすすめるセルベの言葉に甘えてソファに座る。
  座ると体が沈むソファには精巧な百合の彫刻がされていた。
セルベ=アイディオ「今日は・・・ミカロフのこと、かな」
ノア「セルベさん、お久しぶりです!」
ノア「はい、今日はミカロフに会いに来ました」
ノア「今まではよく時計塔に遊びに来てくれていたんですけど、最近あまり来てなくって・・・」
ノア「もしかしたら何かあったのかな〜、って、心配になって来たんですけど・・・」
  ニコニコと笑うノアとは反対にセルベは複雑そうな顔をした。
セルベ=アイディオ「そうか・・・・・・ ノアちゃん、落ち着いて聞いてほしいんだけれど」
  セルベが、もう一度ノアの方向へ座り直す。
  普段よりもいっそう真剣な眼差しにノアはどこか嫌な予感がした。
セルベ=アイディオ「ミカロフはもうこの家にはいないんだ」
セルベ=アイディオ「ミカロフは、結婚するんだよ」
ノア「・・・え・・・?」

〇森の中
ノア「・・・はぁ・・・」

〇貴族の応接間
ノア「け、結婚・・・!?ですか・・・?」
セルベ=アイディオ「ああ。ノアちゃんもだけど、ミカロフはそろそろ成人の儀を迎えるだろう?」
セルベ=アイディオ「それで、パルプ家から縁談の申し出が来たんだ」
ノア「パルプ家って、あの・・・」
  パルプ家といえばノアの住む町、シリカでは有名なお家だ。町で流通している紙製品のほとんどがパルプ家が取りしきっている。
セルベ=アイディオ「ああ。この町で相当に権力を持つ家だよ そのパルプ家当主がどうしても娘をミカロフに嫁がせたいと・・・」
セルベ=アイディオ「僕は反対したんだが、結婚を承諾しないと村民への慈善活動として行っていた食糧給付を止める、と・・・!」
セルベ=アイディオ「恥ずかしい話だよ、息子を売らないとやっていけない領主だなんて・・・」
セルベ=アイディオ「クソ!・・・すまない・・・食料難の今、彼の持つ田園から少しでも供給を得られなけれ ば、この村の住人は・・・!」
  普段から温厚でなかなか取り乱すことのないセルベの怒りに、ノアは驚きを隠せなかった。
セルベ=アイディオ「町長とは名ばかりで、何もできないんだ僕は・・・」
ノア「セルベさん・・・」

〇森の中
ノア「結婚かぁ・・・」
  結婚。いつかは自分もミカロフも、誰かと結婚するものだとは思っていた。
  けれどいざミカロフが結婚すると聞くと、ノアは心臓に生暖かい氷をあてられているような奇妙な感覚に陥る。
ノア「どうして私こんなに落ち込んでるんだろ・・・」

〇森の中の小屋
  どこに行こうとするのでもなく、ただ歩いていただけ。

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コメント

  • 神父様の言葉遣いが、個人的に好きです!
    また、続きを読みに伺います!

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